笠松競馬の開催をアピールする「夏を翔ける」のポスター

 「夏を翔ける」とは彼のこと。南関東やマカオなど遠征先での活躍が目立っていた水野翔(かける)騎手(笹野博司厩舎)。馬場リニューアル後の笠松競馬場でも勝ちまくり、4日間で10勝を挙げた。初めての開催リーディングに輝き、笠松の「おしゃれ番長」で飛んでる男がホームでも存在感を示してくれた。   
 
 無観客開催ではあるが、ユーホールなど場内には笠松競馬の夏場の開催をアピールするポスターを掲示。これを見た水野騎手は『「夏を翔ける」と書いてあるのに、僕が写ってません」と自身のツイッター上で苦笑い。このポスターはどうやら5月11日第9Rのもの。筒井勇介騎手が勝ったレース(吉井友彦騎手2着、深沢杏花騎手3着)だったが、水野騎手は南関東遠征中で笠松不在だったから、まあ仕方がないか...。それでも、これを発奮材料としたのか、くろゆり賞シリーズで固め勝ち。昨夏にはマカオで重賞初Vを達成しており、笠松でも「サマーボーイ」の本領発揮となった。

 圧巻だったのは2日目。メイン・吉田川特別をオーシャンスカイ(牡3歳、笹野博司厩舎)で制するなど1日5勝を挙げた。4日目にも3勝を挙げて量産態勢。「乗せてくれる馬主さん、調教師さん、厩務員さん、応援してくれるファンの方々のおかげです。これからも頑張っていきます」と、初開催リーディングに感謝のコメントを寄せた。

くろゆり賞シリーズで10勝を挙げ、初めての開催リーディングに輝いた水野翔騎手

 「疾風迅雷」をモットーに、初挑戦した南関東で大暴れの20勝。騎乗数は少ないが名古屋でも今年18勝(8月21日現在)を飾っており、昨年の7勝を上回る活躍ぶり。今年初めには「笠松リーディングを狙います」と意欲を示していた水野騎手。1年間のリーディング争いは、昨年に続いて筒井勇介騎手が67勝でトップ。渡辺竜也騎手が62勝で2位。水野騎手はようやく30勝だが、このところ一番乗れていて、頼りになる存在。笠松は騎手不足でもあり、今後、地元に専念して攻め馬に励めば、有力馬への騎乗依頼は増えるだろう。けがなどなく、年末までしっかりと乗っていければ、勝利量産の爆発力もあって、筒井騎手や渡辺騎手を脅かす存在になるかもしれない。 
 
 水野騎手にとって、もう一つの大きな目標は地元での重賞V。マカオではG2のサマートロフィーをファスバで勝っているが、国内重賞は未勝利。5日・名古屋の湾岸スターカップではメタリフェル(牝3歳、藤ケ崎一人厩舎)に騎乗したが、逃げ切りならず2着惜敗。13日の笠松・くろゆり賞では、ニホンピロヘンソン(セン馬4歳、川嶋弘吉厩舎)に騎乗し、追い上げたが2着どまりだった。
 
 18日には金沢へ遠征し、読売レディス杯に参戦。南関東での活躍が認められてか、大井・エースウィズ(牝6歳、松浦裕之厩舎)への騎乗を依頼された。スタートで出遅れて最後方からの競馬になったが、最後はインから鋭く伸びて3着は確保した。この日の第6Rでは金沢での初勝利を飾っており、好調さはアピールできた。

 水野騎手の「国内重賞初V」はどこの競馬場で達成されるのか。できれば遠征先でなく笠松で、ファンの前で、笹野厩舎の馬に騎乗して決めてほしいが...。

くろゆり賞をクインズプルートで制覇。笠松初騎乗で重賞Vを飾った北海道の小野楓馬騎手(左)と安田武広調教師(中央)

 ■くろゆり賞、北海道の小野楓馬騎手が笠松初騎乗V

 今夏のくろゆり賞は、北海道からの遠征馬クインズプルート(牡7歳、安田武広厩舎)が、猛暑を吹き飛ばしてスイスイと逃げ切った。笠松の馬場がすごく合っていて軽快な走り。手綱を取った小野楓馬騎手は、笠松初騎乗で重賞Vの快挙を達成した。デビュー2年目の20歳で、笠松の東川慎騎手(19)とは同期。道営でもリーディング7位と活躍しており、将来性豊かな若手ジョッキーだ。
 
 真夏の太陽の下、後続馬に影をも踏ませない6馬身差の圧勝劇。小野騎手は「先手を奪って気持ち良く行けたらと。小回りでコーナーが急なんで、そこは考えて乗りました。北海道で勝った時と同じで調子が良く、馬が頑張ってくれました」と振り返り、爽やかな笑顔を見せていた。クインズプルートは前走の星雲賞に続いて重賞2連勝。小野騎手自身、重賞は早くも4勝目。この日が誕生日だった安田調教師へのハッピープレゼントにもなった。

 2着・ニホンピロヘンソンに騎乗した水野騎手。4番人気だったが、後方から脚をためて、追い上げる手綱さばきには見応えがあった。勝った馬には完敗だったが、3コーナーからメンバー最速の上がりタイムで突っ込んだ。道営出身の水野騎手としては、北から乗り込んできた若手騎手に敗れ、悔しい一戦にもなった。
 
 ■「おうちで競馬」売り上げは好調

 コロナ禍による無観客開催。ファンの間ではライブ中継を見ながら、電話・ネット投票を行う「おうちで競馬」が定着。全国の地方競馬はどこも売り上げを伸ばしており、ダートグレード競走開催日の南関東、門別、兵庫、高知、佐賀では1日10億円超えが相次いだ。笠松でも3月から無観客レースが続いているが、4月のオグリキャップ記念開催日には8億円超えとなった。

 今夏の笠松競馬は馬場改修のため7週間もレースが行われず、場外では「調教師、騎手の馬券購入問題」で大揺れとなった。そんな状況下でのレース再開。競馬組合には苦情や心配する電話もあったと聞くが、注目された売り上げはどうだったのか。

 お盆開催のくろゆり賞シリーズ。初日は3億9300万円と予想以上の販売額で一安心。その後も右肩上がりで、最終日には5億2900万円。4日間では計17億6000万円と上々だった。昨年のお盆と比較すると26%増、今年6月開催(後半)からは16%増。まずは懸念された落ち込みもなく好調な数字で、関係者をホッとさせたことだろう。笠松競馬に興味を持って、投票してくれるファンが多くいることは、本当にありがたいことだ。
 
 新装オープン後、笠松の馬場はより軽くなった印象だが、ゴールまで諦めずに騎乗馬を追うジョッキーの腕比べは、迫力が増したように感じられた。最後までハラハラ、ドキドキの展開で、画面越しのファンに真剣勝負を楽しんでもらうことが笠松競馬に携わるホースマンの使命。若手ジョッキーも増えており、お互いに騎乗技術を磨き合って、力のこもったレースで盛り上げてもらいたい。

 26日からの笠松競馬・西日本ダービーシリーズ(前・後半3日間ずつ)では、27日に3歳重賞の岐阜金賞が行われる。駿蹄賞、東海ダービーを勝った地元の期待馬・ニュータウンガール(牝3歳、井上孝彦厩舎)が順調なら「東海3冠馬」を目指すことになる。