3月下旬、ドイツ南西部のバーデン・ビュルテンベルク州で木工の職業教育機関3校を視察してきた。マイスター制度で知られるドイツの職業教育を現場で見て、日本の職業教育や後継者育成の参考にするのが目的だ。結論から言うと、ドイツでは学校と企業が密接に連携して教育を行っていること、個人のスキルアップを社会が保障していることの2点に感銘を受けた。
ドイツの教育制度は日本と比べて複雑で州ごとに異なるが、単純化すれば初等学校(7~10歳)の後、高等教育か職業教育かのコースに分かれる。職業コースを選ぶと5~6年の中等学校を経て、16歳ごろから職業学校で学び始める。職業学校は「デュアルシステム」と呼ばれ、学校と職場を行き来しながら学ぶ独特の仕組みを持つ。私が視察した学校の場合、1年生はずっと学校で授業を受けるが2、3年生は週3日半を木工所や工務店などの職場で、残り1日半を学校で学ぶ。卒業後、相互が望めばそのまま就職につながる。起業を望む場合は学校でさらに1年のマイスターコースへ進学する。
ある学校ではミニ授業をさせてもらい、学生たちとディスカッションもした。基礎を学校でしっかり学びながら進路を見極められる点で、みなデュアルシステムのメリットを感じているようだった。私が勤める県森林文化アカデミーでも企業見学やインターンシップを充実させているが、ドイツはさらに連携度が高い。
先に10歳でコースが分かれると書いたが、実際にはいろいろなルートで職業学校にたどり着いており、10代の若い学生に交じり20代や30代もいる。たとえば普通高校を卒業して大学受験資格を取ったが、将来プロダクトデザイナーになりたいので先にここで手仕事を学び、その後大学へ行くという学生や、大学で建築学科を出た後に実践的な学びを得るため職業学校に来て、さらにマイスターコースを経て工務店を起業予定という学生などさまざまだ。
それを後押ししているのが、授業料が無料であり(マイスターコースのみ有料)、デュアルシステムでは職場で給料も支払われるということ。スキルアップを社会が保障しているのだ。学生から「アカデミーでは学びながらお金がもらえるのですか?」と問われて、逆に日本の専門学校や大学では授業料を払わなければならないことを伝えると、教室中がどよめいていた。
一般社団法人技の環が支援している伝統工芸の分野ではそもそも教育機関が少なく、後継者不足に悩む事業所も多い。ドイツのデュアルシステムのように、伝統工芸の現場と森林文化アカデミーのような専門学校がもっと連携を深められないか、などと思いを巡らせている。
(久津輪雅 技の環代表理事、森林文化アカデミー教授)
【技の環】 岐阜県から委託を受けて、伝統技術の継承を支える一般社団法人。後継者育成、原材料や道具の確保などの相談を受け付けている。なお今回のドイツ視察はウェブサイトで報告を連載しており、「森林文化アカデミー ドイツ木工視察報告」で検索すると読むことができる。










