2012年1月14日、明浩は初めて、地元の将棋サロンに行きました。そこは、お茶を飲み、お菓子を食べながら、ゆるい雰囲気で将棋を楽しむ場でした。

 とはいえ、メンバーは、現役時代、大学や企業の将棋部に所属していた有段者の方ばかりです。級位者の息子は、最初は全く勝てなかったようです。

 その後、息子は約1年間、月1回ペースで通いました。当初、勝てなくても楽しく通えたのは、孫のようにかわいがってくださった越智正孝さんの存在が大きかったと思います。

 息子は数回、私が連れて行った後は、一人で自転車に乗って通いました。越智さんがお年玉をくださったことも、懐かしい思い出です。

 私は、今年の2月から、この将棋サロンに通い始めました。息子が昨年9月に1人暮らしを始め、「文聞分」の生徒に将棋を教えるのが私の役目になったので、勉強しようと思ってのことです。

約2年ぶりに将棋サロンを訪れた高田明浩さん(前列右から2人目)。その左が笹辺勝蔵代表=6月24日、各務原市三ツ池町、コミュニティ炉畑

 息子や生徒以外の人と将棋を指すのは、小学生のとき以来でしたので、とても新鮮でした。実力は、私だけが圧倒的に低いのですが、毎回、代表の笹辺勝蔵さんと越智さんをはじめ、皆さんがとても優しく教えてくださるので、楽しく通えています。

 笹辺代表に駒落ちの指し方を教わると、こんなふうに考えると良いのだなと、論理的思考の楽しさに目を見開かされます。教わったことを覚えても、変化があるので、その通りにはいかないのですが、将棋の奥深さを感じることができます。

 越智さんは、私に良い手を教えながら指すので、勝たせてもらうこともあります。なんだか申し訳ないなと思いながら指していますが、そんなふうに優しく教えてくれる越智さんがいたからこそ、息子は楽しく通えたのだなと、腑(ふ)に落ちました。

 ときどき、私が自分で良い手を発見すると、越智さんやそばで見ている方が、「それはいい手だね」と言ってくださります。そんなとき、私は、学校の先生に褒められた子どものように、とてもうれしくなります。

 まだ数回参加しただけですが、今の私は、息子が3年生のときの追体験をしている気がします。息子のように上達するわけではありませんが、息子がしてきたことを自分も体験できるのは、幸せなことだと感じます。

 メンバーの皆さんは、今も、息子のことを熱心に応援してくださっています。地元にこういう場があることを、とてもありがたく思います。

(「文聞分」主宰・高田浩史)