内科医 梶尚志さん

 皆さん、こんにちは。可児市で梶の木内科医院を開業しております、梶尚志です。私は、総合内科専門科医として、さまざまな体調不良の原因を見つけて、お薬に頼らない栄養療法を実践しています。

 さて、皆さんは「秋バテ」という言葉は聞かれたことがありますか? 今回は、前回の予告でお伝えした「子どもの栄養療法実践法」を次回以降にさせていただき、この時期に、実は夏バテより怖い「秋バテ」についてお話ししていきます。

 まず、「秋バテ」の症状は次のようなものがあります。

 ①疲労感や倦怠(けんたい)感②食欲不振③頭痛④眠気や睡眠の質の低下⑤消化不良や胃腸の不調⑥手足の冷えや体の冷え⑦気分の落ち込みや不安感

 そして、「秋バテ」の原因には次のようなことが挙げられます。

 ①ビタミン不足。夏場の汗でビタミン(特にビタミンB群など)が大量に失われ、そのまま補給が不十分だと、疲労感や倦怠感が引き起こされます。

 ②タンパク質・鉄分不足。夏の間の多量な汗とともに鉄分が喪失し、また、偏った食生活や食欲不振が続くことで、炭水化物中心の食生活からタンパク質や鉄分の摂取が不足。これにより、頭痛や疲労感が現れやすくなります。

 ③糖質の過剰摂取。夏場は清涼飲料水など糖分の多い飲み物を摂取しがちですが、さらに食欲低下によって口当たりの良い炭水化物中心の食生活になりがちです。この糖質の過剰摂取が、特にビタミンB1の大量消費につながり、脱力・疲労感・倦怠感につながります。特に重度の場合は、ビタミンB1不足による「かっけ」を引き起こしますので要注意です。

 ④腸内環境の乱れ。夏の間は冷たい飲食物を多く取りがちで、これにより腸内環境が乱れることがあります。これが消化不良や胃腸の不調につながり、結果として栄養失調からくる症状を引き起こします。

 ⑤ビタミンD不足。夏から秋にかけて日照時間が短くなると、ビタミンDの生成が減少し、脳内のセロトニン(幸福ホルモン)やメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が減少しやすくなります。これが気分の落ち込みや不安感・睡眠に影響を与えます。

 まとめますと、「秋バテ」の原因としては、多くは、夏場の高温多湿な環境で、食欲低下や体力・栄養素が消耗された状態が続き、秋に入ってからその疲労が顕在化することで起こってきます。特にビタミンやミネラルの不足、消化機能の低下が原因となり、「秋バテ」の症状が現れると考えられています。また、秋は夏と比べて気温が急激に下がり、日照時間も短くなることで体内時計やホルモン分泌に影響を与え、自律神経の調節機能が乱れることになります。

 まだまだ残暑の厳しい時期ですので、これから訪れる「秋バテ」の予防に、今からでも栄養療法に取り組んでいただけるとうれしいです。