ジュニアクラウンを制覇したワラシベチョウジャと渡辺竜也騎手

 大物感の漂う走りで「笠松の新星」がきらめいた。

 笠松競馬所属の2歳若駒が激突する準重賞「ジュニアクラウン」(1400㍍、JRA認定競走)が14日行われ、渡辺竜也騎手が騎乗した牝馬ワラシベチョウジャ(笹野博司厩舎)が単勝1.2倍の1番人気に応えて圧勝。無傷の4連勝で笠松待望のスターホース候補に躍り出た。

 ジュニアクラウンは1987年、オグリキャップが「元祖・芦毛対決」で宿敵マーチトウショウにハナ差で勝ったレース。当時は重賞(2011年まで)で、1993年には妹のオグリローマンも勝っており、兄妹で中央GⅠ制覇へとつながった出世レース。

2着馬を5馬身引き離して圧勝したワラシベチョウジャ 

 ■軽快なフットワーク、5馬身差でゴール

 ワラシベチョウジャは圧倒的な強さを見せつけた。内からアライグマパンチ(田口輝彦厩舎)がハナを切り、2番手を追走。3コーナーで先頭を奪うと、軽快なフットワークで後続を突き放し5馬身差でゴールイン。アコー(伊藤強一厩舎)が3戦連続でワラシベチョウジャに続く2着、北海道から移籍のミスキャサリン(田口厩舎)が3着に食い込んだ。

 ■渡辺騎手「仕上がり良く、自信を持って乗りました」

 表彰式で渡辺騎手は「強かったですね。前走よりも状態を仕上げることができたので、自信を持って乗りました。前回はゲートの中で落ち着きがなかったので、追い切りで調整して、いい状態で臨めて良かったです」と振り返った。

優勝したワラシベチョウジャと喜びの関係者

 タイムは1分29秒7。前走の秋風ジュニアより1秒3も速く、笠松2歳勢のトップに立った。「北海道からまた骨っぽい強い馬が来ていますが、成長して打ち負かせるようにしたい。この馬とともに追っかけて応援していただけるとうれしいです」とアピール。応援してくれたファンとの交流では、直筆サインや記念写真に応じながら感謝していた。 

 ■笹野調教師「ゆったり仕上げ、距離が延びても対応していきたい」

 笹野調教師は「前回は追い切りでやり過ぎちゃって、いっぱいいっぱいの内容だったんで。2走前のようにゆったり仕上げた方が良いと、今回は余裕残しの追い切りにしました。距離は今後徐々に延びていくから、対応していきたい」と完勝に好感触だった。

ジュニアクラウンを勝ち、笑顔の渡辺騎手

 ■来年に向けて楽しみな馬「間違いないです」

 表彰式後、勝利のポーズも決めてくれた渡辺騎手。「ゲートを上手に出てくれて乗りやすくて反応もいいです。引っかかることはなく1600メートルぐらいも対応できるかなあと。プレッシャーはかかりますが、時計も優秀だったんで、このまま成長してくれれば。生え抜き馬として北海道からの移籍馬にも勝っていきたい」と意欲。

 距離が2100メートルに延びる東海ダービーなども含めて「来年に向けて楽しみだね」と聞くと「間違いないです。いま馬が仕上がりすぎちゃってますが、どんな競馬もできるんで」と連勝街道へ手応え十分だった。

パドックから返し馬に向かうワラシベチョウジャ

 ■次走は1着賞金1000万円の「ネクストスター笠松」

 関係者からは「成長して、すごい化け物になる可能性がある馬」と高い評価も受けた。次走の目標は10月12日の重賞「第1回ネクストスター笠松」(1400メートル、笠松所属馬限定、未来優駿)で、1着賞金は何と1000万円だ。

 「ネクストスター」は、国内ダート競走の体系整備に伴い、新設された高額賞金レース。3歳短距離路線として、5月の兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)を頂点と位置付け。2歳秋から3歳春にかけて地方の各場で「ネクストスター」が開催され、ステップレースとなる。

