道の駅が全国で2番目に多い岐阜県。真夜中の駐車場を連日、複数台の同じ車が埋めている現状をたどって、地域社会に存在する孤独・孤立の実相に迫った。
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午前2時を回ったというのに、駐車場は約70台もの車で埋まっていた。今年6月、岐阜市柳津町仙右城(せんねじろ)の道の駅「柳津」。エンジンをかけっ放しにした車が数台。あとは人が乗っているのか一見しても分からない車が静かに止まっていた。店舗は営業時間をとうに終えており、周囲に人けはない。県庁から南に約2・5キロ、県道1号沿い。異様な光景が広がっていた。
インターネット上の「クチコミ」には、「車中泊で利用した」といった投稿があふれる。確かに、キャンピングカーや、旅の途中で立ち寄ったとみられる県外ナンバーの車も見える。だが、連夜続けて訪れてみると、あることに気付く。同じ車が複数台あり、いつも同じ場所に止まっている。そうした車は朝になるとどこかに出て行き、日が暮れるとまた戻ってくる―。
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車には共通点があった。年式のやや古い軽乗用車やワンボックス車で、長らく洗車をしていないのか表面につやが無く、塗装の剝がれも目立つ。サイドガラス越しに中を見ると、後部座席にはごみやビニール袋、くしゃくしゃに丸まった衣類、空きペットボトルなど、ありとあらゆる物が乱雑に押し込まれていた。
運転席では、背もたれを倒した人が目を閉じて眠っている。狭い後部座席に、身を押し込んでいる人もいる。住宅地に近いこの道の駅に毎晩やってきては、息を潜めるように車の中にいて、ひっそりと夜を明かしている。住まいを失い、車で暮らしている車上生活者たちだった。
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全国に約1200ある道の駅。所管する国土交通省はホームページで、設置の背景をこう説明している。
「道路交通の円滑な『ながれ』を支えるため、一般道路にも安心して自由に立ち寄れ、利用できる快適な休憩のための『たまり』空間が求められています」
道の駅柳津は岐阜市の指定管理施設。委託を受けた民間会社の社員で「駅長」を務める男性は、管理者としては想定していない「たまり」を把握している。「“常連”が5人いる。ただ、実際にはもっと多い可能性も十分にある」
実態は見えづらい。「仮眠しているだけと言われれば、それ以上は言えない」と、事実上の黙認状態にある。「車の窓から中の様子が見えれば『大丈夫だ、生きている』と確かめることはできる。でも、あまりしつこく声をかけるわけにもいかない」と対応に苦慮している。
人けのない深夜の県道沿いに広がる、ほぼ満車の駐車場。まるで地域社会から切り離されてしまったような暗闇の中に、現代における困窮の一端が確かにのぞいていた。
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