全国でも数少ない竹皮の専門店が可児市にあるのをご存じだろうか。竹皮は今でこそ見かけることが少なくなったが、ちまきや羊羹(ようかん)などの食品を包んだり、版画を刷る「ばれん」や草履を作ったりするのに用いられる自然素材だ。通り沿いの民家に「吉田包装店」と小さな看板が出ていて、吉田毅さん(71)と妻の鏡子さん(64)が営んでいる。昭和11(1936)年、毅さんの父が名古屋での修業を経て創業した。当時は肉に魚に味噌(みそ)と、何でも竹皮に包んでいた時代で、竹藪(やぶ)があれば筍(たけのこ)、竹皮、竹材が売れたのでいい生活ができたのだという。毅さんも一度は勤めに出たが、24歳頃に実家に戻って後を継いだ。途中、全国で竹が枯死して入手できなくなりコンビニエンスストアの経営もしたが、その後竹皮の加工販売を再開して今に至る。
竹皮として使えるのはマダケの皮だけで、モウソウチクの皮は硬すぎるため使わない。皮を収穫できるのは梅雨時の6月中旬から7月上旬まで。成長した竹から皮が落ちてくるのでそれを拾う。収穫自体は難しくはないが、落ちたまま竹林に何日も放置しておくとカビが生えるため、毎朝拾いに行って天日でよく乾かさなければならない。丸まった後に内側が湿ったままにならないよう、時々広げて逆の端から丸め直す。乾いて長さ40センチから80センチまでに仕分けたら、再び水をかけて戻し、手で一枚ずつ伸ばしていく。それを今度は幅9センチから30センチまで細かく分けて束にする。
吉田さん夫妻の一番の悩みは、材料集めの人手が足りないことだ。かつては季節になると竹皮を拾う人が各地にいたし、子どもたちも登校前に竹林に入って小遣い稼ぎに皮を集めていたが、今はいない。需要は全国からあるのに、材料がないため応えきれないのだという。最近、長良川鵜飼の鵜籠(かご)を作る竹細工職人たちが集めて届けてくれるようになったので、とても助かっているそうだ。
店では40代の息子が荷造りなどを手伝ってくれるほか、中学生の孫たちも選別作業を助けてくれている。鏡子さんは「竹は素晴らしい素材なんだから、竹アカデミーをつくって後継者を養成した方がいい。フランスからも引き合いが来たし、世界に打って出られるよ」と明るい夢を語る。
いま、原油の流通が止まり、石油由来の製品にこんなに頼っていたのかと気付かされる日々が続くが、竹皮のような優れた自然素材をもう一度見直す好機になるのかもしれない。もうすぐ収穫の季節が始まる。吉田包装店では1キロ千円前後で買い取りをしてくれるので、竹林をお持ちの方は拾ってみてはいかがだろうか。加工する人も歓迎だそうだ。
(久津輪雅 技の環代表理事、森林文化アカデミー教授)
【技の環】 岐阜県から委託を受けて、伝統技術の継承を支える一般社団法人。後継者育成、原材料や道具の確保などの相談を受け付けている。今回の竹皮についての問合せは吉田包装店、電話0574(62)0459。詳しくは同店のホームページ、http://harusato.jpを参照。










