新聞づくりの相談をする足立成君(左手前)に、文字の配置や見出しの役割について教える寺本健人さん(左奥)と井上智嗣教諭=羽島市桑原町八神、桑原学園
階段の踊り場にある新聞掲示コーナー。児童生徒が立ち止まり、関心のある記事に「いいねシール」を貼る=同

 NIE実践校として児童生徒が新聞と主体的に関わってきた羽島市立桑原学園。初年度の実践を踏まえ、2年目の2019年度は、義務教育学校ならではの日常的な小中学生の交流から新聞愛好会が生まれ、子どもたちの自主性や社会性が育まれた。教員は新聞を使った授業で、子どもたちが社会を身近に引き寄せて考えられる力を伸ばすなどの成果を上げた。

◆記事に「いいね」、昼に放送

 19年度は「学力向上につながる新聞活用例の蓄積」「新聞を読む良さを実感できる活動を推進するリーダーの育成」を柱に取り組んだ。1年目の課題から、研究対象を基礎的な知識を身に付けた5年生以上に設定した。

 新学習指導要領で、新聞活用がさらに推奨されたのを受け、NIE担当の井上智嗣(さとし)教諭(32)=社会科=は「新聞に触れる環境から一歩踏み込み、新聞で社会と結びつく活用方法を探った」。実践の中心となった教員が異動しても他の教員が指導できるよう、活用する教科や授業を精選した上、新聞記事を指導内容に合わせて整理した。

 日本経済の近代化を学ぶ9年生の公民の授業冒頭で、24年度に紙幣の肖像画が刷新されるとの昨年4月の記事を紹介した。新たな"紙幣の顔"3人について取り上げ、1万円札の顔になった渋沢栄一の功績と日本銀行の設立を関連付けて話すと、生徒は興味津々の様子。井上教諭は「ニュースの価値によっては、学年の指導内容に縛られずに活用する。身近な話題を振ると、学びがぐっと自分ごとになる。社会とつながる実感が持てるのは新聞の良さ」と話した。

 新聞の面白さを掘り下げたり、記事を効果的に組み入れたりした授業が実を結び、昨年6月には、新聞好きの上級生が中心となって新聞愛好会を創設。3~9年生の5人が所属している。階段の踊り場に新聞を掲示し、「いいねシール」が多かった記事を昼の放送で伝えたり、小中学生が一緒になって壁新聞を仕上げてコンクールに出品したりするなど精力的に取り組んでいる。

 昨年12月中旬、同会リーダーの9年生寺本健人(けんと)さん(15)の元に、合唱祭について新聞にしたいと3年生足立成(なる)君(9)が相談に来た。学級委員を通じてアンケートを取るという足立君に対し、寺本さんは「来年歌う側になる5、6年生には抱負を、合唱発表をした7、8年生には練習の取り組みを聞き取る項目にしたら?」「新聞には写真がほしいでしょ。校長先生が撮影してたから聞いてみる?」と助言。新聞づくりの経験がない足立君に、実際の新聞を広げながら文字の配置や見出しの役割について分かりやすく説明した。

 寺本さんは「6学年離れているので、一緒につくりながら基本的なことを教えている。多くの仲間に新聞の面白さを伝えたいので、受験勉強と両立させながら愛好会の後継者を育てるのが目標」と意気込んだ。