「日本一道迷いしやすい登山道」は、岐阜の市街地近くの低山だった。登山地図アプリ「YAMAP」を運営するヤマップ(福岡市)が、利用者のビッグデータを基に全国の迷いやすい登山道5カ所を選出したところ、その一つに岐阜・各務原市境の権現山(316・5メートル)が挙がった。地元の人は散歩感覚で登る山。しかし、登山好きの記者が実際に登ると低山の怖さを味わうことになった。

「あれ、今どっちから来た」。本当に迷うとは思っておらず困惑した。不安に思いながらも進んでみたところ、間違えた道を選んでいたことに気づき戻ってくることができた。地図がなければ本当に迷っていたかもしれない。
権現山一帯は「地元の人なら運動靴と普段着で登る」(各務原市職員)という、親しみやすい登山道だ。各務原市側からは「各務原アルプス」、関市側からは「関南アルプス」と呼ばれ、自治体が健康づくりや観光向けにアピールしている。ところが、ヤマップはこの登山道の一部を「日本一道迷いしやすい」と指摘した。
印象は「地域の山」だが…

YAMAPは衛星利用測位システム(GPS)付きの地図アプリで、登山者が自分の足取りを公開できるほか、危険箇所や絶景スポットなどを地図上に書き込める。利用者は他の登山者の投稿をヒントに登山を楽しむことができる。
ヤマップはこれらの機能を基に、昨年から迷いやすい道の特定を始めた。約16万件もの投稿から「迷いやすい」というタグ付けのあったものを抽出。他の利用者から特に参考にされたものを抜き出し、さらに投稿された足取りと照らし合わせて、道迷いが多発している地点を特定した。詳しい内容は同社が7月1日に発表する予定だ。
◆天覚山~吾野ノ頭(埼玉県)
◆子ノ権現~六ツ石ノ頭(埼玉県)
◆御在所岳 武平峠近く(滋賀・三重県境)
◆高畑山~中ノ沢ノ頭(埼玉県)
こうして選ばれた全国五つの登山道で、一番目に挙がったのが「権現山~桐谷坂峠」だ。高低差は約210メートル。毎年秋には一般参加のスタンプラリーまで開かれるなど、地域になじみの深い場所だ。とても迷う山には思えなかった。

登山道は迷い道、山頂は爽快
謎を確かめるべく、実際に登ってみることにした。桐谷坂峠の近くをスタートし、山頂まで往復するコース。登山に臨んだ6月10日の天気予報は曇りだったが、小雨が降っていたため、車内で午前11時ごろまで待ち、麓の駐車スペースを出発した。登山口に着くまでは高速道路を走る車の音が聞こえており、迷うことはないと思われた。
