飛騨の伝説の豪族「両面宿儺(すくな)」。人気漫画「呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)」に同名キャラクターが登場し、にわかに脚光を浴びる。ただし漫画では「呪いの王」だ。
かんたん検索! 岐阜県・東海のイベント お出かけ情報総合サイト「ぎふっと!」岐阜県高山市丹生川町下保、県道から山道を車で上がって約10分の千光寺。両面宿儺が1600年前に開山したとされ、4体の両面宿儺像が鎮座する。そのうちの一つ、円空作の木像「両面宿儺坐(ざ)像」は美術品としても名高い。だが今年に入ってから「円空」というより「呪術廻戦」目当てで、北海道から沖縄まで、全国から巡礼客が訪れた。
1598年再建の宿儺堂に収められた石像は高さ2メートル、表と裏の二つの顔が見下ろす。大下大圓住職(67)は、表は飛騨の守り神、裏は仏の姿だと解説。「伝承は、漫画の設定とかなり違う。飛騨では開拓者で英雄と伝わり、中央では逆賊扱い。中央をやっつけるという点ではダークヒーロー。いろいろな捉え方ができ、ものの見方など多くのことを両面宿儺は教えてくれる」と語る。寺は雪の季節を迎えて宿儺堂の特別公開を終了、来年の春の到来を待つ。
市民の地域の足、濃飛バスにも"聖地効果"。都心のファンを取り込もうと、高山市などの提案で、両面宿儺坐像のラッピングバスが2台登場。東京、大阪、名古屋発着便を中心に組まれ、まさに走る広告塔だ。
両面宿儺ゆかりの地と"恋人の聖地"飛騨大鍾乳洞をセットにした聖地巡礼切符は6月に発売。緊急事態宣言中の1カ月半は販売中止となったにもかかわらず、11月末までに500枚超売れた。企画統括部の楢木孝之課長は「若者も多く、予想以上の売れ行き」と驚く。「1600年を経た今、両面宿儺のおかげで商売ができている。コロナ禍で厳しいが、救世主であり続けてほしい」と願う。
高山市から直線距離で50キロ以上離れた関市下之保の日龍峯寺にも両面宿儺像がある。毎年11月に一日だけの特別開帳では、聖地化した影響もあって参拝客が途切れなかった。聞こえてきたのは「指がある...」とのつぶやき。物語の鍵を握る「指」の彫刻が地元のファンから奉納され、像の前に置かれていた。愛知県清須市から訪れた男性(12)は「像は漫画と違うけど、指は似ていた」と神妙な表情。室賀経秀住職(43)は「若い人にさらに浸透してほしい」と期待する。
これからも新たな物語が生まれるたびに"聖地"は生まれ、ファンと物語を結ぶ役割を果たしていく。
【作品紹介】人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を呪術を使って祓(はら)う呪術師の闘いを描いた、ダークファンタジー・バトル漫画。両面宿儺は「呪いの王」と称される特級呪物として第1話から登場する。芥見下々さんが「週刊少年ジャンプ」で連載、アニメ化もされている。










