皮膚科医 清島真理子氏

 今日は帯状疱疹(ほうしん)ワクチンのお話をしましょう。帯状疱疹(おびくさ)は、体の左右のどちらか一方に赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状に連なって現れる皮膚病で、痛みを伴います。通常は皮膚症状が治ると痛みも治まりますが、その後もピリピリする痛みが続くことがあります。帯状疱疹にかかった人の4%が1年後も痛みがあり、高齢者ほどその頻度が高いといわれています。この痛みは「帯状疱疹後神経痛」といって、数カ月から数年続くこともあります。

 帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルスです。水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹は同じウイルスで起きます。水ぼうそうにかかると、治った後もウイルスは体内の神経節に潜んでいます。そして加齢、疲労やストレスなどが引き金になって免疫力が低下すると、ウイルスが再び暴れ出して「帯状疱疹」を発症します。70代を中心に50代以降の人でよく起こるので、50歳以上ではワクチンで発症や重症化を予防することができます。

 日本では2014年から水痘ワクチンの定期接種(義務化)が行われています。1歳から3歳で生ワクチンを2回接種します。いったん体内に抗体ができるのですが、抗体価は年齢とともに少しずつ低下してしまいます。

 帯状疱疹には2種類のワクチンがあり、いずれも50歳以上の人は任意接種できます。生ワクチンと組み換えワクチン(不活化ワクチン)で、それぞれ特徴があります。生ワクチンは1回接種で、発症を50~70%予防する効果があります。しかし、効果の持続は5年~10年です。一方、組み換えワクチンは2カ月の間隔で2回接種が必要です。95%以上の高い予防効果があり、効果は10年以上持続します。

 原則50歳以上の人が対象ですが、組み換えワクチンは帯状疱疹に罹患(りかん)するリスクが高いと考えられる18歳以上の人は受けることができます。妊婦や免疫力の低下している人では、生ワクチンは受けることができませんが、組み換えワクチンは受けることができます。

 副作用は組み換えワクチンに多く、接種した部位の腫れや痛みは80%、筋肉痛や頭痛などの全身性の副反応は65%に出ます。生ワクチンでは60%以下です。

 任意接種なので自費になりますが、生ワクチンの方が負担が少し少ないです。自治体によっては公費助成が受けられます。岐阜県内では23年11月の時点で、関市、山県市、本巣市をはじめとした16市町村で公費助成が受けられます。各自治体で助成内容が異なり、ワクチンの種類によっても異なりますので、自治体に確認してください。