開放的なスペースで幼児を遊ばせる母親ら=羽島郡岐南町野中、にこにこサロン
バナナを栽培する戸崎尚彦さん=同町徳田、アクアファーム・ぎなん
伏屋の獅子芝居への思いを語る朝倉修一さん=同町伏屋、白山神社

 岐阜県南部を横断する国道21号と、東海と北陸を結ぶ国道22号・国道156号が交差する羽島郡岐南町は交通の要所で、東海北陸自動車道の岐阜各務原インターチェンジにも近く、町の魅力は交通アクセスの良さといえる。加えて、子育て支援に力を入れていることもあり、近年は20、30代の転入者が多く、毎年人口が増えている、県内でもまれな自治体だ。

 

 若い世代を引き付けているのが、手厚い子育て支援策だ。2013年度に県内の自治体で初めて、小中学生の給食費を無料にした。21年度からは町外の私立学校などに通う児童らの給食費の助成も始めた。

 育児施設も充実しており、未就園児のいる母親が子どもを遊ばせたり、育児の相談ができたりする「子育てサロン」は、町内三つの小学校区に1カ所ずつある。

 サロンを管轄する町子育て世代包括支援センターの松原純子所長は「町内は若い世代の核家族が多い。子育て支援員がママたちの相談を聞くほか、友達づくりの場を提供している」と話す。サロンでは育児講座のほかに、ストレッチ運動など母親がリフレッシュできる催しも開いており、好評だ。

 同町野中の町総合健康福祉センター「やすらぎ苑」内の「にこにこサロン」では、木製遊具で遊ぶ子どもたちの笑い声が響く。長女(2)と訪れた主婦町田香織さん(41)は、夫の転勤で8年前に岐南町に引っ越してきた。「車でどこにでも行きやすく、住みやすい。子どもが3人いるので給食費が無料なのは本当にありがたい」と話す。結婚を機に2年前から町内に住む主婦(32)は「サロンは週3回利用しており、友人も増えた。同年代の人や子どもが多く、子育てがしやすい」と実感している。

 新しい住民が多く、ベッドタウンのイメージがある岐南町には、地域に脈々と受け継がれる伝統芸能がある。「伏屋の獅子芝居」だ。江戸時代後期から同町伏屋の白山神社の祭礼で奉納され、県重要無形民俗文化財に指定されている。「雌獅子」であることや、獅子舞で歌舞伎の外題を演じる獅子芝居は珍しい。

 町伏屋獅子舞保存会の会員は100人ほどいるが、演者やおはやしなど、獅子芝居に直接関わるのは小学生から70代までの15人。県内での発表会や、さまざまな行事に招かれて芝居を披露している。10代の頃から約40年間、舞い手を務める町職員の朝倉修一さん(59)は「約160年間続く伝統芸能に自分が携わっていることは誇り」と話す。

 平成の中ごろ、会員が激減し、数年間、獅子芝居の存続が危ぶまれた時期があったが、懸命な勧誘活動で担い手を確保し、現在に至っている。朝倉さんは「郷土の貴重な宝を絶対に絶やしてはならない。しっかりと後継者を育てていく」と力を込める。

 一方、岐南町では砂を多く含んだ土壌を生かして昔から「徳田ねぎ」が作られており、名産となっているが、新たな町の特産品にしようと2年前からはバナナの栽培が始まっている。

 手掛けるのは「アクアファーム・ぎなん」(同町徳田)の戸崎尚彦さん(65)。数年前までは徳田ねぎを作っていたが、「ほぼ年中収穫できて、珍しい国産バナナに魅力を感じた」と葉ネギを水耕栽培していたハウスを利用して、バナナを育て始めた。戸崎さんのバナナは糖度が高く、皮が薄くて無農薬で栽培していることから栄養のある皮まで食べられる。「天下布武 信長バナナ」のブランドで岐阜市近郊のスーパーなどに卸すほか、ネットでも販売する。

 町のふるさと納税の返礼品にもなっており、徐々に知名度も上がってきている。今後はハウスを増やして、ジュースなど加工品の製造も計画している。戸崎さんは「将来的には観光農園にして、県内外から客を呼び込みたい。観光名所が少ない町のPRにつながれば」と意気込む。