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オグリの里

笠松競馬入場再開、助っ人の名古屋勢が頼り



観客入りでのレースが再開される笠松競馬場。正門横に立つオグリキャップ像は「ウマ娘」ファン聖地巡礼の目玉スポットだ

 「笠松競馬場へようこそ」とオグリキャップ像が歓迎。コロナ禍による緊急事態宣言が解除され、1日から笠松競馬場への入場が再開された。各地方競馬の場外発売に続いて、2日からはJRAの馬券も購入可能になった(シアター恵那でも)。笠松競馬のレースは、5~8日のオータムシリーズから観客入りで開催。7日に重賞のオータムカップ、8日には秋風ジュニアが行われ、馬名や騎手名が印字された応援の「紙馬券」を手にして、ライブ観戦が楽しめる。

 正門横ではシンボルであるオグリキャップ像が来場者を出迎えてくれる。「ウマ娘」ファン聖地巡礼の人気スポットとして、笠松競馬場デビューの若者も詰め掛けて、午前10時の開門前から長い行列ができそうだ。

 9月に再開された笠松競馬は、2開催を無事に終えることができた。一連の不祥事で所属騎手は9人に半減し、フルゲート(12頭)に満たず。名古屋トップジョッキーの岡部誠騎手や丸野勝虎騎手ら助っ人が頼りになっている。木曽川河畔のコース内には田園風景も広がり「実りの秋」を迎えた。のどかな笠松競馬場ならでは美しいコース。再開以来「笠松×名古屋」ジョッキー戦の様相で好勝負が繰り広げられており、腕比べは見ものだ。

 ■笠松勢9人、名古屋勢の方が多く11人が参戦

 一時激減していた笠松所属馬は、9月末には445頭に持ち直した。長期休養明けとなったが、高原シリーズで363頭、長月シリーズでは378頭が本番レースに参戦し、ゴールを目指した。所属騎手が引退した厩舎では、主戦が不在となったが、名古屋の騎手への騎乗依頼で、何とか乗り役を確保。参戦した騎手は笠松勢が「9人」に対して、名古屋勢は「11人」で助っ人の方が多かった。

 後半戦では長江慶悟騎手がけがで離脱したため、笠松勢は8人に減ったが、お互いガチンコ勝負で「新生・笠松」のリスタートを盛り上げた。大原浩司騎手会長は「名古屋の騎手のおかげで多頭数になった。力を借りてやっていきたい」と参戦に感謝していた。

 8カ月間の開催自粛中はお手上げ状態だった馬主さんや調教師たち。休養十分だがストレスもたまっていた管理馬を、レースで思い切り走らせたかったことだろう。勝利を挙げてくれれば最高だし、5着以内に入れば賞金が出る。騎手や厩務員も担当する愛馬を攻め馬から仕上げて、レースで使うことは明日への活力になる。

 再開以来、いまや笠松競馬のレギュラーとして欠かせない存在となって活躍が目立つ岡部騎手ら。レース後、笠松での騎乗の印象などについて聞いた。

名古屋の岡部誠騎手は笠松での重賞Vが多く、再開後も勝利を量産。名古屋、笠松両方でのリーディングも狙える勢いだ

 ■岡部騎手1日4勝、笠松リーディングも狙えそう

 観戦することができた9月23日。名古屋の騎手が11レース中8勝(2~8Rで7連勝)を挙げ、笠松の騎手の3勝を大きく上回った。名古屋リーディングのトップを快走する岡部騎手は、再開後の笠松2開催でも8勝、7勝と1着ゴールを量産。一方、笠松勢では渡辺竜也騎手が6勝、10勝。ともに高い勝率で今年の笠松リーディング争いを演じている。

 4000勝超えの名手である岡部騎手は44歳で、笠松でもオグリキャップ記念やラブミーチャン記念など重賞Vも数多い。「笠松の騎手が足りないんで、少しでも名古屋の騎手も力を貸して、盛り上げられれば」とサポートを率先。「笠松のいい馬にも騎乗させてもらっているんで、もちろん、いいパフォーマンスを見せたいなと。『いまの笠松の状況だから』というだけじゃなくて、どこの競馬場でも精いっぱい乗り、普段と変わらないことを正確にやることが一番だと思っています」と、頼もしい助っ人ぶりを発揮してくれている。

