YJS高知ラウンドに参戦する笠松の長江慶悟騎手。佐々木朗希投手のそっくりさんでもあり、注目度が高まっている

 「堂々のセンターだよ、ファイナル目指して頑張って」とファンも応援。プロ野球「令和のミスターパーフェクト」佐々木朗希投手のそっくりさんで、テレビのものまね番組などに出演した笠松競馬の長江慶悟騎手(23)が、本業の競馬でも「全国デビュー」を果たそうと張り切っている。 

 蒸し暑い日々が続く日本列島。高校野球地方大会では甲子園を目指す球児たちの熱闘がプレーボール。地方・中央の若手騎手たちが火花を散らす「2023ヤングジョッキーズリーズ(YJS)」はトライアルラウンドがゲートオープン。地方勢37人、JRA勢25人が参戦。年末のファイナル進出を目指して若いエネルギーを爆発させる。

 今年のYJSには笠松競馬から長江騎手をはじめ、深沢杏花騎手(21)、松本一心騎手(18)の計3人が挑戦。名古屋競馬からは浅野皓大騎手(22)、大畑慧悟騎手(18)の2人、JRAからは田口貫太騎手(19)や今村聖奈騎手(19)らも参戦。7月17日の高知ラウンドでは長江騎手や田口騎手らが騎乗する。

YJS開催をアピールするポスターでは、長江騎手がセンターを務めている

 ■ポスターのセンターを任され、注目の的

 NAR(地方競馬全国協会)の特設サイトではYJS出場騎手らを紹介。「競馬の、新しい顔になれ。」とフロント画面やポスターで「センター」に抜てきされたのが、なんと長江騎手だ。騎乗馬は10番で、昨年の笠松ラウンドで見事1着になった自厩舎のボルドーアドゥール(後藤佑耶厩舎)である。

 長江騎手は昨年、地方騎手のファイナル進出(西日本4位以内)に4ポイント届かず7位。笠松で期間限定騎乗中だった浦和の及川烈騎手が名古屋、中京でのファイナルに出場したが、長江騎手は補欠に回り、悔しい思いを味わった。笠松での最終戦では、しんがり負け。騎乗馬に恵まれなかったが「7着以内ならファイナルに進出できたのに、自分の力不足でした」と残念がった。

 グリーンチャンネルの「アタック地方競馬」でもYJS西日本地区の注目騎手として長江騎手を特集。今年の出場騎手では補欠の最上位だったことから出演依頼を受けた。「減量騎手」を卒業した東川慎騎手に続いて2年連続で笠松の若手が競馬番組で紹介された。

2着目の勝負服はユニホーム姿? 佐々木投手の投球フォームをまねる長江騎手

 ■勝負服は「二刀流」で佐々木投手のユニホーム姿に大変身

 番組の中でも「昨年のYJSは反省と悔しさで、いい勉強になりました。果たせなかったファイナルへ、その先の優勝に向けて自分の力を出し切って頑張りたい」と意気込みを語った。ところがインタビューの途中からは、騎手の勝負服姿から、佐々木朗希投手のユニホーム姿に大変身。WBCでの吉田正尚選手の同点3ランに対する佐々木投手の感想をまねるなど「そっくりさん」ぶりを披露し、番組を盛り上げた。どうやら長江騎手の「勝負服」はレース用と、レース後のコスプレのユニホーム姿があり「二刀流」でも自己アピール。全国の競馬、プロ野球ファンを楽しませている。

 ポスターでも「センター」を任されていることから、番組出演者からは「ファイナルへ行かなきゃしょうがないですよね」「投手じゃなくてセンターなんで。YJSでもぜひセンターを取ってほしい」と熱いエールが送られた(ユーチューブNAR公式チャンネルでも視聴可能)。ものまね番組でも注目された長江騎手は、大谷翔平選手のそっくりさんとも仲良くなったそうだ。

