2024年10月から、全9回にわたり連載してきた「児童数の増えている小学校はここだ!」。岐阜県内9市(岐阜、大垣、美濃加茂、可児、各務原、多治見、羽島、高山、瑞穂)の過去20年の児童数の推移を分析しました。「少子化が深刻さを増す中、子どもが増えている学校があるのか」との疑問を基に、公立小学校ごとのデータを調べてみると、総児童数が減っている市にも、局所的に増えた学校が存在していました。「その背景を探ることで、少子化に負けないまちづくりのヒントが見出だせるのではないか」との狙いから、連載をスタートしました。取材したのは元岐阜新聞記者で、フリーライターの西山歩さん。今回は西山さんに、1年間の取材を通して見えてきた「子育て世代に選ばれる地域の特徴」を語ってもらいました。聞き手は馬田泰州・岐阜新聞社デジタルコンテンツ部長です。(岐阜新聞デジタル独自記事です)
◆児童増の要因は駅近、だけではない
馬田 取材はどのように進めたのでしょう。
西山 岐阜県教育委員会が毎年公表している公立小学校ごとの児童数データを利用しました。2005年度から24年度まで20年間の推移をグラフ化し、増減率を比較しました。最終回の瑞穂市編は記事公開前に25年度分が公表されたため、06年度からの20年間としました。
各校の増減率を地図上に表し、地形や交通網から児童数増減の背景を探ったほか、各地の住宅事情に詳しい不動産鑑定士の皆さんに取材し、専門的な分析をお聞きしました。
馬田 取材をしてみて、率直な感想は?
西山 まず、あらためて少子化の深刻さを実感しました。今回取り上げたのは、ほとんどが県内でも規模の大きな市ですが、市全体で児童数がプラスとなったのは美濃加茂と瑞穂の2市のみでした。小規模の市や町村部はさらに厳しく、岐阜県ではこの20年間で、公立小学校の児童がおよそ3万3千人減り、25年度は約9万1700人となりました。
調べた中にも、児童が半数以下となった学校がありました。適正な学習環境を確保するため、学校統合や義務教育学校への転換を行った例も少なくありません。
ただ、そのような状況下でも、9市のうち7市に児童の数が増えている小学校がありました。多いところでは増加率が30%を超え、...