パドックを周回するハルオーブ(3)とアオラキ(7) 

 アイドルホース3度目の対戦はあるのか。JRA未勝利馬だが、東海公営に舞い降りた同期の2頭。推し馬として「青春(アオハル)」を応援するファンは多く、中央復帰を目指した熱い戦いを繰り広げている。

 名古屋のアオラキ(牡4歳、今津勝之厩舎)は、相性の良い笠松競馬場で2勝を挙げて、中央復帰条件の3勝まで「あと1勝」に迫った。笠松のハルオーブ(牡4歳、後藤佑耶厩舎)は3着、5着で掲示板を確保し「まず初勝利を」とファンの期待も高まっている。両馬のこれまでの戦いぶりを振り返るとともに、中央復帰に向けた今後の走りを探った。

返し馬でご対面。ファンの注目を浴びたアオラキ(手前)とハルオーブ

 ■対戦成績は1勝1敗、ファンの熱い視線

 アオラキはゴールドシップ産駒の白毛馬。ハルオーブは中央では2着7回の「善戦マン」。これまで両馬は笠松競馬場で2度の顔合わせがあり、1勝1敗と互角の戦いを見せ、ファンの熱い視線を浴びてきた。

 両馬は6月4~7日の笠松戦にも予備登録はあったが、ともに出走を回避。ハルオーブは月1走のゆったりローテで予定通り。けがなどなく順調なら6月18日~21日のぎふ清流カップシリーズに参戦か。中5日で笠松→名古屋を連闘したアオラキの次走は地元・名古屋か笠松のどちらかに。距離適性やクラス選択もあって、両馬の3度目の対戦は微妙となっている。

ハルオーブの笠松2戦目は宮下瞳騎手が騎乗した

 ■デビュー同時期、出走23回も同じで良きライバル

 デビューはともに2年前の7月。JRA、地方での出走回数も同じで計23回。東海公営ではA級馬として戦っており、アイドル同士で良きライバルにもなっている。

 アオラキはJRA時代、17戦3着3回。武豊騎手や今村聖奈騎手も騎乗したが着外。 名古屋に移籍後は6戦し、2勝はいずれも笠松。砂をかぶることを避けるためホライゾネットを装着することもあり、ダート適性はまずまず。

笠松で2勝目を飾ったアオラキと主戦の大畑雅章騎手

 ■アオラキ、中5日連闘でJRA交流戦

 5月24日、笠松で2勝目を飾った後は中5日で連闘策。名古屋でのJRA交流戦(A3、中央1勝クラス)に登場。元気いっぱい、一時は先頭を奪うなど見せ場たっぷりの5着。地方馬最先着で元中央馬の意地を見せてくれた。

 距離2100メートルでの走りを試すため、あえて連闘で挑戦。中央時代には芝2600メートルで3着があり、ダートでの距離適性が問われる一戦となった。

 アオラキで2勝を挙げた主戦の大畑雅章騎手。笠松でのマイル戦では「ゴルシ産駒なんで、変な癖を出さないうちに」と2コーナー、3コーナーからのロングスパートで一気に先頭を奪い、押し切る競馬で勝利をゲットした。

地元・名古屋では11着、5着のアオラキ

 ■一時先頭を奪い、地方馬最先着の5着

 名古屋では初戦が末脚不発で11着に終わっており、2戦目は巻き返しが注目された。

 9頭立てでJRA勢は5頭参戦。4番人気のアオラキ、スタート直後はいつものように最後方。スタンド前でポジションを上げると、スローペースの中、2コーナーではインから馬なりで一気に先頭を奪った。

 残り1000メートルを切ったばかりで、早く先頭に立ちすぎたのか。3~4コーナーではJRA勢が襲いかかり、アオラキは4番手に後退。最後の直線でも伸びを欠き、5着に終わった。加藤聡一騎手騎乗のハローサブリナが勝ち、2着に川須栄彦騎手、3着に田口貫太騎手のJRA勢が入った。

 5着のアオラキに対してネット上では「この相手に連闘で、掲示板はようやっとる。すごく頑張ったね」「先着されたのは中央勢で力は示した。3勝目が期待できる」と中5日での健闘をねぎらう声が相次いだ。

 笠松での2勝はともにマイル戦で、馬番は外めの7番だった。やはりコースや距離もこの条件がベストで、砂をかぶらず外めからロングスパートが決まれば3勝目をゲットできそうだ。

笠松初戦、塚本征吾騎手の騎乗で3着に突っ込んだハルオーブ

 ■ダート苦手のハルオーブ、笠松では3着

 一方のハルオーブはJRAで21戦2着7回3着3回とアオラキを上回る成績。三浦皇成騎手が主戦を務めた。門別、園田を経て今年4月に笠松へ移籍してきた。門別、園田でのダートでは、2秒以上離された2桁着順が多くて大苦戦。脚抜きが良く軽い馬場の笠松競馬場に活路を求めて転入してきたのだ。

