皮膚科医 藤井麻美氏
 朝晩は、めっきり冷え込むようになってきました。風邪やインフルエンザにも注意が必要ですが、空気が乾燥する冬場は、皮膚にとっても過酷な季節です。今回は、保湿剤によるスキンケアの重要性についてお話しします。特に赤ちゃんがいる家庭では、食物アレルギー予防の観点からも、スキンケアが大変重要であることが分かってきました。最新の研究も含めてご紹介します。

 皮膚の表面には水分を蓄え、潤いを与えてくれる角質層があり、その上は皮脂膜で覆われています。皮脂膜は皮脂と水分からできた保湿クリームのようなもので、角質層から水分が蒸発しないように防ぐバリアー機能があります。赤ちゃんはもともとこの皮脂膜が薄いため、とても皮膚が乾燥しやすいのです。保湿剤を塗ることで乾燥が抑えられ、特に肌がしっとりしている入浴後は効果が高まります=イラスト参照=。

 アトピー性皮膚炎の家族歴がある小児では、新生児期から保湿剤を使用していた子と、そうでない子を比べた場合に、アトピー性皮膚炎の発症率が低下したという研究結果が出ています。免疫力の未熟な赤ちゃんの皮膚に湿疹があると、そこに食べ物などが付着した時に、アレルギーを引き起こす危険性があることも分かってきました。

 湿疹が重症なほどアレルギーの程度も強くなる一方、アトピー性皮膚炎を発症した場合でも、早期に治療して湿疹をゼロにすることで、食物アレルギー発症を予防できる可能性が高いとの報告もあります。そのため、仮にアトピー性皮膚炎を発症しても湿疹を放置せず、できるだけ早くステロイド外用剤などで湿疹を治すことが大切です。

 ステロイド外用剤を赤ちゃんに使用することに、抵抗感のある保護者もいると思います。ですが、湿疹をそのままにしておくことのほうが、アレルギー発症というデメリットが大きいのです。適正に使用すれば、ステロイド外用剤は非常に有用な薬剤です。もちろん副作用もある薬剤なので、皮膚科医の指導のもとで使用することが重要です。

 私たち皮膚科医は湿疹の状態を診て、どの種類のステロイド外用剤を、どのくらいの量や期間、塗ればいいか、保湿剤はどのような時にどうやって塗ればいいか、常に考えながら診療しています。ぜひ、身近な皮膚科医にお子さんのスキンケアについて相談してみてください。そして、何よりもやはり予防が大切です。赤ちゃんのうちから保湿剤によるスキンケアを始めてあげてください。

(岐阜市民病院皮膚科医員)