小森博昭理事長(右)から指導を受けながら陸上の練習に励む竹鼻中学校の生徒=8月、羽島市堀津町、長良川多目的運動場

 「しっかり足を上げて体を前に」。8月のある土曜日。岐阜県羽島市堀津町の長良川多目的運動場で、同市立竹鼻中学校の生徒が陸上の練習に汗を流していた。その場に教員の姿はなく、活動を仕切っていたのは総合型地域スポーツクラブ(SC)「はしまなごみスポーツクラブ」のメンバーだ。国体出場経験もある小森博昭理事長(78)らが、走り方やトレーニングを身ぶり手ぶりを交えて丁寧に教えていた。

 国が方針を打ち出す部活の地域移行では、運営主体となる「受け皿」の整備が大きな課題の一つになっている。総合型地域SCは、受け皿の代表例として期待され、竹鼻中では昨年度から休日の運動部活動を先行して、なごみクラブに完全移行した。

 羽島市教育委員会によると、元々は保護者の組織が子どもの活動を当番で見守る日を設けていたが、負担を減らすためクラブ化できないかという声が上がり、移行を実現。今や先行事例として注目を集め、視察に訪れる自治体も多い。

 平日の部活動、休日のクラブに参加するかどうかは生徒が自由に選択できる。陸上部の生徒は大半がクラブにも参加しているといい、2年の男子生徒は「違和感なく練習に取り組めている。専門的な指導も受けられありがたい」と笑顔を見せる。

 海津市も市内の二つの総合型地域SCなどで「市中学校地域クラブ」を発足。行政や市体育協会などが連携し、8月から休日移行をスタートした。多治見市は20年ほど前から休日の部活動を保護者中心の地域のクラブが受け持つなど県内ではすでに移行が進む自治体や中学校もあるが、地域によっては課題も山積する。

 例えば運営を任せられる総合型地域SCのような地域団体がなかったり、活動する種目が部活動と必ずしも重ならなかったりするケースが想定される。学校数が多い自治体では、地域団体の数が足りないといった状況もある。

 県教育委員会が7月、部活を実施している公立中学校174校(義務教育学校含む)を対象に行った移行先の運営主体の調査では、現段階で総合型地域SCを挙げた学校は18%。最も多かったのは保護者らで組織する「保護者クラブ」が約4割で、「未定」の学校も16%あった。岐阜市内の中学校の男性校長は「引き受けてくれるクラブや、そもそも指導者のいない地域は選択肢が少なく、最終的に保護者にお願いするしかないところも多いのでは」と推察する。

 地域移行に向けた協議を行う「県中学校部活動のあり方検討会」で座長を務める岐阜大教育学部の杉森弘幸教授(60)は「地域や保護者に任せきりにならないよう行政やスポーツ協会、各競技団体が連携を取る必要がある。移行に関わる人たちの意見を聞きながら、地域の実情に応じた対応が求められる」と指摘する。