
オグリキャップ記念を1着でゴールするムエックスと張田昂騎手。2着はアウストロ
「バッチリ」、でも「ドキドキ」でした。「1馬身差なら何とかなる」と追走し、直線勝負で最後は外からグイッと伸びた。「ウマ娘シンデレラグレイ」ファンの聖地巡礼で盛り上がる笠松競馬場での大一番は船橋、浦和の南関東勢ワンツーで決着した。
笠松育ちで有馬記念を2度制覇し、爆発的競馬ブームの立役者となり「地方と中央の懸け橋」にもなったオグリキャップの功績をたたえた笠松競馬の看板レース。「第34回オグリキャップ記念」(SP1、1400メートル)が5月15日、笠松競馬場で行われ、張田昂騎手(37)騎乗の2番人気ムエックス(牡7歳、船橋・張田京厩舎)が好位から鮮やかに差し切りVを飾った。

返し馬で雄姿を披露するムエックスと張田騎手。ラチ沿いのファンの方に馬体を向けて好調さをアピールした
1着賞金は2500万円から3000万円に増額され、ハイレベルな戦いでダートグレード競走復帰へまた一歩前進した。これまでオグリコールが響いた中山競馬場での有馬記念と同じ2500メートルの長距離戦だったが、昨年からは1周少ない1400メートル戦に距離短縮。開催時期は4月末から5月に移行した。北海道、南関東、兵庫から全国トップクラスの強豪が集まり、熱戦を展開した。
良馬場で勝ちタイムは1分25秒8。ムエックスは川崎マイラーズに続き重賞2勝目となった。父アジアエクスプレス、母フォーミー、母父アドマイヤマックスという血統。
半馬身差の2着に3番人気アウストロ(牡5歳、浦和)、さらに3馬身差の3着に6番人気セブンカラーズ(牝4歳、名古屋)が突っ込み、東海勢の意地を見せた。1番人気アラジンバローズ(セン馬8歳、兵庫)は伸びを欠いて4着(3着馬とはハナ差)に終わった。

1周目ゴール前、フクノユリディズが逃げて、上位に入った3頭が好位につけた
■アウストロと一騎打ち、ムエックスが差し切りV
レースは短距離戦となって、最初の直線で先行争い激化。大外からフクノユリディズ(兵庫)がインに切れ込み、主導権を握って向正面で2馬身リードした。
3コーナーではアウストロが仕掛けて一気に先頭を奪った。フクノユリディズは失速。東海ダービー馬で佐賀ヴィーナスカップを勝ったセブンカラーズが3番手で4コーナーを回った。最後の直線はアウストロと2番手に上がったムエックスの一騎打ち。逃げ込みを図り、いっぱいになったアウストロに対して、張田騎手のゴーサインに応えたムエックスが勢いで勝り、ゴール直前で差し切りVを決めた。
船橋移籍後は15戦して13連対。ダート1400メートルは中央3歳時の未勝利戦以来だったが、自在脚を発揮。陣営も「前走(8着)は落鉄が影響した。小回り1400でも合う」と挑み、最高の結果を引き出した。
この日は、JRAの「WIN5」に相当する「オッズパークLOTO」がキャリーオーバー中で高配当必至。普段の3倍以上売れており、ハヤヒデも参戦した。事前の投票で4レース目まで的中していて、馬券的にも胸が高鳴った。最終レース前、残り59票となっており「もしかして100万円コース」と5番人気フクノユリディズ逃げ切りを期待したが、そんなに甘くはなかった(結果は的中9票で33万円)。3点買った5レース目で大外れとなってしまった。

ゴール前の激戦。逃げ込みを図るアウストロを外からムエックスがかわした
■「息を入れてめちゃ楽に、1馬身差なら何とかなると」
張田騎手はレースプランについて「何パターンかイメージし、そのうちの一つがはまった。道中は思ったより流れなかったので、息を入れてめちゃ楽に行けた。最後の直線までは、アウストロと1馬身差なら何とかなると。初めての笠松コースでも反応が良かった。スタートがいい馬だから、1400でも最後の脚を使えちゃう」とムエックスとのコンビで大輪を咲かせた。

笠松競馬看板レースのオグリキャップ記念を制覇したムエックスと張田騎手(右)ら喜びの関係者
■マイナス12キロ、526キロに戻して重賞2勝目
「メンバー的には自信がついたし、幅広くこれからも使っていけそう」と手応え。順調なら「さきたま杯」(6月25日・浦和、1400メートル)に向かう予定。父の張田京調教師は来場していなかったが、担当厩務員によると「馬体重マイナス12キロは元々減らす考えでのこと。これからは1400メートルも選択肢に入りますね」と馬体重減は想定通り。川崎マイラーズと同じ526キロに戻して劇的Ⅴにつなげた。