昨年、笠松ラウンドで1着があった長江騎手。今年も勝ってファイナル進出を目指している

 ■レース本番でもセンターの座は譲れない

 昨年の高知ラウンドでは3着、9着だった長江騎手。今年も高知で2レースに出場。テレビ番組出演も相次ぎ「佐々木投手のそっくりさん」としての認知度は高まっており、レースでどんなパフォーマンスを見せてくれるか。1着ゴールでの勝利騎手インタビューがあれば最高だ。もちろん、レース用の勝負服はいつも笠松で着用している「水色十文字たすき」だが、レース終了後には背番号17のユニホーム姿(上半身だけでも)も見てみたいものだ。昨年はアンダーシャツ姿で投球フォームを披露してくれたが、今年は佐々木投手のユニホーム姿もカメラ向けに期待されており、そっくりぶりを披露するチャンスでもある。

 2020年10月にデビューした長江騎手。これまで落馬による2度の大けがと競馬場の長期自粛もあって、満足に騎乗することができず苦労をしてきた。 レース再開後の笠松で昨年29勝を挙げたが、今年はこれまで12勝。2着、3着が多く馬券には絡んではいるが、勝ち切れていない。3コーナーから追い上げて、4コーナー大外一気の競馬を得意としているが、高知でも掲示板の上位をにぎわせる活躍を見せたいところだ。レース再開後、大きなけがはなく「佐々木投手に似ていること」も武器にしてポジティブになった。インタビューでの受け答えもハキハキとして成長した姿を見せている。笠松でより信頼される騎手になり、YJSではファイナリストを目指して大暴れなるか。レース本番でもセンターの座は譲れない!

昨年の「ウマ娘シンデレラグレイ賞」を勝った深沢杏花騎手。YJSではファイナル進出が期待されている

 ■深沢杏花騎手はラストチャンスで勝負

 今年24勝で笠松の女性ジョッキーとして活躍が目立つ深沢杏花騎手はデビュー4年目。地方競馬通算で96勝を挙げており、100勝まで「あと4」。YJS出場は今年で最後になりそうだが、これまで2度の出場では、くじ運に恵まれずに人気薄の馬に騎乗することが多かった。今年は金沢ラウンドから参戦し、ラストチャンスで勝負する。

 昨年は金沢、笠松で11、10、11、7番人気での騎乗だったが、5着、4着があった深沢騎手。「着順を少しでも前にもってこられました。笠松勢2人が勝ったのに、私だけこっちで、寂しく最終レースの鞍をつけていました。くじ運は悪いですが、また頑張りたいです」と前を向き、飛躍へのステップにもなった。

昨年の笠松での紹介式。永島まなみ騎手(前列)はトライアルラウンド1位でファイナリストになった

 ■目指せ地方女性騎手初のファイナル進出

 今回、深沢騎手には地方競馬の女性ジョッキーでは初めてとなる「ファイナル進出」を期待したい。これまでJRA勢では藤田菜七子騎手、永島まなみ騎手がファイナリストの座をつかんでいるが、地方勢はまだである。

 今年は地方から深沢騎手をはじめ、中島良美騎手(浦和)、神尾香澄騎手(川崎)、浜尚美騎手(高知)の計4人の女性ジョッキーが参戦。ファイナリストになれば全国にアピールできる絶好のステージになる。深沢騎手は金沢で1戦、園田と笠松で2戦ずつ。これまでより1戦多い計5戦での騎乗を生かしたいし、くじ運もそろそろ上向いてくると信じてナイスファイトを見せてほしい。

笠松デビュー戦で初勝利を飾った松本一心騎手

 ■ルーキー松本一心騎手、先輩たちに食らいついて

 ルーキーの松本一心騎手は今年4月、笠松デビュー戦を鮮やかな差し切りで1着。初騎乗で初勝利を飾った。2、3番手の好位差しが得意で、既に13勝を挙げる活躍を見せている。父・松本剛志騎手と同じ加藤幸保厩舎に所属し、騎乗技術を磨く日々。父とのワンツーフィニッシュ(または1着同着)も期待され、惜しいレースはあったが達成はお預けとなっている。

