岐阜県の東濃地域を中心に路線バスを運行する東濃鉄道。今年、設立80周年を迎えました。9月7日(土)には、土岐市のイオンモール土岐で、設立80周年を記念したファンフェスタを開きます。このイベントで、80年の歩みを凝縮した記念乗車券が発売されます。どんな記念乗車券なのでしょうか。大きな券面には、東濃地域を中心とした半世紀の交通網の変化が記されていました。

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多治見駅前で並ぶ東濃鉄道の路線バス

 東濃鉄道設立80周年記念乗車券は、価格1460円。A1版(横841ミリ×縦594ミリ)という大きさ。新聞紙の見開きより、やや大きいサイズです。この広い紙面の表裏に、昭和44(1969)年ごろの路線図と、現在(2024年9月)の路線図が印刷されています。

 乗車券は4区間のセット。駄知鉄道として開業した土岐市駅前から東駄知(いずれも土岐市)、笠原鉄道の開業区間となる多治見駅前から笠原車庫(いずれも多治見市)に、古くからの歴史あるバス路線となる瑞浪駅前(瑞浪市)から明智駅前(恵那市)=小児運賃=。美濃太田駅前(美濃加茂市)から八百津ファミリーセンター前(加茂郡八百津町)=小児運賃=が対象になります。

新聞紙並みの大きさの80周年記念乗車券

 なぜ1969年の路線図なのでしょう。この頃は、名古屋駅や新岐阜駅、小牧駅から東濃地域へ至る長距離の路線バスがありました。東濃地域や可茂地域には路線網が広がっていました。愛知県や長野県の山間部への路線もありました。鉄道の駄知線(72年休止、74年廃止)と笠原線(71年旅客営業休止、78年貨物営業廃止)も健在でした。東鉄の鉄道・バスの最盛期といえる時期です。

 一方の現代。長距離の路線バスは姿を消しましたが、名鉄バスセンター(名古屋市)には多治見市郊外や可児市を結ぶ高速バスが乗り入れています。可児・多治見からは、東京への高速バスも運行されています。地域内のバス網は、地域によってはコミュニティーバスに姿を変えたところもありますが、一方で住宅団地や高校、ショッピングモールへの路線バスが走っています。

昭和44年ごろの路線図。懐かしい写真も掲載

 この路線図を見ているだけで、時間が溶けてしまいそうです。東鉄OB宅に保管されていた資料をもとに、東海三県の鉄道やバスなどの路線や時刻などを分かりやすく提供する活動を続けている団体「公共交通利用促進ネットワーク」の協力も得て、当時のルートも検証しながら1年半ほどかけて企画・制作しました。当時のバス車両や鉄道車両、運営していた施設の写真も盛り込んでいます。

 券面が新聞紙並みの大きさになったのも、路線図の停留所の文字が読めるようにという理由。ポスターのように丸めた状態での販売になるそうです。

 東鉄の路線だけでなく、他社線も懐かしさいっぱい。例えば、可児市のJR可児駅、名鉄新可児駅は、82年の可児市制施行による改称前の国鉄広見駅、名鉄新広見駅の名前で出ています。また、自治体も、土岐郡笠原町(現多治見市)や恵那郡上矢作町(現恵那市)など、平成の大合併以前の市町村名が出ています。岐阜・長野県境も、長野県山口村が岐阜県中津川市と越県合併する以前の県境です。

 東鉄の担当者は「2枚購入いただくと、表裏を見比べて楽しむことができます。路線や停留所の変化が明確に分かり、さまざまなところで歴史の移り変わりに気づくことができるのではないでしょうか。細部にまでこだわった内容を見比べながらお楽しみください」と話しています。

東濃鉄道の回送バスに表示される80周年メッセージ

 東濃鉄道ファンフェスタは、9月7日の午前10時から午後5時まで。バス停の丸看板などバス部品やオリジナルグッズの販売会、子どもが運転士やバスガイドの制服を着られる体験会、名産品や土産物の物産展などが行われます。駄知線や笠原線などの歴史を紹介する写真パネルなども展示。キッチンカーも出店します。

 有料のバス撮影会も行われますが、こちらは参加人数が予定数に達し、キャンセル待ちとなっているそう。東鉄バスだけでなく、岐阜バスや濃飛バス、北恵那交通、知多バスの路線バスや、名鉄バスの教習車、JR東海バスの2階建て高速バスエアロキングなど、バスファンが喜ぶ車両が集まる予定となっています。

 会場のイオンモール土岐へは、多治見駅前と土岐市駅前から路線バスが運行されています。秋の一日、路線バスに乗って出かけるのも楽しいのではないでしょうか。(広瀬丈士)