最近、バスに気になる広告が出ています。「運転士の応募が来ないと『こまります』」。路線バスの降車ボタンをあしらったラッピング広告。そんな広告をまとったバスが勢ぞろいするイベントが愛知県犬山市であると聞き、取材に訪れました。名鉄グループバスホールディングス(HD)が開き、バスの走行ショーもある華やかなイベントでしたが、背景には運転士不足という切実な課題がありました。
 
 紅葉が美しい里山に、名鉄グループのバス7社のバス7台が勢ぞろいしました。全てのバスの後面には「運転士の応募が来ないと『こまります』」というラッピング広告が張られています。

会場に集まった名鉄グループのバス7台=愛知県犬山市
 

 今回のイベント会場は、犬山モンキーパーク(愛知県犬山市)の駐車場。集まったのは、名鉄バス(名古屋市)、岐阜乗合自動車(岐阜バス、岐阜市)、濃飛乗合自動車(濃飛バス、高山市)、東濃鉄道(多治見市)、知多乗合(知多バス、愛知県半田市)、北恵那交通(中津川市)、名鉄観光バス(名古屋市)の7社のバス。

車体全体をラッピングした名鉄バス

 名鉄バスは車体全体へのラッピング。その他の各社のバスは車両後部のラッピングとなっています。降車ボタンを模したデザインは共通で、問い合わせ先の電話番号などは各社それぞれのものとなっています。

 名鉄グループバスHDは、名鉄グループのバス事業の中間持ち株会社。2022年7月に発足しました。コロナ禍で大きな打撃を受けたバス事業。ノウハウなどを共有し、経営効率化を図ろうと設けられました。

 バス業界では、運転士は以前から不足気味。コロナ禍での利用者激減で、離職も多くなりました。さらに、残業規制を強化する「2024年問題」で、人手不足が深刻化。日本バス協会の試算によると、2024年度は全国で2万人以上足りておらず、このままでは2030年度には3万6千人不足するとみています。運行本数を減らしたり、路線を統廃合したりする動きが各地で相次いでいます。...