統一地方選の前半戦がいよいよ佳境に入り、町中を歩けばどこからともなく、立候補者の名前と支持を呼びかける声が聞こえてくる。振り向くと視線の先を通り過ぎていくのは「選挙カー」。立候補者が差別化を図るための一手段としても注目だ。果たして選挙カーならではの秘密やトレンドはあるのだろうか。そんな疑問を抱きながら、選挙カーのレンタルを取り扱う会社を訪ねた。

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車は目立たず、小回り重視 窓も全開に

 取材で訪れたのは、選挙カーのレンタルを主力としている「KKS」(名古屋市西区)。同社は車体だけでなく、車体に取り付ける看板や音響設備の選定、事前申請など手続きのアドバイスまでを手がけており、東海3県を中心に各地の立候補者を支えている。

倉庫内に並んでいる選挙カー。まもなく始まる統一地方  選の後半戦に向け〝出陣〟を待っている=名古屋市西区中小田井、KKS

 社長の加藤達也さん(54)の案内で倉庫を見せてもらうと、統一地方選の後半戦を前に〝出陣〟を待つ選挙カーが所狭しと並んでいた。まず気になったのは、どれも車体のカラーが白。「白い車体だと上に載せる看板が目立つんです」と加藤さん。確かに、主役は立候補者。立候補者や名前などが書かれた看板よりも車体が目立ってはいけない。実際、車体の色のオーダーは白がほとんどだという。

 次に気になったのが車種。並んでいるのは軽ワンボックスのライトバンといった、貨物輸送や商用で使われる小ぶりな車両がほとんど。こちらも理由がある。加藤さんは「市町村議選だと住宅地など狭い道を通ることが多い。小型車だと小回りが利くので使いやすい」と解説する。きめ細かく地域を回って支持を呼びかけるには、小さな車体がうってつけ。国政選挙レベルになると大型のワゴン車が使われることが多いが、地方選ではこういった小型の車が人気という。

 また、小型のライトバンは一般的な乗用車と違い、荷物を車内に載せられるという利点もある。立候補者が街頭に立つ時に使うのぼりといった器具を積み込んだまま、街宣活動として道路を走れるという、実利的な面も人気を呼ぶポイントだ。

後部座席の窓を全開できるように改修された車。従来の車両より、効果的にアピールできる

 一部には改修が施されている車体もある。人気の軽ワンボックスは、後部座席の窓ガラスがすべて開かない仕組みになっているのが一般的。そのため、立候補者や選挙スタッフが車内から手を振ろうとしても、顔や体が窓ガラスで見えないというデメリットがあった。そこで同社では、車体に改造を施し、窓ガラスを全開できるようにする車両を用意している。確かにこれなら手を振りやすいし、アピールにも効果的。選挙カーならではの改造といえる。

音声は「録音」指向 背景は新型コロナ対策

 選挙カーといえば車に積む音響設備も重要だ。一般的には車載アンプとマイク、スピーカーの組み合わせが主流だが、近年増えているのは前もって録音した音源をスピーカーから流すための機材という。

運転席の脇に据え付けられた音響機器。近年は録音した音源を流す機材が増えているという

 背景にあるのは「コロナ禍」。感染が広がりはじめて以降の選挙戦では、車内での密集や飛まつ感染などを防ぐため、選挙カーに乗る人数が絞られた。このため事前に録音した呼びかけを流すスタイルが定着。今回の統一地方選でも、同社が受注した半数以上の車両にこの機材が搭載されている。マイクの声を流す従来の機材のほかに、CDやSDカードに収録した音声を再生できる機材のニーズが高いという。新型コロナウイルス感染症は、選挙カーにも影響を及ぼしていた。

看板は軽量化 車体のラッピングも

横断幕などで使う素材のターポリンで作られた看板は、設置作業の負担軽減や軽量化などでメリットがあり注目を集めているという

 車体の上に載せられ、立候補者の名前やスローガンをアピールする看板。こちらも選挙カーでは忘れてはならないツール。一般的に木枠やアルミ材を使った枠で組み上げた物が使われているが、軽量でコストも削減できるるため、横断幕などで使われるターポリンを使った看板もポピュラーになってきているという。

 また、車体を使ったラッピングも増えている。ポピュラーなのは、車体後部に立候補者の写真を大きく貼り付け、側面には名前やスローガン、キャッチフレーズをラッピング。また、インスタグラムといった交流サイト(SNS)へと誘導するため、QRコードを車体に貼り付ける立候補者もいるという。

 さまざまな立候補者を選挙カーのレンタルで支える同社は、立候補者の思いや訴えたいことを聞き取りながら、より訴求力のある選挙カーのスタイルを提案しているという。加藤さんは「選挙戦は、落選すれば無職になってしまう厳しい世界。立候補者に当選は選挙カーのおかげと言われると、やはりとてもうれしい」と語る。

 立候補者たちの多種多様な思いが込められている選挙カー。そんな選挙カーの姿を通して、投票先を決めるのも一案かもしれない。