福岡県大牟田市で2004年に起きた4人殺害事件で刑が確定した井上孝紘死刑囚(41)が、養子縁組した3人との手紙の発信を制限されたとして国に慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は19日、手紙のやりとりが許された「親族」には当たらないとし、請求を棄却した。手紙をやりとりできると認めた昨年7月の一審福岡地裁判決を取り消した。

 刑事収容施設法は、施設側が死刑確定者と親族の手紙のやりとりを許すと規定。高瀬順久裁判長は判決理由で「師弟関係または友人関係であり、養親子関係とは別。縁組は外部交通を確保するためだった」と判断した。

 原告側は、別の知人3人への手紙発信を認めなかったのも不当だと訴えていた。判決はうち2人への手紙は、同法の「心情の安定に資する信書」に該当すると認める一方、不許可にした福岡拘置所長の違法性は退けた。

 判決によると、井上死刑囚は09〜11年、2人を養父、1人を養子とする縁組をした。その後死刑が確定。18〜19年、縁組をした3人と知人3人への手紙発信を求め、いずれも不許可とされた。