 ネクストスター笠松で、ワラシベチョウジャの新たな強敵になりそうなのは北海道からの移籍組。門別デビュー戦勝ちのクリスタライズ(後藤佑耶厩舎)や笠松の特別戦を勝ったキスリング(田口輝彦厩舎)で、2歳馬では破格の「賞金1000万円」は大きな魅力となる。

 近年の笠松2歳馬ではシルバ(浦和に移籍)、ドミニク、スタンレーなどがスターホース候補として期待されたが、脚元のけがなどで順調さを欠いてきた。年内には地方交流のラブミーチャン記念やライデンリーダー記念もあり、重賞戦線でのワラシベチョウジャの活躍が期待される。         

オグリキャップの7走目、マーチトウショウとの一騎打ちになった1987年10月4日の笠松10R出走表など(競馬エース)

 ■オグリキャップ笠松7戦目「芦毛対決」で冷や汗(1987年10月4日)

 笠松時代のオグリキャップのレースを振り返るコーナー。デビュー7戦目は、宿敵マーチトウショウとの5度目の「芦毛対決」となったジュニアクラウン(当時は重賞)。2頭のマッチレースは漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」でも描かれ、笠松時代のハイライトシーンにもなった。オグリキャップは早めに先頭に立ち過ぎて、マーチトウショウの差し返しを食い、ハナ差の辛勝。名手・アンカツさんをヒヤリとさせた。

 キャップはデビュー戦、4戦目でマーチトウショウにクビ差負け。5、6戦目では2馬身半、4馬身差で逆襲した。これまで2勝2敗で、対戦成績でも決着をつける一戦となったが、まさかのレース展開となった。

笠松時代のオグリキャップ。800メートルから距離が延び、アンカツさんとのコンビで連勝街道を突っ走った

 キャップには前走に続いてアンカツさんが騎乗。8月末の秋風ジュニアから9月は休養に当てて登場。「競馬エース」では、距離が延びて圧勝した前走内容から「将来A級の声が上がるのも当然か」とキャップを絶賛。◎印を並べ、原隆男騎手騎乗の○印・マーチトウショウとの一騎打ちを予想した。

 5番手から進んだキャップはいつもより早めに進出。3~4コーナーでは3番手から先頭に立ってしまった。ところが、マーチトウショウもすごい脚で上がってきて、4コーナーでは先頭を奪った。負けられないキャップとアンカツさん。中央・マイルCS戦でのバンブーメモリーとの死闘のような展開で、内から猛然と差し返したキャップ。実況も「激しいたたき合いだ、ゴール前では2頭が並んでおりました」と壮絶なバトルになったが、キャップが先にゴールイン。この経験は、2年後のマイルCSハナ差勝ちに生かすことができた。
 
 10日後には中京での芝レースを控えており、アンカツさんは少しでも楽な競馬をさせようと3コーナーから動いて先頭に立ったが、マーチトウショウの健闘が光った。ともにラスト38秒7の末脚で、配当は枠連で190円。「芦毛対決」を勝負根性で制したキャップの笠松時代のベストレースといえよう。           

昨年の笠松競馬秋まつりチャリティーオークションで1番人気だったオグリキャップのレプリカゼッケン

 ■「ジュニアクラウン」のゼッケン(レプリカ)11万円で落札

 ところで、昨年の笠松競馬秋まつりで盛り上がったチャリティーオークション。オグリキャップが勝った「ジュニアクラウン」のゼッケン(レプリカ)がお宝グッズとして出品され、ファンによる争奪戦が繰り広げられた。

 ウマ娘効果もあったのか「オグリキャップ&アンカツ」最強コンビの人気は健在で、ゼッケンは最高値の11万円で落札された。威勢のいい掛け声が飛び交い、笠松競馬のオークション史上でも名勝負となった。
           
 今年の笠松競馬秋まつり(10月14日)でもチャリティーオークションを開催。人気のゼッケンでは、レジェンドハンター(レプリカ、アンカツさんのサイン入り)や、ビルボードクィーン(M.ヴェロン騎手のサイン入り)など9点が出品される。このほか笠松騎手提供の勝負服や笠松グランプリのペナント(ラブバレット3連覇)なども人気を集めそうだ。

