小児科医 福富悌氏

 インフルエンザの流行期には急な発熱があるとインフルエンザを心配することが多いと思います。インフルエンザの初期症状は、咳(せき)、鼻水、発熱で通常の風邪の症状と同じであるため、医療機関を受診すると周囲の流行の状況などからインフルエンザを疑って検査を行うことがよくあります。ところが検査を行っても陰性のことがあります。このような場合は本当に陰性の場合と、検査に反応していない場合が考えられますが、他の感染症も疑う必要があります。特に喉の痛みが強い時には一般に溶連菌と呼ばれるA群β溶血連鎖球菌を疑う必要があります。
 この感染症は冬から春と初夏に流行し、突然の発熱、喉の痛みから始まります。強く感染した場合には筋肉痛もあるため、症状だけではインフルエンザと区別がつかないことがあります。この溶連菌は、細胞周囲のタンパク質や多糖体などの物質と、この細菌が作り出す毒素によりさまざまな症状が出ることがあります。
 主な症状は、喉やへんとうの腫れと痛み、発熱です。腹痛や吐き気がある場合もあります。その他、舌がイチゴのように赤くなる、皮膚に発疹が出てかゆくなり、皮膚がむけるなどがあります。診断は、喉を綿棒で拭って菌を検出する迅速検査キットで簡単にできます。
 治療は、抗生物質を10~14日程度飲みます。症状がよくなっても、腎臓などの合併症を起こさないために、処方された分を必ず最後まできちんと飲むことが大切です。溶連菌は抗生物質に大変よく反応し、薬を飲んで24時間たてば菌の数は大幅に減って、他の人に伝染しなくなります。その後、2~3週間後に尿の検査をして、異常がなければ安心できます。
 予防は、ワクチンがないので手洗い、うがいをきちんとしましょう。また溶連菌感染症は何度もかかることがありますから、一度かかっているから大丈夫ということはありません。国立感染症研究所の感染症発生動向調査によりますと、岐阜県では今年になりインフルエンザはそれほど増えていませんが、溶連菌感染症は増加していますので注意しましょう。
(福富医院院長、岐阜市安食)