【準決勝 大垣日大11―4帝京大可児】

 「正直、涙が出たよ」。祖父の大垣日大・阪口慶三監督が相好を崩す活躍で、勝利を決めたのは、やはり頼れる4番高橋慎だった。延長タイブレーク十回8点の口火を切る2点三塁打。4回戦までは打率8割超えだったが、実は準々決勝の岐阜第一戦から8打席無安打で、帝京大可児ナインも高橋との勝負を決めたほど。だが、主砲のバットは相手の思惑を見事に打ち崩した。

帝京大可児×大垣日大=延長10回表大垣日大1死二、三塁、高橋が走者一掃の2点適時三塁打を放つ=長良川球場

 「明らかに体がつらそうで、本調子でなかった」と孫を見ていた阪口監督。高橋は、ベンチを外れた春季東海大会初戦と同じく、岐阜第一戦から、かぜによる体調不良だった。この日も「せきがひどく、のどが痛かった」と振り返る。

 タイブレーク開始の無死一、二塁で阪口監督は3番米津煌太に犠打を命じた。1死二、三塁。帝京大可児の田口聖記監督は「高橋との勝負を避ける満塁策」と思ったが、選手にまかせる方針。ナインがタイブレーク前の円陣で選択したのは「高橋との勝負」だった。

 勝負の場面。高橋は「前の打席でインコースにつまされていた。次も必ずくる」と読み、バットを短く持って打席に立った。狙い通りの内角ストレートが初球から「きたっ」。コンパクトに振り抜いた当たりは右中間を破り、2者生還。チームに勝利を呼び込んだ。

 「最高」と声を弾ませる高橋。投ではエース山田がこの日も再登板で気迫の投球。投打の主役の活躍で5年ぶりの夏の甲子園へに向け、決勝の舞台に挑む。

帝京大可児×大垣日大=2度マウンドに上がり、好投した大垣日大のエース山田=長良川球場