オグリキャップ記念を制覇し、スマイル全開の吉原寛人騎手

 大外一気の豪脚が決まった。「吉原~」とファンから大声が飛び、「何とか最後はかわしてくれた」と喜びをかみしめた。

 第32回オグリキャップ記念(SPⅠ、地方全国交流)は、吉原寛人騎手が騎乗した大井のセイカメテオポリス(牡5歳、渡辺和雄厩舎)が2番人気で差し切りVを決めた。全国区で活躍する「さすらいの重賞V請負人」吉原騎手は、2016年のグルームアイランドに続いて2度目のオグリキャップ記念制覇。新刊「オグリの里・聖地編」にも当時の記事が掲載されているが、雨の中での好騎乗が印象深かった。

 オグリキャップ記念は、日本の競馬界最大のヒーローの活躍をたたえる笠松の看板レース。オグリコールが響いた有馬記念と同じ2500メートルで、コースを2周する長距離戦。今回は1着賞金が1200万円から2000万円に大幅アップ。笠松競馬にとってはオグリキャップ記念がダートグレード競走に復帰することも大きな目標となっている。

 ■コースを2周、名古屋のナムラマホーホが先行

オグリキャップ記念の1周目スタンド前

 昨年覇者の船橋・トーセンブル=渡辺竜也騎手=などスタミナ自慢の強豪が参戦。佐賀・ヒストリーメイカーが回避したのは残念だったが、遠征馬など9頭は重賞ウイナーでハイレベル。笠松勢の優勝はクインオブクインが09年に勝ったのが最後。17、19年には名古屋のカツゲキキトキト(笠松出身)が制覇している。

 11頭立てとなった今回。名古屋のナムラマホーホ=塚本征吾騎手=が先行し、1番人気の浦和・カイル=御神本訓史騎手=がピタリ2番手で淡々とした流れ。レースが動いたのは2周目の3~4コーナー。東海3冠馬の名古屋・タニノタビトが先頭を奪ったカイルに並びかけ、最後の直線へ。岡部誠騎手は昨年5度目の制覇で「ミスターオグリキャップ記念」と呼ばせてもらったが、見せ場たっぷりのスパートとなった。 

吉原騎手が騎乗した大井のセイカメテオポリス(11)が大外一気の豪脚で1着ゴール

 ■セイカメテオポリスが突き抜け、大まくり

 息詰まる攻防。残り200メートルを切って、1番人気のカイルが抜け出そうとするところ、内から高知・グリードパルフェ=赤岡修次騎手=が伸びて、大外からはセイカメテオポリスが飛んできた。吉原騎手の右ムチがうなりを上げ、前の2頭に迫って突き抜ける勢い。

 ゴール手前では3頭が横一線となったが、栄光のゴール板を真っ先に駆け抜けたのはセイカメテオポリス。大まくりが決まり、アタマ差でグリードパルフェ、さらにクビ差でカイルと続いた。タニノタビトは伸びを欠いて4着。渡辺騎手騎乗で期待したトーセンブルは5着どまり。3頭出走した笠松勢ではオーケストラ=向山牧騎手=の8着が最高だった。

 終わってみれば、地方競馬トップジョッキーの吉原騎手、赤岡騎手、御神本騎手のワンツースリー。東海公営を代表する岡部騎手、渡辺騎手は掲示板を確保するのが精いっぱいだった。

オグリキャップ記念優勝馬セイカメテオポリスと喜びの関係者

 ■応援女性らも「うれしい、ポリちゃん大好き」

 ゴール前で見守ったオーナーさんは「めちゃくちゃ、うれしいです。勝つ自信は半分ぐらいあった」と喜びを爆発させた。東京からの女性ファン2人も「うれしい。ポリちゃん(セイカメテオポリス)大好き。優勝のレイをかけられている」と、オグリキャップ記念馬を囲んで口取り撮影にも参加し、歓喜に浸っていた。

 ■吉原騎手「笠松競馬大好きです」

 21年の戸塚記念に続く重賞制覇となったセイカメテオポリス。勝利に導いた吉原騎手インタビュー。口取り撮影では「うれしさが爆発して(オーナーさんや調教師の先生に)抱きついてしまいましたが、本当にうれしかったです」とにっこり。

 「調教から具合が良くて、返し馬もいい状態で自信を持って臨めた。長距離のレースで、かなりのスローになったが、折り合いをつけられて賢い馬だと。内から赤岡騎手のグリードパルフェが切れ味鋭く来ていたので、最後かわしてくれと。すごくうれしかったです」

 今後については「中央の馬と対戦を重ねてきた馬で、また大きいところを狙って頑張りたい」。最後に「きょうは応援ありがとうございました。笠松競馬大好きです」とファンに呼び掛けた。「笠松のレジェンド」アンカツさんは花束贈呈で吉原騎手の勝利を祝福した。

吉原騎手に花束を贈呈するアンカツさん(左)

 ■渡辺調教師「この馬の力を十分に発揮」

 渡辺和雄調教師は「吉原騎手に乗ってもらい、前回(名古屋グランプリ7着)は力を出せなかったが、きょうはこの馬の力を十分に発揮させてくれた。重賞では2着が多いが、崩れずにいい競馬ができていた。強い馬が相手でもそれなりにやれる馬で、遠征経験が生きた。生え抜き馬で、この先ポンポンといってくれれば」と飛躍を期待。

