小児科医 福富悌氏

 新しい年を迎えて夢や希望に胸を膨らませる一方で、寒い外気を胸に吸い込むと刺激で咳(せき)が出て、人の目が気になります。

 寒くなって空気が乾燥すると、気管支の表面が刺激を受けやすくなるのです。そのため、たばこの煙、ウイルス、細菌、ホコリ、花粉以外に、冷たい空気を吸い込むだけでも刺激となって咳が出ます。

 もともと咳は、空気と一緒に気管支に入ってきた細菌やホコリなどの異物を気管支から外へ出すために起こります。気道の粘膜で受けた刺激は脳幹に伝わり、それが横隔膜、肋間(ろっかん)筋、腹筋などを動かして咳が出ます=図=。

 マスクをすると喉の乾燥をある程度は防げますので、着用することは大切だと思います。しかし、マスクの隙間から入る冷たい空気など、何かの刺激による急な咳は、止めようと思っても止めることができません。咳が出ることは感染を防ぐための大切な体の反応ですが、人前で咳が出ると何らかのウイルスに感染していると勘違いされ、嫌な思いをすることがあります。

 冬にする咳は、冷たい空気の刺激で鼻水やたんが多くなるため、風邪と間違われやすくなります。異物などを排除する咳は必要ですが、不用意な咳は避けたいものです。

 咳の予防には、しっかりマスクを着用することと、冷気の刺激を受けにくくする漢方薬を内服することをお勧めします。たんが切れにくく喉の渇きを感じるときは麦門冬湯(ばくもんどうとう)、鼻水や水様性のたんが多いときは小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、咳で喉が渇くときは麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、強い咳は五虎湯(ごことう)、食道に異物感がありゼーゼーという呼吸が伴うときは柴朴湯(さいぼくとう)が良いでしょう。風邪でもないのに咳が続くなら、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみましょう。

(福富医院院長、岐阜市安食)