アンカツさんに「おめでとうございます」と花束を贈られ、笑顔の張田騎手
■レジェンドのアンカツさんから花束を贈られにっこり
大勢のファンが迎えたウイナーズサークルでは、1着賞金4000万円だった交流GⅡ時代に、生え抜き馬サンディチェリーで勝った(1998年)アンカツさんもプレゼンターとして待機。表彰式で優勝を祝って「どうもおめでとうございます」と花束を手渡された張田騎手はにっこり。馬主さんには地域畜産物として岐阜県名産の飛騨牛も贈られた。

オグリキャップ記念制覇を祝ったホースマンたちの表彰式。トロフィーや花束を手にして喜びに包まれた
■「こんな大きいレースで勝たせてもらって」
ファンの前で張田騎手は「うれしいです。馬体重マイナス12キロでも厩務員さんがバッチリだと言っていたので、ちょうどいい仕上がりで自信を持っていった。スタートも位置取りもバッチリばっかりでした。競馬しやすい流れにはなった」。
最後の直線では、まだ前に1頭いた。「心境はもうドキドキですよ。かわせるかなって必死でした。こんな大きいレースで勝たせてもらって、名に恥じないように頑張っていきたい」と愛馬の頑張りをたたえ、ファンの祝福の声に応え、晴れやかな表情を見せた。

ファンに花束を贈った後、馬のイラストをあしらったサインを色紙に書きながら交流を深める張田騎手
受け取った多くの花束はファンに分けてプレゼント。馬の顔のイラストをあしらったサインも直筆で手渡し、交流を深めていた。オグリキャップ生誕40年の節目で、ウマ娘人気でも注目されるビッグレースを制し、笠松競馬場が大好きになったことだろう。
■渡辺騎手騎乗の北海道・ストリーム、不完全燃焼8着
渡辺竜也騎手が騎乗したストリーム(牡4歳、北海道・田中淳司厩舎)は昨年12月の笠松グランプリ覇者で重賞5勝馬。4番人気で笠松ファンの期待も大きかったが、後方から伸びを欠いて8着に終わった。「前回乗った時とは脚が違った」と渡辺騎手。前につけられずに不完全燃焼となった。

1周目の第2集団、上位に入った3頭は好位をキープ。ストリームやアラジンバローズも前を追った
佐賀・サマーチャンピオン覇者で高知・黒船賞2着のアラジンバローズも末脚不発で4着。ハイレベルな一戦で、下原理騎手は「1200メートル戦のような追走になってしまった」、新子雅司調教師も「脚がたまらなかった」と小回り笠松コースでの厳しい流れで、アラジンバローズには合わない展開になった。一昨年の笠松グランプリ王者で10番人気の名古屋・ルーチェドーロ=丸野勝虎騎手=は5着に踏ん張った。
■笠松勢参戦はタイセイドリーマー1頭のみ
ところでこのレース、地方全国交流競走だったが、笠松勢の参戦は1頭のみ。応援する地元ファンにとっては寂しい顔ぶれとなった。塚本征吾騎手騎乗のタイセイドリーマー(牡7歳、後藤佑耶厩舎)は昨年6着だったが、今年は10着に終わった。同じ東海勢でも名古屋の馬は4頭も出走しており、笠松古馬勢の厳しい現状が露呈した。
昨年12月の笠松グランプリでも笠松勢は1頭だけだったが、今回も「馬場を貸しているだけ」という悲しそうなファンの声がまた聞こえてきた。ダートグレード復帰も目指す看板レースに地元馬が2、3頭出走すれば、ファンも応援のしがいがあるだろう。笠松競馬に関わる全てのホースマンが強い馬づくりを進めて、新たなスターホース誕生につなげていただきたい。

ファンを楽しませたアンカツさん(右)らのトークショー&予想会
■アンカツさん、レース後の大食いで減量に苦労
来場した「笠松のレジェンド」アンカツさんは、特設ステージでトークショーに続いて、オグリキャップ記念の予想会を開いた。SKE48メンバーで笠松競馬応援番組「笠馬Ⅹ」出演の太田彩夏さんもオンステージ。
オグリは大食いキャラで有名だが、今では太めになったアンカツさん自身、レース後の飲み食いが半端なかったことが明かされ、爆笑トークとなった。
JRAのジョッキー時代、レース本番を控えるとボクサー並みの減量に励んだそうだ。「毎週、木曜日頃になるとサウナに入るなどして4キロほど落としていた。日曜にはレース後、まず麺類から食べて体をならし、いっぱい飲み食いして4キロ分はすぐに戻った。引退が決まってからは10キロぐらい増えていた」とか。岐阜で好きな食べ物は笠松の若手ジョッキーと同じくやっぱり「焼き肉」と即答した。
アンカツさん、笠松時代は19回も騎手リーディングを獲得しており「アイドルのセンター取れてますよね」と太田さんも若き日の名手の活躍をたたえた。アンカツさんは、オグリキャップが日本ダービーなどクラシック3冠レースに出走していたら「三つとも勝っていただろうね」と同世代で無敵だったとの見解も示した。
■ムエックスに▲「馬名が『カサマックス』みたいで来るかも」
後半はオグリキャップ記念の予想会。「ストリームに◎、アラジンバローズに○」と2人は同じ印になった。太田さんが▲にムエックスを推しており、アンカツさんは「馬名が『カサマックス』みたいで来るかも」と注目していたが、終わってみれば2番人気とファンの支持を集めたムエックスが優勝。予想会を見て、幸運をつかんだファンもいたようだ。

