泌尿器科医 三輪好生氏

 尿に関するトラブルは尿漏れや頻尿、排尿困難などいろいろありますが、最も多くの人が困っている症状は夜間頻尿であるといわれています。夜間頻尿は夜間に1回以上トイレに目覚めることと定義されていますが、通常は夜間に2回以上起きると苦になる人が多くなるといわれています。

 性別に関係なく年を取るにつれ夜間頻尿の割合は増えてきます。加齢現象の一つと捉えることもできますが、中には原因がはっきりしていて対処方法によってはよくなる場合もあります。しかし夜間頻尿の原因はさまざまで、生活習慣や他の病気と関連していることもあるため薬をもらうだけではなかなかよくなりません。

 夜間頻尿の原因は大きく三つに分けることができます。一つ目の原因は夜間に作られる尿の量が多い「夜間多尿」です。よく見られるのは水分を取り過ぎて尿の量が増えてしまう多飲多尿で、健康のためと習慣的に水分をよく取る人に多いようです。確かに脱水の予防は大切ですが、余分な水分は尿になるだけで、心臓の弱い人にはかえってよくない場合もあります。カフェインやアルコール、塩分の取り過ぎにも気を付けるべきです。

 下肢がむくみやすい人は寝ている間、下肢にたまっていた水分が尿となります。むくみを予防するためには、日中に弾性ストッキングをはくことや、夕方に軽い運動を行うことが有効です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病との関係も指摘されているので日頃からしっかりと治療を受けておきましょう。

 二つ目の原因は「睡眠障害」です。眠りが浅いため目が覚めるとトイレのことが気になります。行っても大した量が出ないのが特徴です。体内時計を整えるために日光浴や適度な運動を行うとよいでしょう。すぐ横になる習慣がある人は睡眠にめりはりがないため小刻みな睡眠になります。昼寝は30分程度にとどめ、夕食後すぐに寝てしまうことがないように気を付けましょう。睡眠障害の原因の一つである睡眠時無呼吸症候群も夜間頻尿になりやすいといわれています。昼間の眠気が強い人は病院で一度調べてもらうことをお勧めします。

 三つ目の原因は膀胱(ぼうこう)に尿を十分にためられない「蓄尿障害」です。代表的な病気は過活動膀胱です。昼夜を問わず急に強い尿意でこらえることが難しく、尿漏れを来すこともあります。男女問わず年を取るにつれて増えてきます。過活動膀胱は行動療法や薬で治すことができますが、中には他の病気が隠れていることもあるので正しく診断をしてもらうことが大事です。

 夜間頻尿を治すためには、原因を絞り込んで正しく対処することが大切ですが、この時に役立つのが排尿日誌です。排尿日誌は24時間の排尿をした時間と尿の量、水分を取った量などを自分で記録するものです。通常、1日の尿量はおおよそ20~25ミリリットル/キロ(1日の飲水量として体重の2~2・5%に相当)といわれています。体重50キロの人だと1日の尿量は1000~1300ミリリットル程度、飲水量は食事も含めて1000ミリリットルあれば十分といえます。日中の1回の排尿量は200~300ミリリットル程度で、寝ているときはその1・5倍(300~450ミリリットル)程度ためることができます。

 排尿日誌を付けることで、夜間頻尿の原因を大まかに見分けることができます。夜間の尿量の合計が異常に多い場合は夜間多尿を、夜の1回の排尿量が昼に比べて少ない場合は睡眠障害を疑います。昼も夜も1回の排尿量が少ない場合は膀胱に問題がある可能性を考えます。夜間頻尿の人はこれら三つの原因のうち二つ以上を持っていることも少なくありません。排尿日誌を付けてみても原因がよくわからず夜間頻尿で悩んでいる人は泌尿器科を受診してみるとよいでしょう。

 (岐阜赤十字病院泌尿器科部長、ウロギネセンター長)