和歌山県沖の紀伊水道で2023年8月、愛媛県今治市の海運会社が運航する貨物船「いずみ丸」が、リベリア船籍のコンテナ船と衝突して沈没し、船長と航海士が死亡した事故で、運輸安全委員会は29日、調査報告書を公表した。いずみ丸の航海士が見張りを怠り、コンテナ船側も警告信号を発するなどの適切な対応をしなかったのが原因だとし、それぞれ安全意識や安全管理が不十分だったと指摘した。
事故は23年8月24日午後11時半ごろ、和歌山県日高町の北西約15キロの海域で発生。報告書によると、北西へ進むいずみ丸の当直だった2等航海士は当時、海図台で作業しており、南進するコンテナ船が間近に迫るまで気付かなかった。
コンテナ船の3等航海士は対向してくるいずみ丸を認識しながら、避けてくれると考えて危険性を軽視し、無線電話での意図確認や、汽笛などで警告するといった対応を取らなかった。
それぞれ回避するための操船が遅れ、いずみ丸の右舷にコンテナ船の船首が衝突。沈没したいずみ丸1等航海士が遺体で発見、行方不明の船長も死亡認定された。