
リハビリ強化、体力と自信創出(特別養護老人ホームるぴなすビラ 岐阜市)
特別養護老人ホームで暮らす家族と一緒に旅行に行きたい-。この思いを叶えるには、普段介護を受けている方が、最低限歩けること、ペーストなどになっていない状態の通常食が多少は食べられること、家族も歩行や車いすの介助、トイレのサポート、体調などの異変に気付けることなど、さまざまなハードルがあり簡単なことではありません。
そこで岐阜市の特別養護老人ホームるぴなすビラでは「一緒にお出掛けしたいという家族や本人の思いに応えたい」と、貸し切りバスを使った日帰り旅行を年1回行っており、毎回、利用者と家族、介護職員の40人ほどが参加しています。基本的には家族水入らずの時間を過ごしてもらい、トイレ介助など、慣れていない家族では対応が難しいときには介護職員がサポートしています。
コロナ禍でしばらく中断していましたが昨年10月に復活させ、三重県桑名市のなばなの里へ行きました。今年は10月に名古屋市の名古屋港水族館への旅行を計画しています。過去には京都市へ行ったこともあります。また日帰り旅行に参加をしたことで家族が旅行中の接し方を理解することができ、家族だけで岐阜市内のホテルに宿泊し、かけがえのない時間を過ごすことができたというケースもあります。
ただ昨年、久しぶりに実施してみて、車いす利用者であっても、バスから乗り降りする際などに自力で歩かなければならない場面があることを施設側が再認識し、準備の大切さを痛感。そのため、コロナ前に行っていた「ハードレク」と名付けた歩行訓練を7月に復活させました。
ハードレクは、普段車いすを使っている利用者が歩行器を使って一周30メートルほどの距離を2回歩くという内容。利用者の両サイドに介護職員が付いて身体を支え、さらに足の力が突然入らなくなったときに備えて介護職員1人が車いすを押して付いていきます。看護師も立ち合い、利用者の様子を注視して非常時に備えます。これを週3、4回行い、多い日は10人近くが参加します。
在宅復帰を目指す介護老人保健施設などでは、運動機能の回復のための足腰のリハビリの実施は珍しくありませんが、特別養護老人ホームでここまでの強度で実施することは比較的レアケースです。
再開させてまだ2カ月ほどですが、介護職員から見て、定期的に参加している利用者の多くは歩くことに慣れてきた印象で、トイレ介助の際の立ち上がりがスムーズになったケースもあると言います。
食事面でも旅行が大きなモチベーションに。現在はペースト食を食べているものの、来年以降の参加を目指して、通常食を食べられるよう、嚥下(えんげ)トレーニングに前向きに励んでいる方もいます。
るぴなすビラを運営する信輪会の坂口さんは「本人も家族も『どうせできない』と思いがちですが『やらない』と『やれない』は全く違います。やってみることで、前向きな気持ちを取り戻せることもあります。旅行はその良い機会。旅行など目標を立てることで生活の質を向上させていただきたい」と話しています。