 この日の笠松でも4勝を飾って存在感を示した。「笠松リーディングも取っちゃうかも」とのファンらの声については、「いやー、なかなか。まあ、そうなればいいんですけどね。お互いに若い騎手も多いんで、僕の騎乗が刺激になって『もっと頑張らなきゃ』という若手もでてきてほしい。『笠松も負けていないぞ』と、お互いレースに乗っていいものをつくっていければ」と笑顔で語り、東海公営の底上げも期待していた。

 全国レベルの活躍馬では、近年やや劣勢となっている笠松・名古屋だが、人馬の交流が盛んになることでスターホース誕生につながればいい。今年の笠松リーディング争いでは渡辺騎手が22勝、岡部騎手が18勝で2強の様相。藤原幹生騎手11勝、向山牧騎手と松本剛志騎手が10勝で続き、12月末までの実質4カ月間で競う。地元・笠松勢としては、有力馬への騎乗依頼を名古屋の騎手に譲ることなく、馬主や調教師にも信頼されるような結果を残していきたい。9月開催では笠松勢の52勝に対して、名古屋勢は26勝だった。

笠松では重賞3勝と相性が良い名古屋の加藤聡一騎手。厩舎の信頼も厚く、再開後の騎乗機会が多い

 ■笠松で重賞3勝の加藤聡一騎手、騎乗依頼多く「恵まれています」

 加藤聡一騎手(25)は、NAR優秀新人騎手賞と日本プロスポーツ大賞新人賞にも輝いた名古屋の若手エース。地元で重賞Vがないのに、笠松では3勝を挙げている異色の存在。4年前のくろゆり賞でヴェリイブライトに騎乗し、カツゲキキトキトを倒す金星で重賞初V。昨年も岐阜金賞、東海ゴールドカップを制覇。笠松再開後には自らのツイッターで「名古屋開催からの笠松開催というサイクルが戻りましたね。たくさんの騎乗依頼を頂いて感謝です」と喜んでいた。

 9月23日には6番人気のアップメイ(牝6歳)で逃げ切りV。管理する大橋敬永調教師に「地方通算300勝達成」をプレセントできた。人気薄の馬での鮮やかな勝利で、加藤聡一騎手は「あの馬はずっとコンビを組んでるんで、ハナに行けばという感じで、そこが味方したかなあ」と作戦通りの勝利。
  
 自身も笠松競馬場との相性が良いことについては、「どうですかねえ。重賞とかでポロポロ目立たせてもらっているんで、ポツポツという感じですけど。笠松自体は乗りやすくて好きですよ。名古屋だけでなく、笠松にも乗りに来ることができて、その方がいいですよね。(騎乗数も多くて)恵まれているからいいね」と充実感にあふれた様子。「バンバン勝ちたいね」と聞くと「そううまくいかないけど、勝ちたいです」と意欲。笠松での厩舎関係者への信頼は厚く、今後も注目していきたい騎手。無理だと分かっていても「乗り役不足の笠松に移籍してほしい」と思いたくなる存在でもある。

 大橋調教師はレジェンドハンターでサマーカップ、ブライアンビクターで湾岸ニュースターカップを制覇。「十分に管理できる頭数に絞ってきたので、300勝には時間ががかりましたが、馬主さんら多くの方に支えられてやってきました。今後の目標は若馬での重賞や認定競争など大きなレースを勝ちたい」と関係者への感謝と、馬づくりへの意欲を示した。

