北海道福島町で7月、新聞配達員(52)がヒグマに襲われて死亡した事故で、このヒグマを駆除した猟友会のハンターの男性(69)が、共同通信の取材に緊迫した現場の様子を証言した。

 襲撃後、捜索を続けていた18日未明、ヒグマ出没の連絡を受けて現場に着くと、茂みの中に気配が。やぶから「バキバキ」と葉を踏む音が向かってきた。

 銃を構えると、暗闇から体長約2メートルのヒグマが姿を現した。毛は興奮で逆立ち、顔は倍以上に膨らんで見えた。周囲には住宅がある。銃口を下に向けて撃つため、ぎりぎりまで引き寄せた。ヒグマは目の前で両足を踏ん張り、頭を下げた。襲いかかる前の姿勢だ。引き金を引いた。倒れたヒグマとの距離は2・8メートルだった。

 翌日、2021年に町内で高齢女性を襲ったのと同じヒグマだったと知った。あの夏、2カ月に及んだ捜索の間、毎朝襲撃現場で手を合わせた。「必ず敵とってやるから、俺を守ってくれ」。駆除後、4年もかかってすまなかったと犠牲者に謝りながら家路についた。「あのばあちゃんが撃たせてくれたんだ」