 YJSには金沢、笠松で2戦ずつ騎乗する。無欲で体当たり、先輩たちに食らいついていきたい。西日本地方騎手の新人では加藤翔馬騎手(金沢)、大畑慧悟騎手(愛知)が好成績を挙げているが、渡辺竜也騎手のように1年目からファイナル進出も夢ではない。

 ■田口貫太騎手も高知で初チャレンジ

 JRAで3月にデビューした栗東所属の田口貫太騎手(19)も高知でYJS初チャレンジ。笠松でも騎乗する。これまで中央で11勝を挙げており、今年の新人騎手6人のうちでは断トツの好成績。美浦所属の佐藤勝太騎手(20)が5勝で続いている。

 田口騎手は地方参戦も多く、笠松で6勝、金沢で1勝。6月には父・田口輝彦調教師の管理馬でうれしい初勝利も飾った。2年目の今村聖奈騎手は今年JRAで17勝を挙げており、YJSには金沢から参戦し、笠松でも騎乗する。

笠松でのJRA交流戦で、パドックに向かう田口貫太騎手(左)と今村聖奈騎手

 ■今村聖奈騎手との笠松での対戦増えそう

 笠松・7月前半のJRA交流戦では1番枠に田口騎手、2番枠に今村騎手が並び、騎手バスを降りてパドックに向かう姿は楽しそうだった。栗東のトレセンでは顔を合わせている仲だし、お互いリラックスムードで笑顔も見られた。レースでは今村騎手がレインボーウェザーに騎乗し、鮮やかに1着。田口騎手は6着に終わった。その6日後、金沢でのJRA交流戦では田口騎手が1着でリベンジを果たした(今村騎手は6着)。

 ともに19歳で誕生日も近い。田口騎手の両親は笠松の元ジョッキーだし、今村騎手の師匠は寺島良調教師(実家は岐阜県北方町)。吉田勝利オーナーら地元の馬主さんとのつながりも深く、今後も2人が笠松で対戦する機会は増えそうだ。

 東日本地区では、笠松での期間限定騎乗を経験した及川烈騎手(浦和)、田中洸多
騎手(大井)、若杉朝飛騎手(北海道) もYJSにチャレンジ。及川騎手は昨年、地方勢トップ通過でファイナリストになった。けがの治療から復帰し、今年も上位進出を狙っている。

昨年のファイナル、中京競馬場でも騎乗し、総合5位と健闘した浅野皓大騎手

 ■浅野皓大騎手、昨年ファイナルで総合5位

 名古屋競馬の浅野皓大騎手は羽島市出身。昨年は名古屋で1着、2着。最下位から3位に上がり、ファイナルでも総合5位に食い込んだ。追い込まれて勝負強さを発揮できるタイプで、今年は高知、名古屋、笠松で騎乗する。

 西日本地区では佐賀が終わり、栗東所属の小沢大仁騎手が2連勝を飾った。高知、金沢、園田、名古屋と続き、最終の笠松でファイナルラウンド進出者が決まる(地方、中央それぞれ成績上位4人)。

 笠松ラウンドは10月11日に行われ、ファイナルラウンドは川崎(12月14日)と中山(12月16日)。笠松勢では2017、18年の渡辺竜也騎手以来となる夢舞台に挑む3人。ファイナル切符をゲットし、表彰台を目指したい。

