笠松では、筒井勇介騎手に続き現役2人目のダービージョッキーになった藤原幹生騎手

 笠松勢では8年ぶりとなったビップレイジングの東海ダービー制覇。水無月シリーズの熱戦が行われ、清流ビジョンの横では水田が広がる笠松競馬場内にも、活気が戻ってきたように感じられる。「鮮烈ゴール」を突き刺して輝かしいダービージョッキーとなった藤原幹生騎手と、1番人気サムライドライブをぴったりマークして「ナイスアシスト」を決めてくれた佐藤友則騎手に、改めて激闘を振り返ってもらった。


 ―ダービージョッキーの実感は湧いてきましたか。

 藤原騎手 周りからお祝いの声を頂いたので...。レース後には、ジョッキーのみんながラインで連絡をくれた。笠松に着く頃までには「おめでとう」「ダービージョッキーかあ」とか。佐藤騎手も喜んでくれた。「俺は勝ってないのに...。でも良かった」と。祝勝会も開いてもらえるようなんで、レースでは引き続き頑張りたいです。

 ―4コーナーを回って6番手だったが、サムライドライブを差し切れると思ったか。

 藤原騎手 思っていた感じの位置取りと展開になって、前方の馬は伸びていなかったから。サムライドライブの方が強いと感じていたが、直線に入ってから「これは届きそうだ」と懸命に追って、勝てると思った。

 ―レース前から優勝を狙っていたのか。

レース直前も落ち着いた様子のビップレイジングと、東海ダービー制覇に燃える藤原騎手

 藤原騎手 チャンスがあれば「できるだけ上を」と狙っていた。ビップレイジングは、いつもより入れ込みが少なかったので、力を出してくれればと。(1900メートルに)距離は長くなるが、やってみないと分からないし、自分のレースに徹しました。

 ―ビップレイジングの次走や今後について。

 藤原騎手 (優先出走権がある)ジャパンダートダービー(GⅠ、大井)には行かないようです。距離的には、東海ダービーと同じ1900メートルの名古屋・名港盃(7月16日)ですかねえ。馬主さんや調教師さんが決めることなんで。自分としては、これからも一つ一つ、いいレースができるようにしたいです。


 サムライドライブにとっては、1冠目・駿蹄賞の1800メートルから100メートル延びただけだったが、お互い初めての距離が明暗を分けた。ラスト3ハロン(600メートル)で比較すると、サムライドライブの40.9秒に対して、ビップレイジングは39.7秒。4コーナーでの約5馬身差を一気にまくって、ゴールでは逆に1馬身半も突き放す会心のレースとなった。

 「本当に勝ったのか」。ゴール近くで笹野博司調教師は信じられないような表情だったが、「おめでとうございます」と祝福して握手を求めると、ようやく勝利を確信して笑顔がはじけた。10戦10勝だったサムライドライブが負けるとしたら、後続馬に「並ぶ間もなく、出し抜けを食らわされて」と思っていたが、最後にその通りになった。「笠松勢として一矢を報いたかった」と藤原騎手。愛馬ビップレイジングが鮮やかな逆転の一発を放った。


 東海ダービーには、昨年のマルヨアキト(5着)に続き、今年は名古屋のユーセイスラッガー(9着)で挑んだ佐藤騎手には、新たなチャレンジについても聞いた。

 ―優勝したビップレイジングの口取りにも一緒に並んでいましたね。

 佐藤騎手 お世話になっているオーナーで、馬にも多く乗せてもらっているんで、記念にと思って。(自分の馬は負けたが)笠松の馬が勝ってうれしかったし、藤原騎手には「おめでとう」と。苦労しているのを知っているし、努力していたからねえ。

東海ダービー2周目の2コーナー付近。逃げるサムライドライブをぴったりマークする2番手キンショーウィーク、3番手ユーセイスラッガー(佐藤友則騎手)。ビップレイジング(藤原騎手)は中団6番手を追走

 ―ユーセイスラッガーに騎乗し、サムライドライブを3番手から追撃して苦しめた。佐藤騎手も来年はダービージョッキーになりたいですよね。

 佐藤騎手 今回は、ずっと乗ってきた(先行タイプの)馬の競馬をしただけ。今年は兵庫ダービーにも乗せてもらった(ミネオラチャンで6着)。チャンスがあれば「ダービー」と名の付くレースを取りたいです。もちろん、いつも全レース勝つつもりで乗っていますが...。

ユーセイスラッガーに騎乗。ダービー初制覇を目指して、挑戦を続ける佐藤騎手

 ―笠松代表として挑んでいるジョッキーズチャンピオンシップ。第1ステージ・盛岡では総合7位(11着、5着)でしたが、第2ステージ・浦和(7月18日)への意気込みを。

 佐藤騎手 厳しい状況ですが、楽しんで乗って最高の結果を出したい。気負いはないが、残り2レースで1着・1着か、1着・2着を狙います。(総合Vならワールドオールスタージョッキーズ出場)

 ―8月27日からは大井など南関東で短期騎乗(2カ月間)にチャレンジされるが、どんな騎乗をしたいか。

 佐藤騎手 初めての挑戦ですが、結果を出したい。何かを得て帰ってきて、地元のレースでも生かしたい。南関東はレベルが高いが、中央に行くチャンスもある。いろんな競馬場で好結果を出して「地方の佐藤」と呼ばれたい。吉原寛人騎手(金沢)や赤岡修次騎手(高知)らに肩を並べられるといい。

 ―その期間は笠松不在となるが、3年連続のリーディングは目指しますよね。(25勝ほど離されている)筒井勇介騎手らが追い掛けてくるが。

 佐藤騎手 笠松では11月復帰となり、実質3カ月近く地元で乗れなくなるから、どうかな。でも大井など全国の競馬場での騎乗は「財産」になるし、(騎手として成長するためにも)チャレンジしなくては変わらない。


 すでに地方、中央で全国区の活躍を見せている佐藤騎手だが、その向上心は素晴らしい。ジョッキーズチャピオンシップ第2ステージで1着ゴールを連発できれば、JRAや世界のトップジョッキーと腕を競う大きな夢が開ける。

東海ダービーの表彰式。副賞としてサトノアラジンの種付け権も贈呈された

 東海ダービー過去48回の歴代優勝馬は、笠松勢16勝、名古屋勢24勝、金沢勢1勝、JRA勢7勝。単勝1.2倍で制したカツゲキキトキトらの活躍で脚光を浴びる名古屋勢に対して、近年劣勢だった笠松勢。今年は、全国的に注目度が高かったサムライドライブに土をつけたビップレイジングVの印象は強烈だった。

 今後も重賞レース賞金の上積みは必要となるが、デビューする2歳馬や中央からの移籍馬を「笠松の厩舎に預けてみよう」という馬主さんが増えることだろう。東海ダービー制覇の波及効果は大きくなりそうだ。6月28日には3歳牝馬重賞のクイーンカップが開催されるが、ビップレイジングの優勝を起爆剤にして、笠松所属馬の重賞戦線での進撃が続くといい。

 笠松ファンにとっても痛快だった今年の東海ダービー。応援馬券では、ビップレイジングの単勝(17倍)と馬連、馬単が的中した。サムライドライブの単勝1.0倍を物語るように、馬連600円に対して、馬単の4810円はおいしい配当となった。