東海ダービー2着のツミキヒトツと渡辺騎手。西日本ダービーに参戦し5着だった

 ■西日本ダービーはオレンタノ4着、ツミキヒトツ5着

 笠松には「ダービー」と名の付くレースはないが、佐賀では9月10日、3歳生え抜き馬限定の「西日本ダービー」に笠松勢2頭が挑戦した。東海ダービー2着で成長著しいツミキヒトツ(牡3歳、笹野厩舎)に渡辺竜也騎手が騎乗し5着。掲示板を外したことがない堅実馬オレンタノ(牡3歳、田口厩舎)は4着に食い込んだ

 このところ、笠松勢の全国レベルの重賞挑戦では「付いて回ってくるだけ」のレースも目立っていたが、ツミキヒトツには専門紙に▲印や◎印もあって、日曜日の遠征競馬で笠松ファンも注目した。JRAのレース終了後の夕方発走。朝からネット予想などをチェックしながら、久しぶりに胸が高鳴る思いで発走を待った。

 金沢の重賞6勝馬ショウガタップリは断トツ人気だが「大井遠征(黒潮盃6着)の疲れが残っているかも」。騎乗する吉原寬人騎手は5日前の名古屋・秋桜賞、ハクサンアマゾネス(単勝1.5倍)でまさかのしんがり負け。西日本ダービーでは「現状の笠松勢のレベルでは通用しない」と感じていたが、競馬は何が起こるか分からない。

西日本ダービーに挑み、4着と健闘したオレンタノ(笠松競馬提供)

 ツミキヒトツは3番人気に支持された。ショウガタップリは強いが、東海ダービーで2年連続2着の渡辺騎手が、悲願のダービージョッキー目指して挑んだ。

 レースは3コーナーを回って早々と勝負あった。ショウガタップリが力の違いを見せて6馬身差の圧勝で重賞7勝目。2番枠のツミキヒトツは、砂が深い最内枠(1番が除外)も影響し、先行力を発揮できず、最後も伸び脚を欠いた。芦毛のオレンタノには佐賀の石川慎将(しんすけ)騎手が騎乗。10番人気だったが、ゴール前で差し脚を伸ばしてハナ差4着と大健闘。初の重賞挑戦でツミキヒトツに先着し、成長力を示した。笠松勢は2頭とも掲示板を確保したのは収穫で、さらなる飛躍が期待される。 

2022年9月、国内最高齢の出走新記録を達成したヒカルアヤノヒメと関係者(名古屋競馬提供)

 ■金沢「敬馬賞」に笠松から4頭挑戦

 2歳、3歳馬は成長が楽しみだが、高齢馬も健在ぶりを発揮して頑張っている。9月19日、金沢競馬場で行われる9歳以上のC級在籍馬に限定した「敬馬賞」(準重賞、1400メートル)が面白そうだ。「敬老の日」の翌日に開催。国内最高齢馬で、名古屋の19歳牝馬ヒカルアヤノヒメ(井上哲厩舎)も参戦予定だったが、16日に出走を回避した。

 ヒカルアヤノヒメは、ダイワスカーレットやウオッカと同世代。これまで14勝で、笠松では4勝と好成績。勝利は2015年8月の笠松戦が最後となっている。昨夏には、愛知県警蟹江署から「ウマい話には気をつけて」と特殊詐欺の被害防止を呼びかける一日警察馬に委嘱され、防犯キャンペーンにも協力した。

 敬馬賞は「敬老の日」に合わせたアイデアレースで、今年から北陸・東海地区交流の準重賞になった。10頭立てで笠松からは9~11歳馬4頭がチャレンジする。150戦10勝のネイバルエンスン(セン馬11歳、大橋敬永厩舎)には長江慶悟騎手が騎乗。このほかツクバキセキ(深沢杏花騎手)、サンライズサーカス(東川慎騎手)、ラディアンスウェイ(松本一心騎手)が参戦する。

 高齢馬レースだが、笠松勢の乗り役は若手ばかりで、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。準重賞に格上げされたが、笠松のC級サバイバルや芦毛馬限定「ウマ娘シンデレラグレイ賞」のように下級条件でのバトルで注目される。格上馬で実績上位のツクバキセキなど笠松勢には頑張ってほしいし、まずは「全馬無事ゴール」を願いたい。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。