 ■笠松に新たな騎手候補生2人、競馬場実習スタート

 レギュラーの所属騎手は11人という笠松競馬だが、7月12日から新たな騎手候補生が競馬場実習に励んでいる。栃木県の地方競馬教養センター第105期生(15人)の角田有輝(つのだ・ゆうき)候補生と明星晴大(みょうじょう・せいだい)候補生の2人で、それぞれ笹野博司厩舎と後藤佑耶厩舎でお世話になっている。笠松が所属予定競馬場で、夜中の調教から実地訓練をスタートした。期間は12月13日まで5カ月間。騎乗技術をみっちり学んで、地方競馬教養センターを卒業し、地方騎手免許を取得できれば、来年4月にも笠松で騎手デビューを果たす。また名古屋競馬では、望月洵輝(もちづき・しゅんき)候補生=井上哲厩舎=も実習入りした。新たな若い力が加わり、競馬場も未明から活気づいてきた。

角界入りを前に、笠松町役場を訪問し活躍を誓った大馬翔(右から2人目)

 ■森島騎手長男の「大馬翔」デビュー、名古屋場所で奮闘

 若い力といえば大相撲でも笠松中出身の「期待の星」が誕生した。笠松競馬の森島貴之騎手(34)の長男である優さん(15)が追手風部屋に入門。しこ名は地元の笠松競馬にちなんだ大馬翔(だいばしょう)で夏場所にデビューを果たした。有馬記念を2度も勝った地元の出世馬にあやかって「角界のオグリキャップ」を目指して、名古屋場所の土俵で奮闘中だ。

 大馬翔は入門前の3月には父親の貴之さんらと笠松町役場を訪れ、古田聖人町長に「自分がどこまで通用するのか、わくわくしている」と意気込みを語った。ボクシングや乗馬を経験してきたが、小学校5年生の時、町内の「東海すもうクラブ」で相撲を始めた。まわしを締めて土俵に上がって感激。「自分がやるべき競技はこれだ」と体全体で相手とぶつかり合うことに魅力を感じたという。

東海すもうクラブ出身で稽古に励んだ大馬翔(左)

 ■ぶちかまし、押し相撲が武器

 昨年の県選手権で3位入賞。「相撲と出合った時の自分のように、人に夢を与えられるような力士になりたい」と稽古に励んできた。今年の春場所新弟子検査で合格。身長166センチ、体重102キロ(入門時)で押し相撲が得意。「笠松町を盛り上げられるような関取になりたい」と力強く語り、土俵ではぶちかましが武器で「立ち合いから全力でぶつかりにいく」と果敢に攻める姿勢を貫いていく。

 5人きょうだいの長男。現役ジョッキーである父には厳しい体重制限もあるが、力士はよく食べて体をより大きくすることも求められる。大馬翔は3月21日生まれ。同期では最も若いが「最年少の幕内力士を目指す」と飛躍を誓った。

東海すもうクラブで子どもたちに稽古をつける大栄翔関(右)

 ■大関目指す兄弟子の大栄翔関、笠松町で子どもたちに稽古

 大馬翔の兄弟子で、大関昇進を目指す関脇の大栄翔関(追手風部屋)は名古屋場所前の7月4日、笠松競馬場近くの東海すもうクラブを訪れ、子どもたちに稽古をつけた。クラブの青木貫一代表と親交があり、クラブで腕を磨いた大馬翔が追手風部屋に入門したことから訪問が実現した。

 稽古には小中高生ら約20人が参加。大栄翔関は小さな女の子らの懸命な押しにも胸を貸しながら、丁寧に稽古をつけると「みんな元気に向かってきてくれた。名古屋場所で良い結果を知らせたい」と意欲を示した。

 この日は笠松競馬の開催日。かつては名古屋場所が近づくと、浴衣姿のお相撲さんがスタンドでのんびりとレースを観戦する姿も見られ「夏の風物詩」といった光景だった。最終レース終了後には、笠松競馬ファンらも大栄翔関が訪問した稽古場で熱心に見学。大関昇進への期待を高めていた。

 大馬翔は名古屋場所で序ノ口・西三枚目に上がり、持ち味を生かそうと土俵に挑んでいる。地元の競馬ファンらも大相撲速報を注目して応援しており、活躍を願っている。大栄翔関の大きな背中を追って、一歩一歩前に進んでいきたい。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。