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教えてホームドクター

エストロゲン

骨の成長止める作用 減少で骨粗しょう症の原因に



産婦人科医 今井篤志氏

 女性ホルモン(特にエストロゲン)は生殖機能以外にも中枢神経・脳機能、心血管系、コレステロール・中性脂肪の調節、乳房、皮膚などに作用し、一生を通して女性の健康に関与します。更年期症状はこのエストロゲンが欠乏して生じる体の不調です(2012年10月8日付9面掲載)。今回は、成長期のエストロゲンに的を絞って考えてみましょう。

 男女を問わず生まれて1~2カ月程度は、体内のエストロゲンの量が女性の思春期と同様に高値を示します。母親の影響を受けた胎児期の名残です。その後、徐々に低下して生後3カ月以降、思春期までは、測定感度以下の低値を示します。そして女子は思春期になるとエストロゲン量が上昇し始め、体が急激に大人へと変わっていきます。この体の変化を第二次性徴と呼びます。男子も思春期に上昇しますが、卵巣がないため女子より低値です。

 成長期の腕や脚などの長い骨の両端は軟骨でできていて(骨端線(こったんせん))、成長の原動力です=図=。エストロゲンにはこの骨端線を閉鎖(骨化)させる作用があります。思春期になって卵巣から放出されるエストロゲンが増加してくると、骨端線の骨化が進み、大人の骨になります。つまり、身長の伸びが鈍ります。7歳未満で乳房発達や月経が始まる早発思春期では、過剰なエストロゲンによって成長の停止が生じます。いったん骨化した軟骨は元には戻りませんので、初経後はほとんど身長が伸びなくなります。

 逆にエストロゲンが少なく思春期の開始が遅れると、骨端線は活動を続け高身長になります。例えば、女子のトップアスリートは思春期前からの激しい運動と食事制限によって無月経(低エストロゲン状態)となることが多く、世界的な女子選手に高身長が多く見られるのはこのためです。

 思春期年代には、スリムでありたいという「やせ願望」を抱く若年女性が多くいます。極端に体重が減ると月経が止まってしまいます。体重が減るということは体の栄養不足(エネルギー不足)を意味します。すると体は生命の維持(心臓を動かす、呼吸をする、体温を保つなど)に優先してエネルギーを使います。生命維持から最もかけ離れた生殖機能は停止させて、エネルギーの浪費を防ぎます。つまり無月経となります。

 卵巣からエストロゲンが放出されなくなると、骨がもろくなります。閉経後の女性の健康障害の一つに、骨粗しょう症があることはよく知られています。若年者でも無月経が長く続くと骨粗しょう症になります。エストロゲンがカルシウムの骨への取り込みを促しますので、エストロゲンがないと、骨に取り込まれるカルシウムが極端に減少します。カルシウムを多く摂取しても、骨の密度はなかなか上がりません。

 女性が一生を通して健やかに過ごすためには、適度なエストロゲンあるいはエストロゲン様物質の量が必要です。しかし、日本人はホルモン剤の補充を嫌う傾向があります。このような方には、ホルモン剤ではない優れた治療薬もいくつかあります。かかりつけ医に気軽にご相談ください。

(松波総合病院腫瘍内分泌センター長・羽島郡笠松町田代)




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