かつて非行を繰り返し、少年院に入った経験がある男性。立ち直りを支えた人たちに感謝しつつ「更生できるかは本人次第」と語った=岐阜市内

 「立ち直れる環境があったおかげだった」。少年院送致された経験のある電気工の男性(27)=岐阜市=は振り返る。社会とのつながりを求めて再起し、家庭も持った。「自分の子どもには同じ思いをさせたくない」。更生への道筋があったからこそ、今の自分があると感じている。

 非行に走ったのは15歳の頃。家を出ていた母親が再婚し、新しい夫を連れて戻ってきた。「急に親の顔をするようになった」姿に反発し、毎夜、街で仲間と群れた。バイクのヘルメットを盗んだ罪に問われ、少年鑑別所で観護措置処分を受けた。さらに中学生を恐喝したとして摘発され、少年院で約11カ月を過ごした。

 規律正しい環境の下で、自分自身を見つめ直した。「学歴はつけておけ」。熱心に支えてくれた担当官の言葉に胸を打たれた。出所後はかつての仲間との関わりを絶ち、県内の定時制高校へ入学。すぐには変わり切れずに喫煙が元で退学になったが、通信制学校に入り直し、家計の足しにしてもらうためにアルバイトもしながら机に向かった。20歳になったのを機に結婚。何度か転職しながらも、安定した収入が得られるようになった。

 改正少年法は新たに成人となる18、19歳を「特定少年」として保護対象とした一方、逆送されて起訴されれば20歳以上と同様に公判で裁くことにした。

 厳罰化したともいわれる改正法に男性は肯定的だ。「更生できるかどうかなんて、結局は自分次第。今だから言えるけど、被害者の気持ちだってある。立ち直りだけじゃなく、ちゃんと刑罰を受けることも必要では」。少年院は男性にとって更生のきっかけをつかんだ場所だったが、立ち直れない少年が数多くいることを知った場所でもあった。

 犯罪白書によると、刑法犯で摘発された少年は2020年、全国で1万7466人で、うち34.7%が再び摘発された少年だった。男性が出所後、19歳になるまでの保護観察を担当した保護司の男性は「手の掛からない子だった」と述懐しつつ「大半の子はそうじゃない」と明かす。本音を隠したり、仕事をあっせんしてもすぐに辞めたりと、一筋縄にはいかないという。

 改正後も引き続き、20歳未満が少年法の適用対象になる。岐阜保護観察所の長尾和哉所長は「特定少年となる18、19歳は、いかようにも変化できる柔軟さがあるという位置づけは変わらない」と捉える。立ち直りに重きを置きつつ、厳罰化の要素を併せ持つ改正法。変わり得る少年に社会がどう関わり、手を差し伸べていくかを問い掛けている。

 【非行少年の処分】 家庭裁判所が、調査官の社会調査や少年鑑別所の資質鑑別で家庭環境など事件の背景を綿密に調べた後、少年院送致や保護観察といった保護処分を決める。少年院では少年に対して刑罰としての懲役などは行われず、出所後に社会に適応し規律ある生活が送れるよう、教科教育や職業訓練、生活指導などが施される。少年審判で少年院送致となる場合、現行では柔軟に期間が決められていたが、改正少年法では犯情の軽重を考慮して「3年以下」と明示された。

(2022年3月31日掲載記事)

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