手のひらや足の裏の、掌蹠膿疱症の膿疱

皮膚科医 清島真理子氏

 「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」は手のひらや足の裏に、膿(うみ)を持った小さな水膨れ(膿疱)がたくさんできる病気です。よく水虫と間違えられますが、膿の中に真菌や細菌は検出されないので、触れてもうつることはありません。この病気は膿疱が増えて悪化する時期と症状が軽くなる時期を繰り返します。患者さんの数は全国で13万人余りなので、人口千人に1人くらいです。30代から50代に多く、女性の方がやや多いといわれています。

 手のひら、足の裏にまず小さな水膨れができ、その後で黄色の膿疱となります。しばらくたつと膿疱が乾いて茶色のかさぶたになって?がれていきます。膿疱の周りは赤くなり、ざらざらしたり、ひび割れができたりします。こういう症状が同時に交じり合ってみられます。

 膿疱ができる頃には「かゆさ」や「痛がゆさ」があり、ひび割れができると歩くときに痛みがあります。手足の爪も厚くなったり変形したりします。手のひら、足の裏以外に、例えば膝や肘、すね、頭などが赤くなったりかさかさしたりすることもあります。

 この病気の20~30%の患者さんに骨関節炎があります。特に多いのは首の付け根の辺りで、鎖骨と胸骨周囲が腫れたり、痛くなったりします。背骨や手首、腰に痛みがある場合もあります。

 なぜ膿疱ができるのか? この病気の原因は完全には解明されていませんが、インターロイキン17とか23というサイトカインが関わって炎症を起こすといわれています。そのために皮膚だけでなく、関節にも症状が起こるのです。

 悪化原因はいろいろ知られています。まず、喫煙です。禁煙するだけで症状がなくなることもあります。病巣感染といって、歯周炎、へんとう炎、副鼻腔炎、中耳炎などが元々あって、悪化したときに掌蹠膿疱症の症状も悪化することがよくあります。

 まずは悪化原因を調べることから始まり、それが分かれば除去したり治療したりします。並行して膿疱の治療を開始します。まず皮膚を清潔に保ち塗り薬をしっかり塗ります。かさかさした部分やかさぶたがあると指で削ってしまいたくなりますが、無理にむしらずに浮いている部分だけ切るとよいでしょう。紫外線治療も有効な治療です。塗り薬や紫外線治療で治まらない時や関節痛は飲み薬で治療します。これらの治療で十分な効果が得られない重症の場合にはインターロイキン23を抑える注射製剤が有効です。

 皮膚症状と関節症状は同時に起こることもありますし、どちらかが先に起こることもあります。もし手のひら、足の裏に膿疱がたくさんあって繰り返すようなら掌蹠膿疱症かもしれません。皮膚科専門医に相談してください。

(岐阜大学名誉教授、朝日大学病院皮膚科教授)