豪州の現地生徒と交流する岐阜聖徳学園大付属小学校3年生の児童たち=豪州・ゴールドコースト

 豪州岐阜県人会は、代表のヒンツ容子(ブリスベン在住、下呂市出身)が中心となって2022年に発足した新しい組織です。現在は、クイーンズランド州を中心に約40人が在籍していますが、他国の県人会同様、県出身であることだけにこだわらず、岐阜が好きで、岐阜に縁のある人なら誰でも参加可能です。

 活動初年度の本年は、5月に第1回集会をゴールドコーストで開催したほか、ジャパンフレンズデー(7月)や祭りブリスベン(9月)など現地の日系イベントで特設ブースを出し、県のPR活動を行いました。今後は、県の良さをアピールするだけではなく、双方の関係者と連携し、もう少し具体的に人の行き来につながる活動をしていきたいと考えています。

 私たちの活動拠点であるクイーンズランド州は、ケアンズ、ブリスベン、ゴールドコーストなど、世界的にも観光や留学生の受け入れ先として有名な地域です。年間を通じて温暖で自然豊かなこの地域は、日本から直行便で約9時間、時差はわずか1時間。新型コロナウイルスの発生前は、多くの観光客や留学生でにぎわっていました。しかし、世界でも最も厳しいと言われた豪州の水際対策により、実に2年近くも国境が閉ざされていた影響で、観光地は寂れ、教育機関も次々と閉鎖や縮小に追い込まれました。一方では、教育・仕事のオンライン化が加速したため、シドニーやメルボルンなどの大都市から、より良い住環境を求めて多くの市民がクイーンズランド州に移住し、州の不動産価格を過去最高にまで押し上げるという特殊なバブルも引き起こしました。

 さて、そんな中、この夏休みに3年ぶりに実施されたゴールドコースト現地校短期留学プログラム。県からも10人以上の小・中学生が参加しました。マスク着用のルールは早々に撤廃されているオーストラリア。今回の留学生の多くは、まずマスクなし生活に戸惑いながらのスタートとなりました。マスクの例は特殊ですが、このように短期留学では、英語力の向上よりも、日本と世界の「違いを知ること」や「異文化の体験」こそが大きな収穫です。実際、現地の生徒に地元について紹介したり、日本の文化や考えについて尋ねられる場面も多く、留学を通じて世界を知ることは、同時に地元や日本についても改めて考え、学び知る大きなきっかけとなります。

 参加者のうち、岐阜聖徳学園大付属小学校の児童たちは、通学先のクリスチャンスクールで初めて礼拝に参加したほか、日本とは違う主要科目の学び方、先生や友達との接し方などを経験しました。自由で開放的で宿題もない豪州の小学校生活は、日本の小学生には楽園に映ったかもしれません。しかし、どちらが良い悪いということではなく、考えや価値観が違う世界があるということを実体験として習得しておくことが、子どもたちの未来の選択肢を広げ、また他者の多様性を受け入れ認めることへとつながると信じています。

 コロナの影響も随分と少なくなってきました。次の短期留学シーズンは春休みです。また豪州でたくさんの子どもたちにお会いできることを願っています。

 

◆豪州岐阜県人会副会長 犬飼知子さん略歴

 いぬかい・ともこ 岐阜市出身。元岐阜新聞・岐阜放送記者。在職中、岐阜日豪協会に関連し「ゴールドコーストで学ぶ岐阜県人」と題した豪州の親子留学取材を経験。2016年よりゴールドコースト在住。現在は幼稚園から社会人までを対象にした留学エージェントを運営。

▼メッセージ

 移住直後から、豪州人の日本好きを肌で感じています。スポーツやアウトドアが大好きな豪州人に、県は魅力たっぷりのエリア。スタートしたばかりの豪州県人会ですが、どんどん岐阜の魅力を伝えたいと思います。