授業で新聞から時事ニュースを探す生徒=加茂郡川辺町中川辺、川辺中学校
「いっしょに読もう!新聞コンクール」に応募した作品

川辺町立川辺中教諭 細江隆一

 毎朝、玄関に立ち、登校する生徒を迎えている教師からこんな話を聞いた。近寄って来た近所の方から「川辺中の生徒の作文が、ようけ新聞に載っとるな。すごいな」と話し掛けられた。その教師は「生徒に書く力を身に付けさせたいと、国語の先生たちが頑張っているんですわ」と応えたという。NIEに携わる者としてはうれしい話である。
 こうした話は、初めてではない。赴任した昨年から何度か耳にした。地域の新聞の購読率が高いからかもしれない。学校の活動に協力的な方が多いこともあるだろう。特に、年配の方が新聞で読んでは感想を言ってもらえるので、ありがたい。NIEに安心して取り組めるのもそのおかげと、感謝している。
 家族や友だちと記事を読み、感想・意見などを書いて記事とともに応募する「いっしょに読もう!新聞コンクール」(日本新聞協会主催)に今年も参加し、夏休みの全校課題とした。2、3年生は慣れたものだったが、1年生は初めて。休みに入る前から指導を行い、時間を長めに確保して取り組ませた。
 私は提出作品の全てに目を通した。さまざまな記事の中には、自分が知らないニュースがあり、感心した。3年生が取り上げた記事の割合は、「新型コロナウイルス関連」46%、「平和・戦争関連」28%、「安倍首相の辞任関連」18%、「災害関連」8%となった。
 「コロナ関連の記事」が多数を占めるのは予想していた。意外だったのは「平和・戦争関連の記事」の割合が高かったこと。夏休み中に、広島、長崎に原子爆弾が投下された日や終戦記念日があるが、ここまで高い割合になったのは初めて。思い出したのは7月上旬にあった3年生の総合的な学習での「平和講話」。わが校の社会科教師が「原子爆弾の被害」をテーマに話した。講話が記事の選択につながったのではないかと感じ、教師側の働き掛けの大切さを教えられた。
 「安倍首相の辞任」は休み明けの最大ニュースだった。それでも結構な割合で辞任関連の記事を選んでいたのは驚きだった。コロナ対策を巡って安倍首相を見る機会が多かったことの影響ではないか。学校休校、マスク配布、外出自粛要請など、さまざまな場面で首相が登場し、時には記者会見もあった。自分たちの休校に関わった首相の辞任だからこそ、印象的だったのだろう。
 「一緒に読もう!新聞コンクール」を全校生徒250人で取り組めたのは、国語科教師たちで連携をとって進めたことが大きい。どう指導するか、新聞を購読していない生徒にどう対処するか、文章を書くのが苦手な生徒をどうフォローするかなど、一人では無理でも教師同士で話し合い、アイデアを出し合って、方向を定めると実現できる。コンクールの取り組みを通して、その点を教えられた。
 コロナ禍で、信頼できるメディアの一つとして、新聞が注目されていると聞く。コロナの感染拡大は依然として懸念されるし、学校の授業も完全には元に戻っていない。そんな状況の中、改めて新聞の良さや重要さを知る人たちが増えてくれることを期待したい。