岐阜大学精神科医 塩入俊樹氏

 「統合失調症」では、高血圧や糖尿病と同じように薬を飲んだり、リハビリテーションに参加しながら治療を続けていくことで、症状をコントロールして社会復帰を目指すことができます。そして"リカバリー(回復)"のためには、患者さんの家族など周囲の協力が大きな助けになります。今回は、家族の皆さんが、患者さんをどのようにサポートしたらいいのか、お話しします。

 病気が発症した当初は、本人だけでなく、家族も動揺したり、混乱することもあります。まず「病気になったのは、患者本人はもちろん、家族のせいではない」ことを理解しましょう。「統合失調症」は、脳内の情報を伝える神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン)のバランスが崩れて起こります(2016年11月28日付本欄参照)。

 家族が自身を責めたり、患者本人の将来を悲観したりする必要はありません。患者さんは、今までに体験したことのない強い不安状態におかれています(17年6月26日付本欄参照)。そのため、家族が本人のつらい状態を理解し、まずは「あなたの味方」というメッセージを送ってください。患者さんに対する家族の接し方が、今後の治療と経過に大きな影響を与えます。

 家族には、この病気の症状や治療法を正しく理解してもらい、リカバリーに向けた正しいイメージを患者さんと一緒に持っていただきたいです。また治療の第一歩は、症状をコントロールし、患者さんの悩みや苦しみを減らすことです。それには薬物療法などの治療の継続が必要なことを、家族からも説明してください。

 本人は病気になったことで自信をなくしたり、「思うように生きられない」と将来を悲観することもあります。どんなに症状が激しくても、患者さんが本来持っている「その人らしさ」が完全に失われるわけではありません。家族は、本人の「良いところ」や「その人らしさ」を見つけ、一緒にゆっくり育てていってください。焦りは禁物です。

 では、実際にどのように接したらいいのでしょうか。まず、希望を持って接することです。そして話をよく聞きましょう。ただし、「幻覚」や「妄想」に対しては大げさに反応せず、同意しない程度にとどめましょう。話し方のポイントとしては、①患者さんを見つめ、短く簡潔に大人言葉で②はっきり具体的に質問や指示は一つずつ③否定的な言葉や命令口調、ささいなことの注意は避けて、とがめない-などです。

 また、過保護な対応や家族の極端な自己犠牲はよくありません。本人ができることは手を出さず、家事手伝いなどの役割をはっきりさせて、患者さんのやり方やペースを尊重しましょう。"遠い目標"と"近い目標"を立てて(17年6月26日付本欄参照)、小さな変化を褒める。「ありがとう」をさりげなく言うことも大切です。

 最後に、患者さんを勇気づけ、治療を継続するように見守ること。そして不眠や食欲低下、イライラや徘徊(はいかい)、急に活発になるなどの"再発のサイン"を知り、生活習慣病に注意することも重要となります。

(岐阜大学医学部付属病院教授)