東海ダービー馬のセブンカラーズ(山田祥雄騎手)が笠松遠征で復活の9連勝を飾った。2着はコンビーノ

 長期休養明けの東海ダービー馬があっさりと無傷の9連勝を飾った。

 1月のような降雪はなく、5日間開催が無事に進行した笠松競馬場の最終日メイン。前日の重賞レース以上に注目したのが、デビューから8連勝を続けている全勝馬の「初遠征&復帰戦」だった。

 9日のA1組牝馬特別「プリマヴェーラカップ」に、名古屋のセブンカラーズ(牝4歳、川西毅厩舎)が笠松初見参。脚元のけがによる休養を経て、昨年5月の東海ダービー以来の一戦となった。

 名鉄電車が往来する木曽川河畔の笠松コース。名古屋からの初遠征では、3~4コーナーで迫り来る電車の姿に驚いて止まった馬もいたと聞いたことがある。そんな中、落ち着いた様子のセブンカラーズは物見をすることもなくレースに集中。主戦・山田祥雄騎手の好騎乗で、2番手から危なげなく抜け出して完勝。単勝1.4倍に応えて連勝記録を伸ばした。

 ■7カ月半ぶりの実戦も、頭固定は揺るがず

 新設重賞「ブルーリボンマイル」のトライアルレース。勝ちタイムは競馬エースの推定を2秒も上回る1分26秒0で優秀だった。2着は逃げたコンビーノ(牝5歳、竹下直人厩舎)で、最後追い上げたが1馬身半及ばず。名古屋勢2頭による鉄板レースとなった。

 セブンカラーズは名古屋重賞を既に4勝。東海ダービー後は、右前種子骨の炎症のためクリーニング手術を経て復帰。7カ月半ぶりの実戦となった。「久々で初コースはどうか。コンビーノも力をつけているし」と感じたファンも多かったのか、2頭の馬連はどんどん下がって210円になった。それでもセブンカラーズの頭固定は揺るがず、やはりここは通過点だった。

 ■コンビーノは「シルバーコレクター」

 セブンカラーズはコンビーノをピタリとマークし、残り400メートルで一気に先頭を奪うと、楽な手応えで押し切った。重賞レースではなかったが、1着賞金は200万円。全勝馬の登場は「いつか負けるのでは」の思いも交錯し、やはり胸が躍った。

 2番人気・コンビーノには塚本征吾騎手が騎乗し、これで8度目の2着。重賞勝利はなく、特に笠松では岐阜金賞、ウインター争覇に続いて3戦全て2着で「シルバーコレクター」となったようだ。

9連勝を飾り、装鞍所に戻るセブンカラーズと山田祥雄騎手

 ■笠松コース「多少戸惑ったが、すぐに慣れた」

 レース後、山田騎手はセブンカラーズの復帰戦を飾り、ホッと一安心。レースを振り返ってくれた。

 これで9連勝。東海ダービー以来で「久々だったので、どうなのかなあと思った。そこまで強い追い切りではなかったので、ちょっと気合不足なところはあった。でも(仕上がり具合は)だいたいできてました」と不安を一掃し、喜びに浸った。

セブンカラーズに騎乗し、パドックを出る主戦の山田祥雄騎手

 初めての笠松コースについては「多少戸惑ったところはあったが、すぐに慣れてくれたんで」。2番手からの競馬については「ハナか番手ぐらいでいいだろうと。そんなに力まずに走っていて、あまり進んでいかないくらいでした」という。

 ■「抜けてからフワフワしていた」

 最後の直線の手応えは「抜けてからフワフワしてましたね。頭が上がっちゃって」。相手はハナを切って、セブンカラーズにかわされてからも食い下がったコンビーノ1頭の展開になった。「なんか後ろから1頭来るかなあとは思った」とのことだが、危なげない勝利だった。

 この馬の良いところは「あまり、かかっていくような感じでなく、スッと反応してくれるところで、乗りやすいですね」と愛馬との強力タッグで連勝街道をひた走る構えだ。

 初距離だったが「1400メートルなら問題ない。でも長いとどうかなあ」との思いはあるそうだ。2100メートルの東海ダービーでは最後に脚が上がったが、笠松コースは1400~1600メートル戦が多く距離適性も十分だろう。  

 ■勝利の美酒は「いつも通りハイボール」

 東海ダービーの勝利後のインタビューでは「やっとおいしいビールが飲めそうです」と楽しいコメントを届けてくれたが、今回9連勝での勝利の美酒は「ビールですか」と聞くと「いつも通りハイボールですね」とのことで、騎乗を終えれば毎晩、喉を潤していらっしゃるそうだ。