 ■深沢騎手ら笠松勢も名古屋参戦を再開

 笠松勢の名古屋参戦は9月28日から再開となった。減量騎手でもある深沢杏花騎手は「4キロ減」が魅力のようで騎乗依頼が多く、4日間で名古屋馬計9頭に乗ることができた。藤原幹生騎手や大原騎手も参戦しており、相互交流を活発化させ、笠松の騎手への騎乗依頼が増えるといい。「祝・1000勝」の藤原騎手に続いて、名古屋の宮下瞳騎手も1000勝の大台にあと「16勝」(9月末現在)と迫っている。このうち笠松では年間100レース以上騎乗した年もあり、通算65勝を飾っており、交流が盛んだった。

 東海公営の笠松、名古屋競馬の両者は昭和の時代から、東海ダービー(名古屋)や東海ゴールドカップ(笠松)などで、ジョッキーの腕も競走馬のレベルも「こっちが上」と張り合ってきた。今回の名古屋勢の笠松参戦は「ジョッキー不足をサポートするため」が第一ではあるが、やるべきことは「ゲートを出て、ゴールを目指すこと」で変わりがない。不祥事による騎手不足が発端だが、当分続く名古屋勢の大挙参戦。お互いに騎乗技術を競い合って、東海地区の人馬のレベルアップにつなげたい。

笠松の騎手に加え、名古屋の騎手も多く参戦。マイクロバスに乗ってパドック前に登場し、ファンにあいさつする

 ■騎手はマイクロバスに乗ってパドックに登場

 国内の競馬場で唯一、内馬場にあるパドックの前。マイクロバスで到着した騎手たちが一列に並んであいさつ。スタンド前で観戦すれば、コースとの距離がすごく近くて、ダートコースを突き抜ける迫力ある人馬の疾走感を体感できる。

 コロナ禍による無観客から、上限116人での有観客開催になった1年前。ファンの行列を期待して、午前8時に正門前を訪れたが、自分が一番乗りになってしまった。JRAの日本ダービーなどでは、大勢の徹夜組のファンや開門ダッシュなどの光景がおなじみだが、地方競馬ではどうか。徹夜で並んだことは競馬場ではないが、学生時代に神宮球場前でならある。東京六大学野球の応援だったが、前日の夕方からテニス同好会の一員として並んだ。午後10時には「決起集会」もあり、応援指導部が「プレーボールまで、あと15時間。頑張ろう」と激励、盛り上がった。

 地面にバスタオル1枚を敷いたが、ほとんど眠れずに観戦。試合には負けたが、銀座まで歩いて大騒ぎ。生ビールを大ジョッキで一気飲みさせられる部員も多かった。日比谷公園の噴水近くでごろりと寝転んでいたら、酔っぱらって噴水に飛び込む者も多く、翌朝には腕時計がかなり落ちていたとか...。古き良き昭和の時代の懐かしい思い出だが、「レトロな特別感」なら笠松競馬場も半端ない。笠松デビューの若者たちには、覚悟して老朽化した場内での「肝試し」にチャレンジしていただきたい。

 ■入場無料、大入り期待か上限5000人(滞在人数)

 通常の入場者は800人ほどだったが、「有観客」再開後は幅広い世代での大入りも期待され、入場制限は5000人(滞在人数)に設定。これなら遠来のファンも余裕で入れそうで、ライブ観戦を満喫できる。ファンサービスとして10月は入場無料。5~8日は先着200人に売店グルメチケット(200円分)などを配布。特別観覧席利用者には専門紙エースをプレゼント(100人、10~12月)。場内飲食店も再開され、「笠松グルメのあの味」を堪能できる。オグリキャップのグッズなどが買える愛馬会の売店はまだお休みだが、再開を楽しみにしているファンは多い。

 新たな競馬ブームのサポーターでもあるウマ娘ファン。「入場可能になったら、笠松競馬場に行きたい」と願っていた声に応えて、場内施設では昭和レトロ感を残しつつ、おしゃれ感も漂うクリーン化を進めていくべきだ。「ウマ娘の記念撮影ボードを置くなどコラボ企画を」と期待する声もある。信頼回復第一の笠松競馬としては、ファンファーストで新たな魅力づくりに取り組み、イメージアップに努めていきたい。