【フィリピン沖共同】戦後80年で終了する日本遺族会主催の「洋上慰霊」の船は5日、台湾沖からフィリピン近海まで南に航行した。ルソン島北西沖で船上慰霊祭があり、戦艦武蔵の乗組員だった父進さんを亡くした川上智子さん(80)らが追悼文を朗読。川上さんは「進さん、聞いてくださっていますか」「お父さん」と語りかけ、進さんが好きだった酒や花を海へ手向けた。
遺族会などによると、進さんは1944年10月に武蔵がフィリピンのシブヤン海で沈没した際は救出されて助かった。だが約1カ月後の11月25日未明、民間の徴用船で帰国途中、フィリピン北部の島の沖で米潜水艦の魚雷攻撃に遭い死亡した。智子さんはその日の午後に生まれ、父が母に送った手紙には「女子なれば智子と命名するよう願います」と記されていた。
11日間の船旅の中で、5日は進さんの戦没海域に最も近づく日だった。智子さんは追悼文で命名の感謝を口にし「私たち遺児の使命は、戦争を知らない方々に戦争の悲惨さを伝えていくことだと考えます」と述べた。
洋上慰霊は1日に神戸港を出発。11日に帰港する予定。