県教育委員会などが地域で部活動の指導ができる人材を育成するために始めた研修会=6月、大垣市新田町、市民会館

 「財源がなければ指導者の確保ができない」。岐阜県教育委員会が8月に岐阜市内で開いた、部活動の地域移行に向けた課題解決のための検討会議。指導者の話題が出ると、出席した中学校や自治体、スポーツ団体の関係者から厳しい意見が相次いだ。

 教員に代わる外部指導者の確保は喫緊の課題だ。県教委によると、公立中学校の常設の部活動数は約1700。希望する教員は、兼職兼業の許可を得てこれまで通り休日の指導ができ、7月に県教委が行ったアンケートでは、希望する教員が約470人だったという。計算上は、千人以上の外部指導者を配置する必要がある。

 すでに地域で活動する外部指導者も大勢いるが、移行後に指導を継続するかは不透明だ。スキルのある人材は地域や競技によって差があり、自治体は外部指導者への謝礼といった財源の問題にも直面する。検討会議の出席者の一人は「今でも謝礼の額は自治体によってまちまち。国や県は財源の見通しを早く示してほしい」と訴える。

 「数」だけでなく、部活本来の教育的意義を理解した上で、教えることができる人材の育成も重要だ。岐阜市の東長良中学校で男子バスケットボール部の外部指導者を務める西村奉行さん(57)は指導歴15年を超える。「今後は外部指導者の責任がより明確になる。多感な時期の中学生への接し方など指導者のための指導も必要」と指摘する。

 休日の指導に携わってきたが、普段の学校生活の様子や生徒間の人間関係を把握できず、指導を始めたばかりの頃はどうしてもうわべの技術的な部分に目が行きがちだったという。「今は一人一人平等に見て、できる限りみんなに声をかけるように心がけている」と語る。

 移行後は、選手や保護者とのトラブルや、選手間で問題が発生した場合の対応も外部指導者に求められる。関市の中学校で外部コーチを務める男性は「これまではトラブルがあっても中学の教員が間に入ってくれていた。指導者の責任が増えると、これまで通り続けられるかどうか」と不安を吐露する。

 地域移行を見据え、県教委と県スポーツ協会は本年度から、希望者向けに「指導者育成研修会」を始めた。体罰やセクハラに当たる不祥事の例や、事故の防止策や対応などを伝え、技術指導以外の教育的意義を理解してもらうように働きかけている。

 同協会の増田和伯専務理事(64)は「競技の経験値だけでやってきた人の認識を変えていく必要はある。子どもたちの安全も確保しながら活動し、保護者も安心して子どもを預けられる環境を整えていくことが大事」と話していた。

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 公立中学校の部活動が、大きく変わろうとしている。国は、少子化や教員の働き方改革を背景に、2023年度から段階的に休日の指導を地域団体や民間事業者に委ねる「地域移行」を進める方針だ。「部活動改革」には運営主体となる受け皿や教員に代わる指導者の確保といった課題もある。教育現場を取材し、部活動の未来を考える。