子宮頸(けい)がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを巡り、ワクチンを打つ機会を逃した女性を対象にした救済措置「キャッチアップ接種」が低調です。2022年度の初回接種率は全国で6・1%、岐阜県でも6・6%でした。「キャッチアップ接種」は2025年3月までの国の事業ですが、必要な3回の接種を自己負担なく受けるには今年9月30日までに接種を始める必要があります。対象となるのは17歳から27歳の女性。このままでは、多くの女性が予防の機会を逃してしまいます。専門家は「早めの接種開始を」と呼びかけています。

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 そもそも子宮頸がんやHPVワクチンとはなんでしょう?

Q 子宮頸がんとはどんな病気?
A 若い女性に多いがんです
 子宮頸がんは、若い女性に多く見られます。子宮の出入り口にでき、日本では毎年約1・1万人の女性が発症、毎年約2900人が亡くなっています。治療で子宮を失う人は年間で約1千人です。一生のうち、100人に1~2人が子宮頸がんにかかるとされています。

子宮頸がんを防ぐワクチンの接種が低調(イメージ)

Q なぜ子宮頸がんになるのですか?
A ウイルス感染が原因とされています

 主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)です。感染している人との性的接触でHPVに感染するリスクが高まります。性的接触のある女性の半数以上が生涯で一度は感染するとされています。ありふれたウイルスですが子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がんなど多くの病気を引き起こします。男性もHPVが原因でがんになるケースがあります。

Q 感染を防ぐことはできますか?
A ワクチン接種で感染を防げます

 HPVの感染を防ぐワクチンがあり、日本では小学6年生から高校1年生の女子を対象に公費で接種を受けることができます。ワクチンによっては子宮頸がんの9割以上を予防できるとされています。

Q 私は接種した記憶がありませんが、打てますか?
A あなたが17歳から27歳の間なら無料で接種できます

 HPVワクチンは2013年6月から約9年間、国が積極的勧奨を控えていました。ワクチンの注射の後、全身の痛みやしびれを訴えた人が相次いだためです。その間、接種率は1%を下回るなど大幅に下がりました。2022年4月、国はワクチンに効果があるとして個別に案内を送って接種を促す積極的勧奨を再開しました。

 この期間に接種機会を逃した女性たちのために「キャッチアップ接種」という救済措置が設けられました。対象は1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性で、本年度17歳~27歳になる人です。自己負担なく接種することができます。

Q 副反応がニュースになった記憶がありますが?
A 副反応がないとは言えません

 HPVワクチン接種による主な副反応は発熱や注射した部位の痛みや腫れ、じんましんなどです。アナフィラキシーショック(約96万接種に1回報告)、ギラン・バレー症候群(約430万接種に1回報告)など重い症状も報告されています。接種後の症状について、岐阜県内では岐阜大学医学部付属病院が協力医療機関となっています。ワクチン接種は自分で決める必要があります。

岐阜大学医学部付属病院

Q どうすれば接種できますか?
A 住民票のある市町村からお知らせが届きます

 お知らせが届かない場合やなくした場合は、市町村の担当部署に問い合わせてください。市町村によっては毎年ではなく1回だけ通知しているところもあるといい、対象者が気付いていない場合もあるようです。ワクチンは3回接種が必要で、間隔を取る必要があります。無料で接種するためには「キャッチアップ接種」事業が終わる来年3月までに3回接種を完了しなければなりません。逆算すると今年9月30日までに第1回を接種する必要があります。自費で接種すると3回合わせて10万円程度になります。(参考:厚労省HP、岐阜県感染症対策推進課)

打つメリットは大きい

 若い世代のがんを研究、治療している岐阜大学付属病院小児科臨床准教授の小関道夫さん(47)に聞きました。

 ワクチン接種で明らかに子宮頸がんになる率は下がります。

 ワクチンを打っておらず、子宮頸がんになった人の数を1とした場合、17歳未満で打ち子宮頸がんになった人の数は0.12という研究が報告されています。副作用が大きく報道されましたが、因果関係はないという調査結果が報告されました。

 子宮頸がんは20歳代から接種、非接種の差が大きく出ます。30代、40代で罹患する人も多い。子どもがほしい、という年代で治療のために子宮を取ることもあります。ワクチンを打つメリットはあると思います。

 親世代、祖父母世代は打ったことがないと思いますが、17歳から27歳の娘さん、お孫さんがいたら、接種を考えるよう呼びかけてほしいと思います。(談)

問い合わせは岐阜県感染症対策推進課(感染症対策第一係)
電話番号:058(272)1111(内線3334)