全国シェア8割を誇る岐阜県大垣市の地場産品「木升」。天然材の風合いを生かして作られ、一つ一つ微妙な違いが楽しめる。往時の計量器としての役目はほぼ失われたが、酒器や節分の豆入れ、贈り物などとして私たちの暮らしを彩る。数少ない升メーカーの中で、技術力と斬新な発想で新たな市場を開くのが大橋量器(大垣市西外側町)だ。市中心部の水門川沿いにたたずむ本社工場を訪れると、ふわりとヒノキの香りが鼻腔(びこう)をくすぐる。「木升は素材そのものだから」。大橋博行社長(58)が案内してくれた。
氏名や役職・部署名で検索!「岐阜の経済・人事情報 ポータル」単純な構造に見えて、木升作りの工程は案外細かい。工程ごとに職人がつき、手際よく形を整えていく。使う材料は全て国産のヒノキ。清潔感のある淡い色合いが特徴で、良質な材料が手に入りやすいのは中部地方ならではだろう。
入荷した木材はまず乾燥させ、余分な水分や油分を飛ばす。品質を保つのに重要な一手間だ。乾燥させた木材の上下左右を4軸モルダーで同時に削り、加工するために幅や形を整える。
きれいにそろえた木材を職人が手際よく重ね、升の寸法ごとに長さを切りそろえる。それから「升の心臓部」(大橋社長)とも言うべき「組み目(ほぞ)」を作る。使うのは、太い丸のこが並ぶロッキングカッター。板と板がぴったり組み合うよう、刃の微調整や手入れは欠かせない。職人の腕の見せ所でもある。
酒器としても使うため、体に安全なのりをほぞに塗り、組み工程へ。ここで登場するのが、四方からエアーで圧力をかけて4枚の板を組み合わせる機械。升作りのためだけに造られたニッチな専用機が、長い4本腕を使ってテンポ良く側面だけの木枠を組み上げていく。
升の旅はようやく半ば。底抜けの木升の上下を機械で平らに削る「ねじ抜き」は、「注いだお酒が漏れないよう隙間をなくすため」(大橋社長)。底板をのり付けし、万力のような機械で押しつける。そのまま135度に温めた機械の中を20分くぐらせて圧着完了。ようやく形が整った。
いよいよ仕上げだ。職人が大きな円盤形のかんなで表面を滑らかに整え、形や大きさを確認。最後に手触りが良くなるよう、角をごくわずか、糸のように細く面取りして完成だ。注文に応じて、焼き印やレーザー加工、プリントで文字やイラストを入れる。
木升作りのこだわりを問うと「一合なら一合の、量りとしての寸法をしっかり保つこと」と大橋社長。計量器として使われた頃から守る誇りでもある。さらにヒノキならではの“削り味”も大切にしているといい、「使う人が木の香りやぬくもりに、癒やしを感じてくれたら」とほほ笑む。
【工場概要】1950年創業。大小の木升に加え、五角形などユニークな形の升、おひつ、加湿器、アクセサリーなど新たな用途を提案し、国内外で話題を集める。本社横に木升専門店「枡(ます)工房ますや」を構え、2018年には大垣市の駅通りにカフェもオープンした。従業員約25人。同市西外側町。















