医師がチェックシートに腫れ、痛みのある関節を記入する

整形外科医 今泉佳宣氏

 本日は関節リウマチのお話です。日常の診療で肩や膝の痛い患者さんはよく、「リウマチではないでしょうか?」と医師に尋ねることがあります。しかし「関節が痛くなる」ことと「リウマチである」ことはイコールではありません。関節リウマチ以外にも関節が痛くなる病気はあるので、正しくは「関節が痛くなる病気の一つに関節リウマチがある」ということになります。

 関節リウマチとは全身の関節が痛くなる病気です。中年以降の女性に多いのですが、男性にも起こることがあります。関節リウマチは、原因については解明されていない点もありますが、膠原(こうげん)病の一種であり、自己免疫疾患、つまり自らの細胞・組織に対して免疫反応を起こす疾患です。関節で免疫反応を起こした結果、関節を破壊することが知られています。

 全身の関節が痛くなると前述しましたが、初発症状として多いのは手関節(手首)、手指の関節の痛みや腫れです。そして朝に手がこわばるという症状も多く見られます。このような症状が数週間から数カ月続くことで、患者さんは医療機関を受診しようとしますが、どの科がよいのか悩むことがあります。かつては整形外科を受診することが多かったのですが、最近は内科を受診することも多いようです。大切なのは整形外科、内科にかかわらず関節リウマチを専門とする医師に診てもらうことです。

 医師は外来で問診を行い、日常生活状況や関節の痛みについて患者さん本人にアンケート用紙に記入してもらいます。次に全身の関節を診て、痛みのある関節と腫れている関節がどのくらいあるかをチェックして記録します。その次に検査をします。主に血液検査と関節のエックス線撮影です。血液検査では赤血球沈降速度(血沈)やC反応性タンパク(CRP)といった炎症を示す値が高くなっていないか、そして関節リウマチで値の上がることが多いリウマトイド因子(RF)などを測定します。さらに関節のエックス線撮影では関節の隙間(関節裂隙(れつげき))が狭くなっている所見や、骨のびらん、さらには関節の変形がないかを診ます。

 こうした診察所見や検査所見から関節リウマチの診断基準に照らし合わせて診断します。典型例の関節リウマチの診断は容易ですが、中には診断に難渋する症例もあります。関節リウマチの診断がなされたらすぐに治療を開始します。治療の基本は薬物療法ですが、現在多くの薬があり、個々の患者さんに合った適切な薬を選択することが治療の鍵といえます。

(朝日大学保健医療学部教授)