洋上慰霊の航路予定図(日本、フィリピン)
 神戸港を出港し、見送りの人たちに手を振る「洋上慰霊」の参加者=1日午後

 戦後80年で終了となる日本遺族会主催の「洋上慰霊」は1日、遺族らを乗せたクルーズ船が神戸港を出港し、11日間の船旅が始まった。台湾海峡やフィリピン沖などを巡り、鎮魂の祈りをささげる。11日に神戸港に帰港予定。

 遺族会によると、42都府県の遺族ら218人(10〜90代)が乗船。3日の東シナ海での船上慰霊祭で、追悼文を読む予定の大阪市の吉村孝史さん(83)は、戦艦大和の乗組員だった父を亡くした。「長年誇りに思い続けてきた。父と同じ時間を共有したい」と話した。船は大和や姉妹艦武蔵の沈没海域も航行する。

 太平洋戦争では多くの民間船が陸海軍に軍需物資輸送のために徴用されるなどし、海に沈んだ。遺族会などによると、香川県琴平町の鈴木由紀子さん(83)は、海軍に徴兵された父が民間の輸送船に乗り、台湾沖で魚雷攻撃に遭い亡くなった。洋上慰霊は2回目の参加で、海にささげる酒やコメを持参した。

 洋上慰霊は厚生労働省が補助する「慰霊友好親善事業」の一環。遺族会は遺児の高齢化を理由に25年度で事業の終了を決めた。