セブンカラーズを手掛ける川西毅調教師(中央)ら厩舎スタッフ

 ■「もっと伸びる馬、重賞を取っていきたい」

 今後のセブンカラーズについて「もっと伸びる馬だと思うんで、重賞を取っていきたいですね、やっぱり」とファンへ力強いメッセージ。近年の東海ダービー馬は古馬になって苦戦している傾向もあるが「帰ってきてから馬が大きくなっていたんでね(プラス10キロの515キロ)。成長したんだろうなあ」と最後は笑いながら、愛馬とのさらなる飛躍を誓っていた。

 ■川西調教師「無事に走れてホッと」

 全勝馬を管理する川西毅調教師はプレッシャーも大きいだろうが、ポジション取りについて「逆に2番手の方が良かったのかも。後ろからつつかれなくて」と好結果を喜んだ。オーナーのグリーンファーム愛馬会によると川西調教師は「長期休養明けで無事に走れてホッとしたし、連勝を伸ばせて一安心。真面目に走ったのは4コーナーで仕掛けられた時だけのよう。走破時計も優秀で、一たたきして、次走以降の走りが楽しみになってきた」とコメントを寄せた。初めての遠征競馬でも力を発揮でき、手応えをつかんだようだ。

 トライアルを制したことで、順調なら3月5日の笠松・第1回ブルーリボンマイル(SPⅠ、1600メートル)が視野に入ってくる。無敗の東海所属馬として大注目。地方全国交流レースでもあり、ノンストップの10連勝を目指したい。

ゴールドジュニアを制覇したミトノウォリアー(岡部誠騎手)とクビ差2着のクリスタライズ(加藤聡一騎手)

 ■名古屋勢強し、ミトノウォリアーがゴールドジュニア制覇

 笠松3歳重賞の第48回ゴールドジュニア(SPⅡ、1600メートル)は8日、名古屋のミトノウォリアー(角田輝也厩舎)がゴール前の競り合いを制した。1番人気に応えて重賞初制覇。年明け3歳になったばかりの若駒同士の一戦。単勝1.2倍と断トツの支持を集めたものの、最後の直線で楽勝とはいかず、名手・岡部誠騎手を慌てさせたが、きっちり結果を残した。

 ゴールドジュニアはかつて、オグリキャップをはじめミツアキサイレンス、ラブミーチャンら笠松歴代の名馬が勝ち、中央挑戦への関門となった出世レース。近年4戦はいずれも兵庫勢が1着だったが、今年は東海勢が強かった。

ゴールドジュニア1周目。アコー(塚本征吾騎手)、ナモロカ(長江慶悟騎手)の笠松勢が先行した

 ■アコー、ナモロカの笠松勢先行

 レースはアコー(塚本征吾騎手)、ナモロカ(長江慶悟騎手)の笠松勢が先行。勝ったミトノウォリアーは4コーナーで先頭を奪ったが、後方待機策から押し上げた笠松のクリスタライズ(後藤佑耶厩舎)が、加藤聡一騎手の手綱に応えて強襲。最後の直線ではミトノウォリアーに並びかけ、一瞬前に出る勢い。ラスト100を切って、岡部誠、加藤聡一騎手が激しいたたき合い。最後はもう一度伸びたミトノウォリアーがクビ差でゴール。兵庫のインテンシーヴォ(今井貴大騎手)が3着に突っ込んだ。

 名古屋の騎手3人が馬券圏内を独占。笠松勢では渡辺竜也騎手が兵庫・ホクザンバーリイで4着。後藤佑耶厩舎のもう一頭・ナモロカに騎乗した長江騎手は2番手で見せ場をつくり、重賞で6着に踏ん張り、大きな経験になった。

ゴールドジュニア優勝馬ミトノウォリアーと喜びの関係者

 ■岡部騎手「根性で差し返してくれた」

 岡部騎手は「スローペースで折り合いを欠いて、馬が行きたがった。最後1頭になると遊んじゃっていたし、課題の多いレースになった」。最後の直線では「一度はクリスタライズに外へ出られて、スイッチが入った。残り50メートルぐらいでまた伸びた。精神的にも大人になって成長してくれれば」と。まずは責任を果たせてホッとした表情。ファンに対しては「1番人気で一瞬負けそうになって、皆さんびっくりしたかと思いますが、馬が根性で差し返してくれました」と応援に感謝していた。

 ミトノウォリアーは2走前の中央交流重賞・兵庫ジュニアグランプリで5着と善戦した素質馬。岡部騎手は愛馬の初重賞Vで「あそこからギアを上げて差し返す脚があり、力はあるんで」と今後の走りに手応えを感じていた。

