今から60年前、二つの特急列車が誕生しました。大阪と北陸を結ぶ「雷鳥」と、名古屋・岐阜と北陸を結ぶ「しらさぎ」。かつての特急「しらさぎ」は、運転台の前が突き出たボンネット型の電車が走っていました。すでに引退した電車ですが、期間限定で当時の姿を見ることができると聞いて、京都へ向かいました。

 

◆20年前の姿そのもの

 京都市の京都鉄道博物館。特急「雷鳥」誕生60周年記念イベントとして、同館で保存している国鉄特急形電車489系の先頭車クハ489の1号車に、北陸方面を走った特急列車のヘッドマークを順次展示しています。イベントに合わせ、車体の雨樋も赤色に塗られました。

特急「しらさぎ」のヘッドマークを掲げたクハ489-1=京都鉄道博物館

 10月1日から22日にかけての「雷鳥」イラスト入りマークに続き、11月12日までは「しらさぎ」のイラスト入りマークが掲げられています。

 館内に入ると、青地にシラサギが描かれたヘッドマークが目に飛び込んできました。20年ほど前に岐阜駅や名古屋駅などで見かけた特急「しらさぎ」の姿そのものです。

 特急「雷鳥」と「しらさぎ」の運行が設定されたのは、1964(昭和39)年10月1日のダイヤ改正。東海道新幹線の開業と同時です。

特急「しらさぎ」のヘッドマーク=京都鉄道博物館

 「運行が設定された」というのは絶妙な表現です。実は、実際に「雷鳥」「しらさぎ」が走り始めたのは約3カ月後の12月25日。使う電車の完成がずれ込んだことで、年末の運行開始となりました。

 同館の特急「雷鳥」誕生60周年記念イベントは2025年3月18日まで。「しらさぎ」「雷鳥」を含め、計8種類のヘッドマークが掲げられます。同館では「懐かしい姿を見に来てほしい」としています。

記事の後半では、写真を交えながら特急「しらさぎ」の足跡を紹介します。

◆全国展開への第一歩に

 名古屋・岐阜や大阪と北陸を結ぶ特急電車を走らせるには、直流と交流の2種類の電源に対応した車両が必要でした。...