眼科医 金田正博氏

 糖尿病は高血糖が慢性的に続く病気で、身体中の細かな血管が障害され、さまざまな合併症が全身に生じてきます。代表的なものは網膜症、腎症、神経障害で3大合併症と呼ばれています。網膜症は進行していくと失明につながる病気で、糖尿病でない方でも名前ぐらいは聞いたことがあるのではと思います。ですが、糖尿病からくる目の合併症はそれ以外にもたくさんあります。今日はそちらを簡単に説明してみます。

 (1)白内障=水晶体が濁る病気で、多くの方が加齢とともに白内障になっていきますが、糖尿の方は早く進行する傾向があり、年齢が若くても手術が必要になることもあります。

 (2)眼球運動障害=目には6本の目を動かす筋肉が付いていて、三つの脳神経で筋肉の動きをコントロールしています。その神経がまひするために左右の目の動きに差が生じて物がダブって見える症状が出ます。左右片目ずつだと一つに見えますが、両目で見ると同じ物が二つ見えてしまい、生活上で大きな障害になることがあります。

 (3)角膜障害=目の表面にある角膜の細胞が障害を受け、角膜に傷ができたり傷が治りにくくなったりします。神経障害のために傷があっても痛みを感じにくくなっていることもあり、重症化するまで気が付かないこともあり注意が必要です。

 (4)屈折・調節異常=目の屈折度が変化します。特に治療前の糖尿病の状態がかなり悪かった方が、急速に血糖コントロールをした際に起こりやすいといわれています。今まで使っていた眼鏡では急に見づらくなったり、急に老眼になったようにピントを合わせにくくなったりします。

 (5)血管新生緑内障=目の中の水を眼外に排出する流出路(隅角)に新生血管と呼ばれる異常血管が生じて、眼内の水を排出しにくくなり、眼圧が上昇して視野障害、場合によっては失明に至ることもあります。緑内障の中でも最も治療が難しいタイプです。

 (6)虹彩毛様体炎=眼内に炎症を起こすことがあります。充血、視力障害、目の痛みなどが起きます。

 (7)虚血性視神経症=視神経を栄養する血管が閉塞(へいそく)することによって生じます。軽度の視野障害から失明状態まで症状はさまざまです。夜寝ている間に起きることが多く、朝目覚めた際に突然視力、視野障害を自覚する方が多いようです。

 このように網膜症以外にもいろいろな目の合併症が糖尿病のために生じてきます。糖尿病と診断されたらまずは眼科を受診していただき、目の合併症が生じていないかチェックを受けるようにしてください。次回は糖尿病網膜症について少し詳しくお話ししようと思います。