 前走時より15キロ絞ったが、532キロもある大きな馬。コーナー8回の小回りにも「名古屋や金沢を使ったのが生きて、無難にこなしていた」。今後に向けては「順調なら次は大井記念(5月24日)が目標。夏休みを挟んで、秋にはJBCが大井であるので、それも当然意識するレース」と意欲を見せた。

 好天に恵まれ、午前10時の開門時には笠松ファン200人ほどが並んだという。オグリキャップ記念の1レースでは1億6870万円の馬券売り上げがあった。1日の売り上げは6億680万円で、こちらも昨年をやや下回った。 

大勢のファンが詰め掛け、盛り上がったアンカツさん爆笑トークやオグリキャップ記念予想会

 ■アンカツさん爆笑トークで盛り上げ

 来場したアンカツさんは、特設ステージでのトークショーやオグリキャップ記念の予想も披露。スポーツ紙などで皐月賞をズバリ的中させており、「ホーム・笠松」でのアンカツ人気は絶大。大勢のファンが詰め掛け、爆笑トークとなった。

 現役時代には「最後は減量がきつかった。俺も新弟子検査を受けようかな」といきなり冗談を一発。どうやら、笠松競馬の森島貴之騎手の長男が、大相撲の新弟子検査に合格したことを知っての一言で、ファンを楽しませた。

 オグリキャップ記念の予想では「南関東の馬は強いからなあ。飲み友達で一緒によく遊んだ御神本騎手を本命に」とカイルに◎。同じ馬主のトーセンブルに○。セイカメテオポリスは▲。「自分は馬連しか知らないが、馬券がうまい人は買い方が上手で損をしない。3連単とか買う人はだいたい当たらない」と自らの馬券学も披露。レース後、結果はズバリ的中とはいかなかったが、ワイド馬券なら当たっていた。笠松競馬金曜日ライブ出演「dela」の2人もステージに上がり、競馬女子として会場を盛り上げた。

場内では「オグリの里・聖地編」の即売会も開かれた

 ■オグリ聖地への巡礼は国際的な広がりも

 場内では「オグリの里・聖地編」出版記念の即売会を開いた。オグリキャップを生んだ笠松競馬場への聖地巡礼を兼ねて、昨年のウマ娘コラボレースの日に一番乗りした東京の男性は今年も来場。多くの笠松競馬ファンと交流できたが、驚いたのは「オグリの里」購入者に台湾から来日した男性がいたこと。ウマ娘から興味を持って、オグリキャップを知り、笠松に来場したそうだ。日本語も達者で、岐阜城なども訪れたという。オグリ聖地への巡礼は国際的な広がりも見せているようだ。

オグリキャップ像前や特設ステージには「ウマ娘プリティーダービー等身大パネル」も設置され、人気スポットになった

 オグリキャップ像前と特設ステージには、オグリキャップなどの「ウマ娘プリティーダービー等身大パネル」も設置され、人気スポットになった。

 昨年は2体だったが、今年は4体。オグリキャップ像前にはスーパークリークとイナリワンが登場。キャップとともに「平成3強」と呼ばれ、激闘を繰り広げた2頭。特設ステージではタマモクロスとオグリキャップ。芦毛対決は昭和最後の名勝負とも呼ばれた。 場内のポップアップストアではウマ娘関連グッズが販売され、にぎわった。 

オグリキャップの3走目、連勝を飾った1987年6月15日の笠松1R出走表など(競馬エース)

 ■オグリキャップ、笠松3戦目は6馬身差V(1987年6月15日)

 オグリキャップ笠松時代の専門紙を振り返る3回目。デビュー3戦目も800メートル戦で完勝した。競馬エース本紙の印はキャップに◎だが、トラックマンら全体では◎2個で、まさかの「無印」(スポーツ紙)もあった。これに対して、牝馬のフェートチャールスが◎4個で上回った。

 前走タイムはキャップが51秒4。チャールスは新馬戦を49秒9で逃げ切っており、「突っ走りそう」と高評価。2着馬を5馬身も引き離して楽勝だったが、ダートではタイムが速くなる不良馬場でのものだった。

 キャップは末脚の爆発力がすごく「2勝目に王手」と単勝1番人気。チャールスも差のない2番人気で一騎打ちムード。

 キャップの手綱を取ったのは、デビュー戦で乗った青木達彦騎手。「初戦は不利を受けても、闘志をむき出しにして走り、豪快に追い込んだ。ものすごく強い馬では」と自信を持って騎乗し、能力を発揮させた。

 ■マーチトウショウと「芦毛対決」へ

 9頭中、牝馬が6頭でキャップにとっては初めての重馬場でのレース。○▲△印を牝馬が占めて惑星多彩だったが、終わってみれば、キャップが2着のチャールスに6馬身差をつけて完勝。3番手から4コーナーで2番手に上がると、逃げたチャールスをあっさりと抜き去り、突き放した。タイムは49秒8。ラスト3ハロンも自己最速の36秒7。重馬場は得意で、中央入り後も湿った馬場で負け知らず。毎日杯(重)や2度の毎日王冠(やや重)を制覇した。

 3戦目を勝ったキャップ。枠連は⑤⑧で230円。複勝はチャールスの方が多く売れていて、キャップの160円に対して、チャールスは110円という異変もあった。チャールスは次の一戦で、マーチトウショウを倒しており、実力は十分だった。

 キャップの4戦目はリベンジのチャンス。宿敵マーチトウショウとの「芦毛対決」が待っていた。