怒涛(どとう)の1月前半だった。年末年始に体調を崩し、ネットスーパーでゼリーやレトルト食品、ビタミン入りゼリー飲料にスポーツドリンクなど食べやすくて体調を整える食材を揃(そろ)え、食べて寝てで自分で自分を看病している中、5日には夕方から夜まで大学の授業。翌日6日は1月22日にEテレで放送された「つなげ言葉のバトン」という連歌の番組の収録。といっても病み上がりで重いものは持って上京できないし、夜遅く帰り朝早く出ていくというのがどうもできそうになく、5日の授業の後すぐに上京。荷物を詰めたキャリーは運送会社に任せ、ホテルまで運んでもらった。

 収録の後、東京での用をすませ、帰って来たら今度は14日のNHKラジオ「文芸選評」のための選歌が始まる。たくさん送られて来た歌たちを見ながらああでもない、こうでもないと頭をひねる中、収録と出張とドライアイで疲労は体から溢(あふ)れっぱなし、肩も重けりゃ頭も痛い。

(撮影・三品鐘)

 そうだ、延ばせる締め切りは延ばしてもらおう。そして早く仕事を片付けなきゃ、でも体が痛いよう痛いようと叫んでいるので、肩を回してストレッチ、そしてバスソルトを入れたお風呂で長めの入浴。忙しい時ほどセルフケアを忘れずに…。ということでラジオ放送を終えた14日の翌日。今日は15日! 大体全ての急ぎの仕事が終わり、ほっと一息ついているところだ。

 さて、1月分からの3カ月、エッセーのテーマをDo It Yourself、いわゆるDIYにしようと三品鐘と決めた。自分でやる。そんな当たり前のことが、早速こんな切羽詰まってやってくるとはとゾッとする。しかし社会人の基本はやはりDIYとも言えるだろう。それも何から何まですべて自分でやる、という意味ではなく、サービスも使いながら、仕事や家事にご自愛の心や選択の自由を作るDIYも大事だ。今回も配送業者やストレッチ、お風呂での休息を忘れて機械のように仕事をこなしていたら、今頃ぶっ倒れていただろう。

 お仕事も家事も、自愛の心も休息の取り方も、私たちのDIY。義務や規則の中で、どうやって自分を保つかも、自分で作り上げること。さて、そんなところで私はそろそろ、休息の紅茶を一杯淹(い)れようと思う。


 岐阜市出身の歌人野口あや子さんによる、エッセー「身にあまるものたちへ」の連載。短歌の領域にとどまらず、音楽と融合した朗読ライブ、身体表現を試みた写真歌集の出版など多角的な活動に取り組む野口さんが、独自の感性で身辺をとらえて言葉を紡ぐ。写真家三品鐘さんの写真で、その作品世界を広げる。

 のぐち・あやこ 1987年、岐阜市生まれ。「幻桃」「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」で第49回短歌研究新人賞。08年、岐阜市芸術文化奨励賞。10年、第1歌集「くびすじの欠片」で第54回現代歌人協会賞。作歌のほか、音楽などの他ジャンルと朗読活動もする。名古屋市在住。

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