成長著しい2着のクリスタライズ(9)と加藤聡一騎手

 ■2着惜敗クリスタライズ、笠松のエース候補に

 地元・笠松の期待馬で2着惜敗のクリスタライズ。これまでは先行策で、ネクストスター笠松は11着玉砕。ライデンリーダー記念でもラスト失速で5着だったが、この日は一転、脚をためて3コーナーから追い上げ。最後はミトノウォリアーとのマッチレースに持ち込んだ。

 前走1400メートル戦(B-4組)で古馬を相手に1分27秒1と好タイム。逃げるより、前に目標となる馬を置いて差し脚を生かすレースが合っていそうだ。距離延長にも対応でき、一走ごとに成長力を感じさせ、笠松のエース候補に名乗りを上げた。

 ネクストスター笠松の勝ち馬で、放牧に出たワラシベチョウジャが実戦に復帰すれば、クリスタライズとの対決がまた見られそうだ。この2頭、今年の東海ダービー戦線に向けて、さらなる成長が期待される。
 

オグリキャップの11戦目。1987年12月29日の笠松10R出走表と予想記事など(以下いずれも競馬エース)

■「怪物」オグリキャップ、どこまで強くなるのか(ジュニアグランプリ・1987年12月29日)

 笠松時代のオグリキャップのレースを専門紙「エース」で振り返るコーナー。3歳(現2歳)での最後のレースは当時重賞だったジュニアグランプリ(1600メートル)で、1着賞金は360万円だった。

 

 「正真正銘の怪物だ オグリキャップ王道を行く」と力強い見出し。もちろん印は「オール◎」で不動の本命馬。前走で距離が1600メートルに延び、古馬勢をも撃破(2着に6馬身差)したことから「怪物」と呼ばれるようになった。エース「きょうの顔」のコーナーでも「いったいどこまで強くなるのやら。現在進行形で回を追って増幅中。そら恐ろしい怪物」とある。

 ■1年後に有馬記念を勝って「天下取り」

 地方の野武士が、ちょうど1年後には有馬記念を勝って「天下取り」を果たす立身出世のサクセスストーリー。まだ誰もそんな野望を抱けなかった頃で、ジュニアグランプリは地方・笠松での若駒の一戦だった。

 

 中央デビュー前の年末。初めての芝レース・中京盃(10月)での鮮やかな勝ちっぷりもあって、既に中央へのトレード話は浮上していたが、鷲見昌勇調教師は「今度こそ、東海ダービーはキャップでもらった」という思いも強かった。既にデビューから11戦目。古馬の風格を漂わせるオグリキャップにとって、同世代にもはや敵はいなかった。

 ■4馬身差圧勝で単勝110円、複勝は120円

 シルバーグリン(安藤光彰騎手)が逃げて、ギフキング(浜口楠彦騎手)が2番手先行。キャップは5、6番手の中団待機から徐々に進出。4コーナーで一気に先頭を奪うと、リードを広げてそのままゴールイン。2着トウカイシャーク(井上孝彦騎手)に4馬身差。800メートル戦ではキャップに2度勝っていた宿敵・マーチトウショウは出遅れが響き、最後方から追い込んだが4着どまり。キャップの単勝支持率は70%超で、配当は110円。複勝の方が高く、120円という珍現象にもなった。

 

 キャップには5馬身離されたが、後方から3着に突っ込んだのは7番人気・フジノノーザン(近藤二郎騎手)。半年後には東海ダービーを制覇しており、この世代の頂点を極めた。中央入りし、1988年のエリザベス女王杯(優勝馬ミヤマポピー)にも参戦。松永幹夫騎手の騎乗で13着に終わったが、笠松でキャップとも一緒に走った牝馬が、キャップと同じようにGⅠに挑戦していた。やはりこの世代の笠松のレベルは高かったといえる。  

出版される「オグリの里2・新風編」

 ■「オグリの里2・新風編」を23日に出版、協賛レースも

 人気馬オマタセシマシタは笠松で2勝を挙げたが、こちらもお待たせしました。「オグリの里第2巻・新風編」を出版します(岐阜新聞社発行)。発売日は2月23日(祝)で、笠松競馬場内オグリキャップ像横で新刊出版会を開くほか、記念の協賛レースも実施します。

 新刊の表紙はアンカツさん騎乗のライデンリーダーで、笠松競馬場での引退式ラストラン。巻頭は2023年のウマ娘シンデレラグレイ賞当日の熱狂ぶり。以下、2017年4月からの「オグリの里」コラムで構成。A5版206ページで、カラー写真を増やして1冊1500円(税込み)。
 
 新風編では「ウマ娘ファン熱狂」「渡辺騎手YJSファイナル進出」「吹き荒れたライデン旋風」など各時代の新しい風を追って、笠松競馬の歴史と魅力にも迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載です。

 問い合わせは岐阜新聞社読者事業局出版室、電話058(264)1620=月~金(祝日除く)9~17時。
 

 ■ファンの声を募集

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