競馬ライターの浅野靖典さんも来場。「オグリの里」2巻(新風編)、3巻(熱狂編)などを購入された
■「オグリのベストレース」は90年・有馬記念Ⅴ2
場内で出店した「オグリの里」コーナーでは、第2回「オグリのベストレースは〇〇だ」「オグリのライバルといえば〇〇だ」の人気投票を実施した。
「オグリキャップ生誕40周年特別ライブ配信」に出演された競馬リポーター大恵陽子さんにも「オグリのベストレース」に投票していただいた。グリーチャンネルの人気番組でもおなじみの競馬ライター浅野靖典さんも立ち寄って投票。「オグリの里」2巻(新風編)、3巻(熱狂編)もご購入していただけた。
投票結果発表。
ベストレースは「ジャパンカップ! ホーリックスとの世界レコード争い(競馬リポーター大恵陽子)」
「マイルCSといいたいが、やはりラストランの90有馬記念! 右手を上げる武豊はアツイ!(一番乗りのファン)」
「オグリのベストレースは〇〇だ」投票結果
①(1)有馬記念(90年) 18票
②(3)ジャパンカップ(89年)10票
③(2)マイルCS(89年) 6票
④(5)有馬記念(88年) 4票
⑤(6)安田記念(90年) 2票
⑥(4)毎日王冠(89年) 1票
⑦(6)天皇賞・秋(88年) 1票
⑧(6)高松宮杯(88年) 1票
⑨(-)中京盃(87年) 1票
■「オグリのライバル」はタマモクロスⅤ2
「オグリのライバルといえば〇〇だ」投票結果
①(1)タマモクロス 18票
②(3)スーパ-クリーク 8票
③(4)ホーリックス 5票
③(6)バンブーメモリー 5票
⑤(4)マーチトウショウ 4票
⑥(2)イナリワン 3票
⑦(-)ノルンエース 2票
⑦(6)ハクリュウボーイ 2票
⑨(8)ヤエノムテキ 1票
⑨(-)ランニングフリー 1票
⑨(-)ペイザバトラー 1票
⑨(-)オサイチジョージ 1票
⑨(-)ホワイトストーン 1票
⑨(-)武豊 1票
カッコ内は前回順位。-は得票なし
オグリのベストレースは有馬記念(90年)が連続1位。ジャパンカップ(89年)が3位から2位にアップ。マイルCS(89年)は2位から3位となった。
オグリのライバルではタマモクロスが連覇。スーパ-クリークが2位浮上。ホーリックスとバンブーメモリーが3位に上がった。前回2位のイナリワンは6位となった。

第34回オグリキャップ記念優勝馬ムエックスの雄姿
■ダートグレード復帰は笠松競馬関係者やファンの悲願
昨年より500万円アップしたオグリキャップ記念の1着賞金3000万円は、南関東ではJpnⅢやSⅠクラスに相当。レース開催日の馬券販売額は、昨年を約1億2700万円上回る7億3300万円。入場者数は1017人から1966人と2倍近くに増えた。
統一GⅡレースの時代(1997~2004年)には、ナリタホマレで武豊騎手が制覇するなどJRA勢も5勝を挙げた。笠松競馬が経営難に陥ったため、2005年以降は地方交流レースに格下げとなった。全国の地方競馬でダートグレード競走がないのは笠松だけで、寂しい思いをしてきたファンは多い。
5月6日の名古屋グランプリ(JpnⅡ、1着賞金4000万円)は1番人気のサンライズジパング(牡4、JRA)が勝利を飾った。売得金はレース史上初めて10億円を突破し、16億4300万円で名古屋競馬の1競走最高売得金額となった。また1日の合計売得金は24億9800万円で、開催1日最高売得金額のレコードを更新した。かつて岐阜新聞紙上で「笠松競馬でもダートグレードが復活すれば、アイデア次第で1レースの馬券販売10億円も夢ではない」と提案したことがあった。今のオグリキャップ人気なら、10億円突破は実現しそうな勢いだ。
「競馬には地方、中央もないよ。ただ強い馬が勝つだけさ」と高くて厚い壁を突き破って有馬記念を2度制覇し、今なお輝きを増す永遠のスターホース。オグリキャップ記念のダートグレード復帰は笠松競馬関係者やファンの悲願でもあり、その実現が待ち遠しい。日本競馬界最大のヒーローの人気とブランド力を生かして、集客力と馬券販売もアップ。ダートグレードでも活躍できる馬づくりにもつなげていきたい。
☆ファンの声を募集
競馬コラム「オグリの里」に対する感想や意見などをお寄せください。笠松競馬からスターホースが出現することを願って、ファン目線で盛り上げていきます。
(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆「オグリの里3熱狂編」も好評発売中
