東京電力福島第1原発事故を巡り、旧経営陣5人が津波対策を怠り会社に損害を与えたとして、計約23兆円を東電へ賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審判決で、東京高裁(木納敏和裁判長)は6日、津波は予見可能だったとして故・勝俣恒久元会長を含む4人に13兆円超の賠償を命じた一審判決を取り消し、株主側の請求を棄却した。
訴訟の主な争点は(1)巨大津波を予見できたか(2)事故を回避できたか―の2点。政府の地震調査研究推進本部は2002年に地震予測「長期評価」を公表し、東電の子会社はこれに基づき、原発に最大15・7メートルの津波が到達すると試算していた。
22年7月の一審東京地裁判決は、長期評価が「相応の科学的信頼性がある」とし、巨大津波は予見できたと認定。主要建屋などの浸水対策工事をしていれば「重大事態を避けられた可能性が十分にあった」とし、賠償を命じた。
旧経営陣側は控訴審でも、長期評価は信頼性を欠くなどとし、具体的な津波対策を講じることは不可能だったと主張した。勝俣氏の訴訟は、相続人が引き継いだ。