日欧で署名した量子技術分野での協力趣意書=5月、東京都千代田区

 計算中に誤りが起きやすい現在の量子コンピューターの活用方法を探るため、政府はスーパーコンピューターと組み合わせて精度の高い結果を得る「ハイブリッド型」計算手法の研究を欧州連合(EU)と共同で秋にも始める。斬新な機能を持つ材料の創出などにつなげる狙い。手法の国際標準化も目指す。

 量子コンピューターは材料の機能を左右する電子のように、多数の物質の複雑な振る舞いを計算で再現するのに向く。ただ、一定の間違いが避けられないのが欠点だ。自ら発見して正す技術の研究も進むが、本格導入はまだ先とみられている。

 一方、理化学研究所は6月、量子コンピューターの計算結果をスパコン「富岳」(神戸市)が評価し、不自然な点があれば修正することで精度を改善できたとの成果を発表。現状の量子コンピューターでも、スパコンと連携させれば産業に役立てられる可能性が出てきた。

 日欧の共同研究は5月に署名した量子技術分野での協力趣意書を具体化したもの。日本からは産業技術総合研究所やKDDIなどが参加し、9月ごろ開始する予定だ。