 笠松ではまだ2戦。ゴール前には「推し馬親衛隊」ともいえる女性ファンたちが「ハルオーブ」のTシャツも着込んで声援を送り、大盛り上がりだった。

 移籍初戦は4コーナーでいい脚を見せて、3着に突っ込む好内容。園田では全国リーディングの吉村智洋騎手でも12着、10着と厳しい結果が続いていただけに、応援団の「はるお、頑張れ~」の声が人馬の背中を押したようで、3着でも勝ったかのような歓喜の輪となった。塚本征吾騎手は「しっかり追っていっぱいになったが、ダートで走らないわけじゃない。あとはメンバー次第ですね」と手応えをつかんでいた。

 園田ではC2クラスだったのが、笠松では賞金面からいきなりA級でスタート。相手関係は厳しいが、2戦続けての「掲示板確保」は1着ゴールへとつながる通過点にもなりそうだ。

 2戦目の5着についてネット上では「条件の良い馬場ではなかったが、しっかり掲示板に残れた。初勝利は近いぞ」「距離延長と良馬場で苦しくなったが、次こそいける」と期待を寄せる声が多かった。次走は順調なら6月19日のA4「木曽川特別」1600メートル戦か、A5の1400メートル戦か。オープン入りを狙う実力馬との戦いは厳しいが、笠松のダートは合っており、中央での実績からも好勝負も期待できそうだ。

笠松初戦は木之前葵騎手が騎乗。5着の枠場にすんなり入ったアオラキ

 ■脚抜きの良い不良馬場ならチャンス

 アオラキの笠松初戦は木之前葵騎手が騎乗した。5着という結果にも笑顔で「なんか、やれそうな気がしました。結構体力がある子なんで、馬の癖とかも考えていい方向に」とラストの伸び脚には手応えを感じていた。

 レース直後、アオラキは「グネグネ」することもなく、落ち着いて5着の枠場にすんなり入った。一方のハルオーブは笠松2戦目、5着の枠場には立ち止まって首をかしげるようにして、なかなか入りたがらなかった。このため、宮下瞳騎手は枠場の前で下馬したが、レースを終えたばかりの競走馬の心理状態はなかなか面白いものがある。

笠松2戦目、5着の枠場には入りたがらなかったハルオーブ

 東海地方の梅雨入りは例年より遅れており、16日ごろと予想されている。ハルオーブにとっては、笠松初戦が重馬場で3着だったように、時計が出やすくなる脚抜きの良い不良馬場がベスト。梅雨入りし「天も味方」してくれれば、初勝利は近いかも。

 適距離は2着3回3着3回の1400メートルか。次走では「1400に戻して、最後の直線でもビシビシ追ってほしい」と願うファンの声も強く、笠松初戦4コーナーで先頭に迫った塚本征吾騎手が再騎乗か。アオラキとのアイドルホース競演第3ラウンドの可能性もあり、注目される。

 ■A級メンバー強敵、万全の状態で

 馬主さん、厩舎関係者、ファンにとっても両馬の次走は楽しみだが、競走馬はきょう元気でも、あすの状態は分からない。2週間も先の体調や出走可否は当日のコンディション次第にもなる。  

 初勝利を目指すハルオーブ。所属する後藤佑耶厩舎では、負傷療養中だった長江慶悟騎手が次開催から復帰予定。未明からまだ1日10頭ほどだが、自厩舎・ハルオーブの攻め馬にも励んでおり「月1で大事に使われていて、いい子ですよ。ピッチを上げていきたい」と人気馬の成長に期待。次の開催での出走は微妙だが、A級メンバーは強敵がそろっており、ハルオーブも万全の状態で挑みたい。 

笠松で2勝を飾ったオマタセシマシタ

 ■オマタセシマシタも2勝の笠松は好条件

 笠松競馬場では昨年、人気馬オマタセシマシタが注目を集めた。初戦は渡辺竜也騎手で初勝利を飾り、ラストは宮下瞳騎手で鮮やかに逃げ切って2勝目。斉藤慎二オーナーの地元・船橋へ送り出し、3勝目につなげることができた。

 アオラキとハルオーブも、いつまでこの地で走ってくれるか分からないが、2頭にとってレベル的にも好条件の笠松参戦はJRA復帰への近道ともいえよう。もし3度目の競演が実現したら、どっちが勝つのか。距離、馬場状態や相手関係次第ではアオラキ3勝目、ハルオーブ初勝利のチャンスは十分にありそうだ。

3度目のアイドル競演が期待されているアオラキ(7)とハルオーブ(3)

 ■「1400ならハルオーブだ」「アオラキ君も、はるお君も頑張って」

 ネット上で聞いた「勝つのは○○だ」では、アオラキもハルオーブもともにファンに愛され、応援されている。「同じ中央復帰を目指すお友達だけど、1400ならハルオーブだ。まず1勝!」「アオラキ君を応援していますが、はるお君も頑張って!」といった意見が寄せられた。

 お互いまだ4歳で、JRA復帰のチャンスは十分。笠松、名古屋の厩舎にはできる限り長くいてほしいが、愛情にあふれた厩舎スタッフのサポートと、温かいファンたちに見守られて、次のステージに向かって突っ走っていきたい。


※「オグリの里2新風編」も好評発売中

 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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